グリセリン
肉食のすずめ

二〇〇七年一月七日〇時三十一分
にわかに風が吹き始めた
ごわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ
いつまで経っても風が吹き抜けないのを
不審に思って起きた私は
窓を大きく開けた
ごわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ
何の事は無い 風は吹き抜けていた
群れを成していただけだった

グリセリンの匂いがした 
少し昔 川原の草むらに
しゃがみこんで地表の澱に触れていた
目はどの方向へも向いていなかったので
誰も追いかけてはこなかった なぜか
グリセリンの匂いがした
慎重に吸い込もうとしたが そろそろ
側道に停めた自転車に
戻らなければいけなかった
私には私の予定があった
それはいつでも

ごわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ
私には私の予定があった

寝る前に洗った髪はいつも
香料の匂いがする
今夜は
グリセリンの匂いがする
ごわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ
なぜか

私は描きに戻らなければいけない
あの日の匂いの手前に在ったものを
自転車の前かごに放り込んでしまう前に
今夜の匂いの手前に在るものを
全部吹きっ散らされてしまう前に

その日にはその日の予定がある
それ以上に
私には私の事情がある
それはいつでも


自由詩 グリセリン Copyright 肉食のすずめ 2007-01-07 22:03:52
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