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2009 01/15 12:53[250]
ふるる

「映画の構造分析 ハリウッドで学べる現代思想」内田樹著を読みました。面白かったのは、ヒッチコックがよく言っていたというマクガフィンの話。マクガフィンはそれ自体は何でもよくて、何か価値がありそうな、隠されていそうな、怪しいもののこと。登場人物がそれを中心にして色々させられるっていう。登場人物だけでなく、観客もそのドラマに引き込まれてしまう。マクガフィンが何でもいいというのは、何を隠しているかではなくて、どう隠されているか、ということを人は知りたがるからだって。推理物が面白いのは、犯人の動機やトリックのすごさというよりも、どうやってそれを見つからないようにしているか見破る、ということらしい。犯人がどうっていうのではなく、作者が読者に対してどのように真相を隠したか・・・どうやって巧みにそっちの方へ注意を向けて行って、肝心なところには触れられないようにしていたか・・・いかにあっさり読者が引っかかってしまうのか・・・それがラストで分かるから、面白いんだな。ヒッチコックはカメラの効果と観客の欲望をよく知っていたので、常に観客を驚かせることができた。時には「いかにも何かありそうな感じ」「見たい、見てなくちゃ感」を出すことで。あっ!結婚サギって、よく知らない人に何でお金渡しちゃうの?と思ってたけど、「よく知らない」からこそ知りたい欲が働いて、魅力がすごいのかも。そこに、「私は騙されているということに気づきたくない」という欲求がからめばあっという間ですね。振り込めサギもそうか。「お金を振り込めば、どうしてそういういきさつになったのかの秘密を私だけに話してもらえる!」という期待感が大金の振込につながるのかー。怪しいものといえば、子供の頃、犬と遊んでいて、後ろに手をやって何か隠しているそぶりを見せると、犬が「何?何隠してるの?」って必死で後ろを見ようとするのが面白かったのを思い出しました。「何か隠してあるみたい」というものの力に、犬も抗えません。