2015 03/29 17:21[566]
ふるる
西條八十の比喩
全集を借りてきて、4冊の詩集のぐっとくる比喩を抜書きしています。比喩表現は思ったより少なくて、何かで何かを象徴するというのが多かったです。
ベスト3はこちら。
「薔薇」
薔薇は降る、
青白い薔薇は降る、
ほのかに淡青い(うすあおい)生絹(すずし)をはりつめた空
けむる空
碧玉(さふぁいあ)の燻(くす)ぼれる空より
はらはらと、かつさめざめと
明るく翳る光の中(うち)
(詩集『砂金』より)
「文殻」
戀びとの文かくても藎(つ)きず、
いざかやの夜の蒼空に冷たき真珠(あくや)なす
星の族(むれ)より
熟れくづる果物のごとく血色の
月かけて
(詩集『砂金』より)
「見知らぬ愛人」
それらは青い薄紗(うすぎぬ)でつつんだ蛍籠のやうであった、
夏の夜の電車は。
(詩集『見知らぬ愛人』より)
想起されるイメージもきれいだけど、音がかっこいい。
「くすぼれる空」とか「冷たきあくやなす」って。
『砂金』が発行されたのが1919年、約100年前です。