作者より：

あいつが死んだ、聞いたか？
あいつも死んだらしいな。
あいつ、死んでたんだってよ。
あいつな、死んだ。
あいつとか最後いつ会った？死んだってよ。
死んでた。昨日だ。

あいつから、毎日電話がかかってくる。時々訪ねても来る。
電話を切ったあと、玄関を出てボロい軽自動車を見送ったあと、線香を買いに行く。
お前んとこはにぎやかになっていいよな。
こっちはどんどん知らないやつばっかりになってる。
線香の束に火を点けて一瞬我を忘れる。くせえ。
夜露のついた草むらで半ばほど灰になった線香の山。
濡れてなお色濃くなる。
そして、薄れた匂いにまた半ば燃えた弔いを焚べる。