田村隆一論——フィクションの危険/葉leaf
るかさんのコメント
補足になるかどうか分かりませんが、田村隆一らの知的環境というのはヘーゲル主義でありカトリシズムでありマルクス主義であった訳でしょう。時代的には戦争の経験がありましたね。そういう環境のなかにおいて作品を視てみると、開けてくる意味があるのではないかと思いますね。「四千の日と夜」にしたって、論理的な骨格としては、難解でも何でもないと思うんです。単純素朴な対立物の統一という思想ですから。しかしそれが共感を持って受容されるのはやはり、そのような対立と統一という過程が、戦場や社会生活のありかたのなかで、読者にも不明瞭ではあっても、ある種、経験されているからではないかと考えますねえ。
「実感」とか「真実」とか「信用性」そのものについての考察こそ期待させていただきたいと思います。なぜ詩人の実感に耳を傾けなくてはいけなくて、詩人の真実にはどんな意義があって、詩人を信用するというのは具体的にどんな意義を持つのでしょうか。そういう疑問を、常日頃有しておるんですね。ともあれ、長文ご苦労様でした。