春の霧雨/伊藤透雪
菊西 夕座さんのコメント
はっきりしない存在を、別の存在にかぶせ(重ね)て、そのかすみ具合、そのぼやけ感、そのわずかなニュアンスの変化によって浮き彫りにするというところに、細やかな神経と丁寧な描写力を感じました。

「あなた」といういわば熱源を失って、まるで電気ストーブがコンセントを抜かれて明るい暖色をしずかに落としていくように、冷え冷えとしたおぼろな町角で自らも輪郭を失っていく様が、うまく霧雨と重ね(かぶせ)られていて印象的でした。