直線 9/11/夏嶋 真子
夏嶋 真子さんのコメント
作者メモ

この作品はある老人の死と、自身を取り巻く世界の閉塞感という
別々に書いた二つの詩が、9/11を答えとして強烈に結びつき
三つの場面が透明に重なって幻視の鳥が現れ
一つの詩として完成しました。

毎年9月11日になると
アメリカはもっと酷いことをしたという意見も目にしますが
アメリカという国境線の枠だけで考えていていいのかという思いから
宗教や国の対立としてではなく
あの出来事は、強者があまりにも多くのものをこの星や人々から奪いすぎていることの歪み、と捉えて描きました。
直線を象徴として。

埋立地の海岸線、そそり立つダムの絶壁 ブルドーザーが山頂を削り台形となった山
細かな線で描かれた抽象画のような大都会
先日、飛行機の窓から見た直線の光景が忘れられないのです。
なだらかな曲線を描く自然の営みに対して
真っ直ぐに生き抜こうとする人間の力は逞しく、直線は人の本能なのかもしれません。
けれど私には現代が欲望のまま急ぎすぎて行き先を見失っているように思えたのです。


先日読み返していたある本の中にこのような一節がありました。
「世界を手に入れても魂を傷つけては何にもならない」 
人は鳥になりたくて飛行機(幻視の鳥)を作ったのに
翼は得ても鳥の魂は失われてしまった、明日はもう来ない
私はあの日そう思って震えました。
けれど今、私はその明日を生きています。
そう思ったら、どうしても詩という形で残しておきたくなりました。


今まで自分の内在世界ばかり書いてきたから
思い切って外へ出るという意味でこの詩は私にとっては挑戦でした。
読んで下さったすべての方にありがとう。


(誤字を指摘していただいた箇所を修正してあります。
 お心遣いありがとうございます。)

---2010/09/15 01:29追記---