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真夏の昼下がり
{ルビ春日通=かすがどお}りを歩いていると
ふと右手に
「東京都民戦没者・慰霊の地」
と記された入口が静かに口を開いており
吸い込まれるように足を踏み入れた

頭上の青空 ....
今日も額に汗を滲ませて
門前払いは覚悟の上
蝉の鳴き声しか聞こえない
住宅地のあちらこちらを歩く私は一匹のありんこ

無数のピンポンを押して
ようやく玄関のドアは開いて
満面の笑みと話術 ....
金で買われる夢があり
偽りで交わされる愛があり
富む者となるしたたかな術があり

そんな修羅の世を
罪に汚れた身のままに
今夜もとぼとぼ歩いていると

「 この世に在りて
  汝の胸 ....
教室の窓際の席で
空に浮かんだ雲を眺めて
先生の話はうわの空

君にはきっと
いつまでも見つからない
「探し物」がある

机の下に隠した携帯電話が
{ルビ理由=わけ}も ....
ふらふらと酔っ払いの千鳥足
さみしがり屋のピエロは口笛吹いて
今宵も月夜の道を歩いています

膝を落とし 手を差しのべ 愛を乞う
寒がりな裸の心を胸に{ルビ潜=ひそ}めて

夜空 ....
老人ホームの送迎車から
半身{ルビ麻痺=まひ}で細身の体を
僕に支えられて降りたお婆ちゃんは
動く片手で手押し車のとってを握る

傍らに立つ僕は
宙ぶらりんの麻痺した腕と脇の間に ....
霧雨の降るぼやけた朝の向こうから
「夢の国行き」と{ルビ記=しる}されたバスが近づいて来る

後部座席の曇りガラスを手で拭くと
数ヶ月前に世を去った
認知症のゑみこさんが住んでいた{ルビ空家 ....
自らの愚かな手で
目の前をさえぎる沼を
つくり出してしまった時は
でくのぼうとなって立ち止まり
かけがえなき友の背後から吹き抜ける
風の言葉に耳を澄まそう

私は木になりたかった
幾 ....
落合朱美さんの服部 剛さんおすすめリスト(128)
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