円周率の最後の一桁に出会ったら
宇宙はそのときめきに吸い込まれてしまうだろう
数字とは限らないその解は
きっと愛を語る詩人のように嘘っぽい
輪転機が無限に探すが
解けない問題こそ美しい詩のよ ....
酸欠状態で喘ぐ金魚が
水面を見上げる角度で仰いだ空は
怖いほど明るい色をしていた
アイスクリームよりも呆気なく
溶けて流れ出したフレーズを
おろおろと掬い上げようとしたら
それは舗 ....
妻の誕生日に
新車を買って帰ることにした
プレゼント用ですか
と聞かれたので
綺麗に包装してもらった
走り出して
一つ目の信号にも行かないうちに
タイヤの辺りから
包装 ....
キリンが首を伸ばして
夜空の星を食べていた
星がなくならないように
父は星をつくった
どうしてキリンが星を食べるのか
なんて関係なかった
父はただ星をつくった
やがてキ ....
二人でガラスのコップに入って
誰かが水を入れるのを待っている
窮屈なのが
とても楽しかった
将来何になりたいか
お互いに言い合いっこをした
君は看護師になりたいと言った
僕は ....
風に舞うビニールを見て
詩が思い浮かぶなんて
詩人のすることじゃない
自分らしい言葉を
いつも持ち歩くなんて
詩人のすることじゃない
夕陽を見ても
何も感じないのが
詩人のするべき ....
子規は三十五で死に
二万句を書き
どれもが粒ぞろいだったという
病苦を記した散文を読むと
いたたまれなく 苦しく そして
生きる には濃度が 密度があり
濃淡があると思い知る
僕の思案は ....
ひし形の歪んだ街に産まれて
時々、綿菓子の匂いを嗅いで育った
弱視だった母は
右手の生命線をなぞっている間に
左耳から発車する列車に
乗り遅れてしまった
毎日、どこかで ....
詩は傷みです
あなたとわたしの間で
血が流れるように
空白を引き裂いた文字です
詩は苦しみです
あなたとわたしが共に
吐き続けたように
空白に汚れたままに散らかした ....
なんでもない詩人たちがけっこう好きなのです
ごく私的でもよいのです
ときに詩的でさえなくとも
ぼくのちっぽけな世界をあたためてくれる
ひとひらの言葉たちがたぶん
ぼくがなんとなくたいせつ ....
道路を丸めて食べる
どうしたら草の音みたいに
生きることができるのだろう
曲った色鉛筆
間違えないように覚えた言葉
値札の無い指の軌跡
並べることばかり
いつの間にか上 ....