自由を求めた深夜二時
切れかけた蛍光灯がちらついて
たまにはいいだろう、
インスタント麺に湯を注ぎ
背徳は美酒のようだと笑った
呑めやしない珈琲のかほり
まるで大人になったつもりで
....
御爺ちゃんは お魚を食べるとき それはそれは丁寧に
その骨をならべて
なぜか 零戦の話をしてくれた
骨のアーチを並べながら、「綺麗だ」「綺麗だ」と
繰り返えしながら 並べられる銀色
....
コンビニエンスストアで売っている、ひと口でたべられるゼリーは、ふたのビニールを開けるときにぜったいになかの汁がとびでてくるので、指がべとべとになってしまう。だから夫はそれを食べない。
夫のいない ....
お父さんの部屋は半分おなんどで
机の横にさびたバス停がありました
お父さんが3年前
会社の近くのがらくた市で買って来ました
私と妹は大喜びしました
お母さんは
「何考えてるのよ、こんな ....
亀とは
亀のようにゆっくりなペースで成長中の私の長女
この間9歳になった
その亀
学校以外の場所では
とっても朗らかでおしゃべりなのに
小学校入学以来
教室で全く口を利けない
少人 ....
担任の先生
支援学級の先生
児童心理学の先生
作業療法士の先生
言語療法士の先生
そうそうたる先生達に囲まれて
亀ちゃんについてのミーティング
亀ちゃんのテストの結果
チノウノハッ ....
母さん
ぼくは思いだしました
まだ若いあなたの
細くも強いその手にひかれて夏
緑に燃える蜜柑葉をくぐりどこまでも道はつづいていました
おばあちゃんのお家までねと
暑くて永い昼下がり
眩暈 ....
ことばなんて
無用なときが、あるね。
備え付けの
グレイのロッカーの扉を開けると
中に針金のハンガーが二本
ぶらさがっていた
わたしの前に
入院していた人が
使って残しておいたものだろうか
ただ一本の針金からできてい ....
その日
私は独り鉄棒に腰掛けて
夕日を眺めていたいだけだった
鍵を掛けて体の奥に仕舞っていたはずの
シキュウという箱の中に
エイリアンの胎児が
突如侵入してきたみたいで
ただ不快で気 ....
デパートの屋上で
メロンソーダ、いや、
クリームソーダ
そのこぼれおちた泡が、水槽の海を知らせる
午前零時、
マッチの先は折れていた
極限の闇は、明けていく、
午前一時、
柱時計は壁か ....
細長いのっぽビルの
1階から23階へ
光のエレベーターは昇りゆく
23階から1階へ
光のエレベーターは下りゆく
祈りとは
両手をそっと重ね
天と地をつなぐ交信である ....
背筋を伸ばしたスタンドの顔が
ジイドの古書の開いた頁を照らす時
長い間つけていない
TV画面に映る自分の顔と、目があった
バス停で他の街に逃げだそうと
元気のないジョウジは
襤褸雑巾のように
しわくちゃに俯いて
声を掛けても応えはしない。
大声で奴の名を呼ぶと
親指を立てて
「東京で一稼ぎしてくるぜ」
....
寂しいのって いやだよね
あたしも あんたの言いたいこと
わからないでもないのよ
でもそのために
自分を捨てちゃうんだったら
それこそホントに 寂しいことだよね
....
凍てついた北風に
千切れそうな私の耳が
ちぢこまって 蝸牛
冬枯れた街には
緑も少なく 小鳥もいない
鉛のような 空が重たい
春がこないかなあ……
声に出したら
一歩だけ ....
自分が書きたい詩を書くこと
読みたい詩が読めること
それだけの為に
命をかけていた
「おしん」の最終回のように
かつて、我慢に我慢を重ね
頑張る姿が人の感動を
呼 ....
薄く積もるから綺麗
かなり積もったら迷惑
雪も顔も同じだね
目の片隅に
ひとつ、ふたつ
過ぎゆく風が
いたい、さむい
けれどもまだ、閉じない
瞼をそのまま
このままで、
僕はまだ歩いて行くのだ。
....
明日のこととか
先のこと考えるから
不安の波が押し寄せてくる
今しかないのだから
今目の前にある幸せを拡大させる
今この場所から始まる
余計な心配が生きにくくする
自分 ....
路地裏の朝顔が綺麗なのは
それに丹精を込めた人の息遣いや想いを
一緒に重ねてしまうから
そういった情緒を
たっぷり吸い込んだ花だから
アパートの洗濯物なんかにそれぞれの家族構成やら
....
人は
たくさんの事柄を
忘れながら
生きています
朝起きてみれば
隣の空き地は
白く覆われて
ただひとつの足跡もない
とてつもなくやわらかい
真新しい道に思われました
その ....
ドゥン
ドゥン
ドゥンドゥン
ドゥー―――――――――――――――――――ん
振り子時計が
朝の
六時を
音 ....
四角い団地が建ち並ぶ
その中には四角いドアが並んでいて
ドアの向こうには四角い部屋が連なっているのだが
暮らしているのは どこか
丸みを帯びた人間だ
四角い暮らしに疲れてくると
人は ....
ときどきすごく
喉が渇いているとおもうときがある
言葉がのみこみにくかったり
うまくでてこなかったり
もういいやってあきらめたり
そんなとき喉はからからだ
あわてて喉をうるおすけれど
....
カラーリングの話をしていた
オシャレなセレクトではなくて
まるっきし 白髪染めですよ
なんて言いながら
うふふ と 笑える 淑女に なりたい
心だけでも
黒色を 手放した髪は
....
冷たい布団に潜り込んで
悴んだ体を丸め
膝を抱えて
ゆっくり目を閉じる
呼吸を整え心臓の鼓動に重ねると
間もなく私の意識は解き放たれ
私を形作っている六十兆の細胞の波間を
ゆらゆらと ....
昨日が消えていって
今日もほとんどが消えようとしている
私の心には
残るだなんて
そんなこと
忘れないよ
っていう人の
どこに残るというのだろう
思い出を
思い出す時間が ....
何かをのこしておきたくて
つづりたい指がかじかんで
きもちごとポケットの中
くしゃっとしたままだ
あきらめることがたくさん?
しかたないに変換
かなしいことを冬の海の底へしずめるの ....
終着駅まで眠っていた
雪がこそこそ降っている
汚い水のなかに
ゲンゴロウは浮かんでいる
だが、その正確な形状を
ちっともしらない私だ
....
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