冬の午後を
公園に置き忘れたので
急いで取りに戻った
言葉を頬張りながら
塾へ急ぐ子どもたちと
光速ですれ違いながら
公園に着くと
理科準備室から
そっと盗んでおいた
雲母の標本 ....
いまは幾度めの春なのだろう
遠い昔のような
つい昨日のような
子供たちもそれぞれに
この世界のどこかへ
紛れていった
いまも日々の食をもとめて
彷徨う身にも春はやさしい
な ....
別に昆虫の話じゃありません
これは一種の開き直り
あなたは平和主義者ですか
わたしは違います
大仰に言ってみても
所詮 頭と胸
頭で知った理想を
胸にぶら下げて生きること
本音と建 ....
言葉の繊維で細い白く光る糸を紡いでゆく
ゆっくりと一日かけて語彙と語感とを撚り合わせて
染色を施して様々な色の糸に仕上げてゆく
それはやがて布地に織り上げられ
誰かの肌を覆い隠してその人自身の ....
すべてがそよともせずにそこにある
流れるものからとりだされる静止画
こんな時間もいいとおもう
背景はつねにうつろいとどまることはない
いっしょにながれるのもいいさ
でも自分のなが ....
雪に埋もれたまま青く影を落とし
家々は俯き黙祷する
気まぐれにも陽が歩み寄れば
眩い反射が盲目への道標
抱擁されるまま
冷え切った頬が温もり
辺りに耳が開かれるころ
頭の後方 梢 ....
0次元
面積を持たない点は哀しくて
あられのようにパラパラと降りそそぐだろう
なんのうえに
1次元
線虫となった哀しみはのたうちまわって
それでも面積を持てない
2次元
....
ごすいって
ひすいに似たような
石
たおやかに
睡り続ける
午後
もくもくと
宝石になる練習をしよう
纏足の爪先から
あたたかな成分が溶け出していく
あらがえない{ルビ麻薬=レ ....
固く結んだ歴史の果て
柔らかな風を含んで君は花開く
大輪ではないが機知にとんだ
しっかりした花だ
空からやって来る言葉を迎えるために
僕らは産褥をしつらえねばならない
....
カップがソラだとしたら
コーヒーが注がれて
夜が来る
苦い夜がニガテであれば
ひとすじのミルクが注がれる
銀の匙は使わない
やがて白い雲は 時間に溶けてゆく
どこかに月が隠れて ....
フレドリック・ブラウンの死にいたる火星人の扉という創元社の文庫本
推理小説だが
彼には火星人ゴーホームという超絶な作品もある
火星年代記というレイ・ブラッドベリの名作
火星の赤い砂はア ....
冬の朝のフローリングは
薄い氷が張っている
朝一番に起きて
冷たい氷を踏むのは私の役目
ぱりんぱりんと音をたてて割り
かまどに火を入れ朝食を作る
陽が昇り
村人たちが起きる頃
....
廻り廻ってさようなら
季節はまたも去って行く
やがてはわたしも去って逝く
寒くなったね
それでも今夜はまだ
震えながらも網をかけて
待っていましたよ
今夜はまたすらりとして
....
煙草をすっている間考えたんだ
天気の良い日ばかりでは無い事を
世界はちょうど良い硬さでバラバラにならずに済んでいるが
手綱を緩めたら僕をおいて走り去ってゆくことを
ちょうどバランスのと ....
僕のこころは
いっぱいいっぱい
君のこころは
いっぱいいっぱい
世界のこころは
いっぱいいっぱい
また一粒
零れ落ちてゆくよ ....
下校途中のスクールバスに
突如乗り込んできた男達
怯える少女達に男が
「どの子がマララ・ユスフザイか?」と訊いた
まだ愛くるしさの残るきれいな瞳を持つ少女が指差された
次の瞬間彼女の頭と肩 ....
ここでは朱
こっちでは薄緑
紫陽花って
ほんとうはどれなんだろうね
ぜんぶだよ
雫がおちる雨上がり
ひとつにしたい私の心
見透かされて
じりじり太陽が照らす
いろんな色の ....
さみだれている庭
ひと雨ごとに、育つ緑がここにある
雨の匂いと土の香り
湿気は、ほんのささいなセンチメントも
美しくふくらませる
庭を見渡せる屋根付きテラスで
濃く煎れた紅茶を飲んでい ....
市場の朝は早い
そこには人間の胃袋を満たすという生の根源に直結した欲望の匂いと独特のエネルギーがある
狩人が獲物を担いで去ったあとに残された空間は
歯の抜けた老人の
ように
手持ちぶさたの待ち人顔な ....
生きる理由を探して 世界を見回してみても
目に映るのは 影ばかり
闇の中に暮らし続けてきた君の目は
眩しすぎる光を浴びて めくらも同然
穴倉から這い出して
看板に書かれたルールを読もうと ....
おとしぶみと言う虫に託す詩集ひとつ恋愛論のなれの果て
ストリートミュージシャンにあすを尋ねるどのコード進行で生きるかと
炎天下脳みそは妄想やめて夕涼みプラタナスの鈴の葉陰に
初音ミク ....
おいてけぼりにされたんじゃない
あたしが一番なんだ
そんな苦しいいいわけが
あたしを支えていたあの頃
なんであんなに強かったのか
足裏ばかりがふんばっていた
きっといつもはだし ....
おもうんだけれど
すべての真実はきっとどこかの看板の裏にでも
ちいさな文字でこっそりと書いてあるんだ
ぼくの夢の中の沙漠の入り口で老人は言ったのさ
誤解は理解の種
迷妄の畑にも真実の苗は ....