一本の荒れた道を科学者が歩いている
意識があるうちに離れないように、
 その少し後ろを歩いているのだ
二人が進むと左右の景色は前後非対称に動く
歩いている道の途中には幾筋もの横道が逸れてい ....
ある日 机の上にぽつんと

見上げる空に 小さくぽつんと

夕食のときに突然、妻がぽつんと

揺れる吊り下げ広告にも なぜかぽつんと

──見知らぬ──
「新しいことば」が

そ ....
澄み渡る群青と
オレンジ色のグラデーションが美しい

今日は何か良いことがありそうで

酔い覚めに香り立つ珈琲を飲みながら
バッハのゴールドベルクを聴いている

グールドの技巧が心地良 ....
ひんやりと ビルの光の壁に沿って
次つぎ沈んでゆく白イルカ

隙間なくガラス 張り詰めた仮託
喪って久しいどれが本能 

暗闇に光るコバルト毒を呑み下し
冷却し 豊かなゴミ色とりどりの儀 ....
人生をする前に
ぼんやりと生きてしまった
そのぼんやりが
いつしか人生になってしまった
いつだって間違ってきたし
正解などわからないまま
年老いて来てしまったが
正解ばかりを選べる人生な ....
この町のどこか
古いアパートの
薄暗い部屋の片隅にひとり
力なくうずくまっている
私を見つけたら
無駄な足掻きでもよくやったなと
労ってあげてください

あるいは
都会の真ん中で、大 ....
  終章 「冬日和」



 「豪州産切落とし牛でいいんよ! これと、鶏のモモ肉にしよ」
 「お肉、八百円いってないわっ」
 「タレはさ、こっちの使い切りサイズで料亭の味っていうフレーズの ....
血液型のようなイニシャル
同じ時間を笑ったしあわせ

同じ夕日を 眺めた焼却炉の傍で
一番星を ヴィナスを指さして
雨の廊下を渡る時
図書室の扉を開く時
好きな娘に見られながら
私が部 ....
音も光も波だ
わたしは糸のもつれたまま
すぐそこの手遅れに輪郭を求めた
模索する指先を虚空が握り返す
ゆっくりと破裂する木蓮のよう

去る旋律 その尾羽の煽情的なタクト
裁ちばさみはどこ ....
恋待ち暮らす。丁寧ですら朽ち、迷子。
こいまちくらす ていねいですらくち まいご


無いならいいよ、花占い習う。名はよい、要らないな。
ないならいいよ はなうらないならう なはよいいらない ....
照り返しの熾烈な光線に
プリズムを当てて

と喜ぶ声を捕まえようと
駆け出すが
蜃気楼に溶ける
その先に本当は水溜りがあるのだろうが
鼓膜は破れている

湿度の高い畳の上で唱える
 ....
またお前が溌剌として空間を行き来する季節が来るよ
まだ蜜はまばゆい重みを湛えるまで熟してはいないが
やがてあらゆる明雪を終わらせる風の便りに指を開き
柔らかな触角で時が経てる悦びを弛まなく識るだ ....
  第八章 「戦力外通告」


  私を乗せる診察ベットのキャスターは、真夜中の廊下をキュルキュル滑
 りながらレントゲン撮影室へ向かう。再び救急医療診察室へ戻って来ると、
 若い当直医はデ ....
君がいないと、
もがくような夢ばかり見て
毎夜、悶々としている

きっと 繋がっている

ずっと、そう信じてきた

いつかボクは声になりたい
君の隣で、囁く声に

 永い時が流れ ....
  第六章 「死の砦①」



 「な、見て。またやってはるわ……『松の廊下』」
 「ほんまやなぁ」
  午前の館内清掃へ向かう若手職員らが足を止める視線の先には、主任と
 副主任の姿。 ....
  第四章 「メモワール」④



 「なんなん? あのベット」
  四歳年上の先輩の木崎さんが、病室の西側の壁へピッタリ寄せて在る空
 ベットに目を向けた。敷かれる古びたスプリングマット ....
世界一標高の高い駅に着いた
車掌以外は観光客で皆
酸素マスクをつけている

空気が薄いので皆
紙のようにペラペラになる
喜びも哀しみも薄くなるので晴れ晴れとする

風が吹けば
空高く ....
足す、春の二乗。四時に乗るバスだ。
たすはるのにじょう よじにのるばすだ


理科「あたし、数を透かした明かり」
りか あたし かずをすかしたあかり


筒、いくつも歪むおむすび持つ。 ....
車を買うことになってディーラーに行った
担当者は車じゃなくて部屋の間取りを説明し始めた。
3LDKで賃料は15万
我が家は荷物が多いので3LDKでは狭いので
4LDKは無いかと聞いた
担当者 ....
いっぴきの草鞋虫を片ほうだけ履いて、
春が土足で入ってきた、
ながらく寒かった和室の畳の上にも、
いっぴきの草鞋虫が入ってきた、
ワラジムシ、
おまえは、とてもちいさなちいさな、
春の外履 ....
 ピアノの鳴る室に
 ふと情事の匂いを嗅いだ
 犬や猫の恋ではない
 汚れ切った人間の恋でもない

 冷たい冬の北大路をよろめきながら
 月の無い日をさまよって
  この生命
  唯美 ....
みんな 考えることが
おっくうに なったので
頭を はずして
かわりに 肩の上に
鳥籠をのっけて 歩いてた
鞄を抱えた 背広姿の人も
バス停でバスを待つ 女の人も
みんな 肩から上は ....
もうその土地は更地にして
地主さんへ返したそうですが

礼文の古い家 元は漁師の 父方の親戚の家には
ものすごく腰の曲がったおばあさんが
何年ものあいだ 一人で住んでおりました

私の母 ....
おしまな!
(そうだね、お日様
(今日は良い天気だね
おじゃたまくし!
(ちいさな春の子
(おまえと同じ
(三月生まれかもしれないな
斜めに陽が差し込むと
ぼくたちも斜めになってたね
 ....
焼却炉は歌っていた
夢や人生
思い出を焼きながら
異臭を放ち黒煙が
空の裾をつかもうともがいていた
燃やしても燃やしても
機関車みたいに進みはしない
どこにもいけない
過去にも
未来 ....
水と夜の境に小舟を浮かべ、
満天の煌めく星々を灯りに艪を漕ぐ
海の風が星からの歌声を運び、
甘く幽かなソプラノが船べりを撫でる

銀河のうねりが船を揺らした
艪の先の海を覗くと、
青く耀 ....
 「ミズノちゃん、元気ありませんね…。」
 「まあな…。私らでも、ショックやからな。」
 旧館寮母室で朝のミーティングを終えて
 ミズノちゃんが出て行った後、
 若手職員らは話す

 三日 ....
 「な、見て。またやってはるわ…『松の廊下』。」
 「ほんまやなぁ。」
 午前の館内清掃へ向かう若手職員らが足を止めて
 視線を投げる主任と副主任の姿
 朝礼を終えた会議室から
 旧館へ戻る ....
 「ハマさん、夕食後また三十万盗難事件ありましたよ。」
 「困ったもんやなぁ…。一昨日の空き巣はキクチ君やったしな。」
 「今夜あたしですわ、さんざん…。」
 宿直日の二十時前、事務所におられる ....
冬眠から目覚めたクマが一番にやらなければならないのは歯磨きだ。それから税金を申告に行く。顔を洗い髪の毛に櫛をあて下着を履き替えるともうこんな時間だ。できるだけ先のピンと張った歯ブラシを見つけて蜂蜜 ....
そらの珊瑚さんのおすすめリスト(7973)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
遊歩道(trap.street)- アラガイ ...自由詩3*24-3-28
新しいことば- atsuchan69自由詩8*24-3-28
- レタス自由詩3*24-3-27
都市空白- soft_machine自由詩724-3-26
人生をする- 岡部淳太 ...自由詩624-3-26
伝言- ヒロセマ ...自由詩6*24-3-25
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...6*24-3-25
A・Hへ- soft_machine自由詩6*24-3-24
瞑る春- ただのみ ...自由詩3*24-3-24
占い恋習う- 水宮うみ自由詩1*24-3-24
空色- 中沢人鳥自由詩6*24-3-24
ミツバチ- soft_machine自由詩10*24-3-23
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...5*24-3-23
想い- atsuchan69自由詩6*24-3-22
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...6*24-3-20
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...6*24-3-19
標高の高い駅- ふるる自由詩424-3-19
意思またぐ魂- 水宮うみ自由詩1*24-3-18
夢十夜_⑩- レタス自由詩4*24-3-18
ワラジムシ- 本田憲嵩自由詩624-3-17
色神- リリー自由詩5*24-3-17
鳥籠。- 田中宏輔自由詩14*24-3-17
漁師の家_うつくしい硝子- 自由詩9*24-3-17
birth/三月のうた- ちぇりこ ...自由詩1024-3-16
- ただのみ ...自由詩3*24-3-16
潮風の路- atsuchan69自由詩8*24-3-14
鏡像(18)「死の砦」②- リリー自由詩5*24-3-12
鏡像(16)「寮母さん」- リリー自由詩5*24-3-11
鏡像(15)「長い夜」- リリー自由詩4*24-3-11
クマの申告- アラガイ ...自由詩4*24-3-11

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