ちゃんと生きようとすることは実に辛い
生命は宇宙のようだと偉人は言う
だから星座達も僕らを眺めるのか
目を閉じて見る夢が
宇宙のファニーサイドだからね
そう受けとるか
あの夜の流星 ....
指でかきあつめた空を
誰かが道ばたで食べている
遠い指の跡を見上げながら
傾いだ光ばかりが降り立つ
目の前にのびる一本道は
どこにもつながっていないように見える
....
もういない
切り取られた空間
いつもの椅子の上に
黒く切り取られた空間が
重く 黙りこくっている
しわしわと凝った
妻の肩を もみながら
目は 切り ....
読みかけの詩集を逆さまにすると
文字の列たちは
不ぞろいのビルディングになりました
そして
下のほうにあった余白は
広い空に
しばらくその様子に見とれていましたが
何かが足りない気が ....
ばらばらに散らばっていた いろんな言葉が
ひょんな瞬間体に まとわりついてくるんだけど
でも
知らない女の舌が
僕の肌をすっと すべっただけで
またそれはすぐに ばらばらになって消えてしまう ....
{引用=
「最悪の事態などというものはない。事態はまだ終わっていないか
らだ」そう確かに事態はまだ終わっていない。とすればまだ最悪で
ないということか。いつから事態ははじまったのだろう。数分、数 ....
世界は
もっと不思議なままでよかったのに
虹の七色
逃げ水
姿見
知ってしまった全てが
恨めしい
君よ
その背中を覆う漆黒は
僕の夜だ
初めに与えたのは君のほう ....
死んで食べられたい
僕が尊敬していた友達みんなに
おいしく摂取していただきたい
僕はの肉はパン
僕の言葉はワイン
みんなの口に合うことを望みます
僕の心臓が猪野君の胸で脈打つ
僕 ....
平日
関西には大阪という名前の大きな猫がいて
背中に通天閣を生やしたり
わき腹に天王寺を縁取ったりして
とても猫とは思えないような奇声を発しながら
のそのそと同じところを行ったり ....
おともだちとお茶
いいかげんなわたしは
話し相手に
いいらしい
少し欠けた茶碗は
お気に入りのブルー
だから
捨てないで
使ってる
天気の良い日は
遠くへなんて行かないで
....
視界に広がるこれまでが
あまりに深いので
私たちはすくみながら頂に立ち
いつの間にか手を繋いでいた
あの層を一枚一枚剥がしてゆけば
私たちがいつか手放した大切なものに
また会え ....
{引用=右手と左手のための協奏曲 より}
●雨の精
一度書いては捨てられた詩のように
誰にも知られることはないけれど それでも
人の心に光と影を投げる一瞬があります
ちょうど水たま ....
色は午後から塗りましょうと告げられ
私は途方に暮れてしまった
先生、
この鉛筆でなぞるべきものなど何処にも見あたりません
という小声の訴えは
38分の1の軽さでもって
上着のポケットに ....
{引用=詩集『カエルトコ』より; 1}
●アフリカ
いつかアフリカに
行くのではないかと思う
いつかいつか年老いて
総入れ歯になったその月に
アフリカに着の身着のまま
行 ....