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{引用尾=昨日まで聞えなかった蝉が鳴き出した}
 *
悪を行うつもりで行う悪はたかが知れている
だが善を行うつもりで行う悪に際限はない
それは敵対勢力と自己犠牲の陶酔感でより強固になる

 ....
 祖父の無線アンテナが世界中から不幸を手繰り寄せていた
朝はもう昔だ。ツユクサやイヌノフグリに覆われたあの土の
盛り上がった一角、あそこが祖父を埋めた場所だと、誰から
教えられた訳でもなくずっと ....
本能は満たされる
理性は
果てしない貪りへの扉である



錬金術師のように
どんなものからでも美を抽出する輩がいる
彼が対象に魔法をかけているのか
見ている者に魔法をかけているのか ....
雨の吐息に八重咲きの桜しばたいて
落ちたしずくを掻き抱き夢見心地で逝く蟻の
  複眼の曼陀羅
    太陽を入れた万華鏡

黒曜石は夜に溶けながら半球を渡る

うす闇からうす紅
八重に ....
鈴は沈む 大気の蜜へ
黙したものの{ルビ自重=じじゅう}により

若葉に光の飛沫
     木漏れ日の揺り籠に落下する蜂

五月の河畔を夢がさまよう
  ポケットの中に全てを失くしている ....
問い質すことはしない
その背にただ頷くだけ
否定も肯定もしないことで
ぬかるみを隠し
死へ そっと後押しする



数十億の盲人が夜を編む
匂いを持つ風は翼を解くと
女のつま先をし ....
愛は真っすぐ丘を登って行った
蹄の跡を頂に置き去りにして
光は渦巻いている
春の風がむき出しの土を{ルビ弄=まさぐ}っている

あの日太陽を塗りつぶしたのは誰だったか
わたしの心臓を突き刺 ....
{引用=デマ}
風に煽られるロウソク
それでも消されることもなく
怯えて 震える炎
ささやかな灯と温もりを
与える術も忘れたかのように




{引用=御免だね}
出来事は恐れな ....
隣家の屋根から翼のような雲が見える
朝の微睡みから覚め
膝に居座る悪夢が霧散するまで
蛹の時間
軒の氷柱の光の粒は 
瞼につめたいやわらかな真珠
木々の梢を半ば強引に愛撫する風
その風に ....
 *

終りのないものの終わりを決める
生きることは括り閉じることの繰り返し

言葉に置き換えられた
かたちのないものが夜うっすらと発光する
夏の夢の欠片が螢なら

抗うことを止めた ....
休み増えても給料歩合 酒は増えても出かけない


端からなにも無かったくせに 失くしたものと想いたい


よどむ曇天どんより映す 病める瞳になにを読む


下手なエレキと下手な詩吟と ....
宵に呼ばれて寄れば良い酒 酔ってよろけた夜の路


魚も鍋も奉行がさばく アクをすくって膳こらす


熟した柿はむかずに啜れ 女むかずにゃ啜れない


周回遅れ時代と競う 若さ失くし ....
朝酒の代わりにシャンソン秋に酔う


幸せは演じることがその秘訣


極端に厚着と薄着の大学生


影を踏む鬼と知られずする遊び


花供え帽子目深に被る人


暗渠へと ....
家を出る秋の耳打ち襟を立て


空は澄み夢の骸か月白く


十姉妹通風孔を{ルビ窺=うかが}って


靴の紐ほどけて結ぶ霜の朝


人気ない路を横切る枯れ落葉


見上げ ....
愛死体秋すぐに冷たくなって


泣くように笑う男が書いた遺書


未来捨て過去と駆け落ち心中する


蝸牛踏めば悲しい軽すぎて


傘の花みんな流れて校門へ


ひっつめ ....
窓ガラスを伝う雨
樹木は滲み油絵のよう
秘密を漏らすまいと
ずぶ濡れで走り続けた
若き日のあなた
尖った顎
靴の中の砂粒を取る間も惜しみ
聞えない声を聴くために
人々から遠ざかり
た ....
黄の蝶と白の蝶とが連れ立って渡る線路に光倒れて


風も無く半旗を垂れたわが心空は高くてなにも見えない


あてどなくふるえて迷う小さな蛾人に纏わりなにを思うか


説明も言い訳もも ....
言葉のフェイクを削ぎ落し
白骨化したあなたを抱いている
突風にあばらが鳴ると
手を取ってかちゃかちゃ揺らしてみた
骨盤に唇を押し当て目を瞑る
あなたは眠りからさまよい出た夢で
青いインクで ....
互いから目を反らすため見るテレビテープを貼った風船に針

見開いて水に倒れた金魚の目土葬にした日の絵日記帳

酒が止み雨に酔ったら{ルビ螻蛄=ケラ}の声死ぬまで愚直に夢を掘り

四十万にも ....
ひと粒の種の眠りに欹てて
空と地は結ばれる
養い子らの息
殻の中で膨れる水脈 
夢のからだが眠りを突き破るまで

太陽が孵す夏の日は澄んだ炎
抱きしめた夜は火傷を負って
欠片ひとつ 片 ....
風は立ち止まると消えてしまった
草木が{ルビ堪=こら}えている囁きを零すまいと
螢を宿した子宮のよう緑は極まり
森は風の帰りに欹てる

蝶の影が肩を掠めた
あるはずのない感触は誰かの笑いの ....
  光に眩む草刈りの
  発動機の音
  青々とした虚無に吸われて
  日めくり捲る孫の手中
  また皆殺しの夏が来る


「頭のいい憂鬱はよろしくない 理屈っぽいのは特に
「そんなや ....
 *

川沿いの萌え木はふるえている
見えない愛を実感したくて
目を閉じて 身をゆだねた

 雨の弦 爪弾く眼差し

貝殻を拾う仕草で
またひとつくぐる風の裳裾
昨日も今日も 
 ....
青空の月の白さ
距離を縮める嘘と幼子の足どりで
君の春は靡く
裏地には満天のプラネタリウム
湛え切れずに流れて落ちて
爪先に当たる石ころたち
祈りのように置き去った
今そこにある過去
 ....
雨は解かれる時間
こどもたちの声の重なり
散る 花のモザイク
煙は祈り 空は響かず
水は光を乗せて黒く笑う
蛇のように去る なめらかに


井戸に落ちた人
井戸が歩いている枯渇した
 ....
けれども雲はいつも太陽を仰いでいる
暗雲だから項垂れて地を見下ろしているとは思うな
幸福を見つけた者が全てを置き去りにするように
地のことなど顧みはしない
どれだけ雨が降ろうが雪が積もろうが
 ....
娼婦の臍の下に咲く薔薇のタトゥー
聖書を一枚ずつ破って巻紙にする
燐寸に踊る白い蛾のささやき
さ迷うオーブ雨の匂いどこまでも
――おやすみなさい


――追伸
あなたには太陽を
終わ ....
線香花火の玉落ちて
地平の向こうは火事のよう
昼のけだるい残り香に
なにかを始める気も起きず
夏の膝の上あやされて
七月生まれの幼子は
熟れた西瓜の寝息させ
冷たさと静けさの
内なる潮 ....
水の空へ落ちる蝉
十全に ささやかに
冷たい太陽がコクリと飲んだ
――句点はどこ
滔々とただ滔々と
置き去りにされ
ことばは向こうばかり見て



             《句点 ....
君が君とはまるで違う小さな花に水をやる時
じょうろの中に沈んでいる冷たい一個の星が僕だ
ビー玉越しの景色を一通り楽しんだなら
必ずベランダから放ること すべて朝食前に
僕の口笛が余韻を引いても ....
梅昆布茶さんのただのみきやさんおすすめリスト(534)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
六月酔歌- ただのみ ...自由詩2*20-6-7
帰郷- ただのみ ...自由詩4*20-5-31
道楽者- ただのみ ...自由詩3*20-5-24
八重に愚かに- ただのみ ...自由詩4*20-5-17
忘れられた一行のために- ただのみ ...自由詩7*20-5-16
流刑者の楽園- ただのみ ...自由詩4*20-5-9
術もなく- ただのみ ...自由詩10*20-5-3
行方知れずの抒情_五- ただのみ ...自由詩2*20-3-15
201912第五週詩編- ただのみ ...自由詩3*19-12-31
201912第一週詩編- ただのみ ...自由詩11*19-12-8
もう冬でいいでしょう_【都々逸】- ただのみ ...伝統定型各 ...7*19-11-9
老若男女恋愛事情_【都々逸】- ただのみ ...伝統定型各 ...6*19-11-2
真似事――空白に遠く鳴り- ただのみ ...俳句3*19-10-27
真似事――破れた包装紙- ただのみ ...俳句3*19-10-19
真似事――愛・死体・秋- ただのみ ...俳句4*19-10-12
感傷――観賞のための- ただのみ ...自由詩5*19-9-23
まねごと――門口に終わりの予感- ただのみ ...短歌3*19-9-22
自由の女神- ただのみ ...自由詩5*19-9-16
まねごと――悲哀のもどかしさ- ただのみ ...短歌4*19-8-31
擬態標本- ただのみ ...自由詩4*19-8-3
反射光- ただのみ ...自由詩7*19-7-21
内出血- ただのみ ...自由詩5*19-6-30
音叉- ただのみ ...自由詩11*19-5-26
反応援歌- ただのみ ...自由詩3*19-4-17
潤むモザイク- ただのみ ...自由詩9*19-3-31
幸も不幸も- ただのみ ...自由詩12*19-1-2
最後の絵葉書- ただのみ ...自由詩11*18-8-4
枝垂れる文字も夏の蔓草- ただのみ ...自由詩14*18-8-1
句点- ただのみ ...自由詩8*18-7-18
題名を付けられたくない二人- ただのみ ...自由詩13*18-6-30

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