すべてのおすすめ
 
 
昼休み、お弁当を開けると
中には凪いだ海があった
これはどうしたことだろう、
と電話をしても妻は出ない
それどころか、
海の中から聞き慣れた着信音がする
海が見たい、と言ってい ....
 
 
今年も年に一回の 
メリーゴーランドが
広場にやってくる 
君は朝から鏡の前で
お洒落に余念がない 
 
僕は教わったイチゴ水の
作り方を思い出しながら 
除草剤を作った ....
 
曖昧な更衣室で
僕らはすべてのものを
等号で結びあわせた
軟らかい材質でできた身体は
嘘をつくことが
何よりも得意だったから

花粉の積もった改札を抜けると
溢れだす人という人
 ....
 
 
キリンが首を伸ばして
夜空の星を食べていた 
星がなくならないように 
父は星をつくった 
どうしてキリンが星を食べるのか
なんて関係なかった
父はただ星をつくった
やがてキ ....
 
 
ネズミもいた

アヒルもいた

犬もいた

小さいけれど
電気で動く遊具もあった

あっちにいるのは着ぐるみの
偽物ばかりではないか

そう言って
こども動物園の ....
インド服を着た男の人が 
エレベーターの中で 
みんなに挨拶をしている 

不透明な窓の向こうに 
一律に外があるとすれば 
それはすっかりの春だ
 
古い鉤括弧は捨てておいて ....
 
 
栞の代わりに挟んでいたミルクをこぼして 
僕らはどこまで読んだかわからなくなった 
立春が来たことに気づかないまま
掃除を始めた人たちみたいに
ひどく狼狽えた気持ちになった 
 ....
 
 
高い高いをされてる時が
一番高い時だった
何よりも誇らしい時だった
もう僕を持ち上げられない父が
故郷に帰る段取りを心配している
ぶつぶつとうわ言のように
出鱈目な記憶を繋ぎ合 ....
 
 
剥がれないようにして走る 
名前を失った
低い温度のままで

足元を照らす僅かな灯りを
希望と呼ぶこともなくなった 

脆い身体は既に
言葉の繰り返しとなり
穏やかに壊れ ....
独りさすらう俺の体を 
降りだした雨が切り刻む 
切り刻まれた俺の体は軽く分裂する 
でも心は切り裂かれないから 
浮いたまま 
雨に打たれても 
俺の心は乾いちまってる 
おまえがいな ....
 
 
夜、寝ている間に僕は 
優しい形になった 
とても優しい形になった 
とても優しい形だったので 
誰にも怒られなかった 
誰も傷つけることはなかった 
どうして昼間は 
あん ....
商工会館が閉鎖された街に
バナナ売りの声が響く
ゼラチン質の船に乗って
目の見えなくなった犬は
遥か遠洋へと向かう
たて笛の隣にある空き地に
僕と彼女は小さな家を建てた
悲しみ、とい ....
 
 
国境線の上に魚が死んでいた
線に沿ってナイフで切ると
両方の国から猫がやって来て
半分ずつ咥えて行った
近くでは国境線を挟んで
男たちがチェスをしている
自分の陣地は真ん中ま ....
あなたの育てていたザリガニが
アメリカザリガニが 
また大きくなりました。
時計台の近くで
風は風の音をたてて。
私たちの脱皮とは
いったい何だったのでしょう。
生きることと死ぬ ....
 
父が釣りをしている
何を釣っているのか聞くと
忘れたと言う
僕も隣に座って糸を垂れる
息子とよくいっしょに釣りに行ったもんだ
という話を皮切りに
父が息子の自慢を始める
小さいころ ....
 
 
ひし形の歪んだ街に産まれて
時々、綿菓子の匂いを嗅いで育った

弱視だった母は
右手の生命線をなぞっている間に
左耳から発車する列車に
乗り遅れてしまった

毎日、どこかで ....
 
 
君を抱きしめる
折れそうなその細い体は
案の定
折れてしまった
添え木になるものを探しながら
僕は君の名前を呼び続ける
あなたが悪いんじゃない、と
君はできるだけの笑顔で言う ....
 
奥の虫歯が痛かったので
バスに乗った
バスなんてないのに
歯なんてとっくの昔に
なくしてしまったのに

強風波浪注意報の町で
希望、という名の音楽を買った
嬉しいことが
少しだ ....
深夜放送が終わる
テレビを消す
ビルの谷間から
ヒグラシの鳴き声が
聞こえる日がある
そうかと思えば
砂を一粒も見かけないで
過ごす日もある
ざーっ、と
砂嵐の口真似を
ひ ....
牛丼屋でウシが食事をしていた
まさか共食いか、
と思ってよく見ると
豚丼だった
食べ終えたウシは
お父さんごめんね、と言って
手を合わせ
泣き始めた
他のお客さんは皆
見て見ぬふ ....
故郷の僕が糸電話で
「お元気ですか」と尋ねる
それから
口にあてていた紙コップを耳に、
耳にあてていた紙コップを口にあて直し
都会の僕が
「元気です」と答える
そんなことを
終 ....
 
 
最初から、少年も
少女もいなかった
ただ、名前すらない、
願いのようのものが二つ、
風の中で
寄り添っているだけだった
大人ってばかだね
大人ってばかだね
そんなことを
 ....
少年は夢の中で
少女を追いかけて走った
他愛もない遊び
もう少しでつかまえられる
というところで目が覚める
隣では妻が寝ている
自分はこの少女の何を
つかまえることができただろう
 ....
 
 
夜の駅、少年と少女は
ベンチに座っていた
この町を出たかった
手の中には僅かのお金
二人だけで生活するには
あまりに幼かった
それなのに小人料金では
もうどこにも行けない
 ....
少年はカブトムシをつかまえた
兄が教えてくれた秘密の場所だった
早く少女に見せたくて走った
その頃、少女は黙祷をしていた
自分の汗が少し臭いと思った
生活というものは量であると
感じ始 ....
 
 
霊安室に母が椅子を並べている
「みんな死んだのよ」
いつこの仕事に就いたのだろう
死んだ体を扱うように
丁寧な手つきで並べていく
手伝おうとすると
「いいのよ、毎日、お仕事、 ....
 
 
物、その影は
量となり
嵩となる
影という影は
新たな影をつくり
高く目を瞑ると
擬音語のような
か細い音を立てて
雨が降り始める
わたしは先ず
折り急いだ
紙のこと ....
 
 
今日、豆腐は
朝から不在だった
テレビの画面でも
新聞や本などの印刷物でも
その姿を見かけなかったし
豆腐、という言葉すら
出てくることはなかった

妻との他愛もない会話に ....
 
 
豆腐のプラモデルを買った
部品が全部そろっているか確認した
思ったよりもたくさんの部品があった
毎日空いた時間に少しずつ組みたてた
その間に何通かのダイレクトメールと
公共料金の ....
 
 
カザフスタンから来た
優しい女性看護師が
僕の脚をさすりながら
もう痛くないかと聞く
もう痛くないと言うと
良かったと嬉しそうに言う
カザフスタンはどんなところか聞くと
日本 ....
梅昆布茶さんのたもつさんおすすめリスト(111)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
海弁- たもつ自由詩1713-3-26
メリーゴーランド- たもつ自由詩413-3-21
初夜- たもつ自由詩613-3-19
星ひろい- たもつ自由詩1713-3-14
東京ディズニーランド- たもつ自由詩813-3-9
春の収集日- たもつ自由詩513-2-28
代理睡眠- たもつ自由詩913-2-27
高い高い- たもつ自由詩1213-2-25
地下鉄- たもつ自由詩1013-2-20
独りさすらう- たもつ自由詩813-1-31
優しい形- たもつ自由詩1513-1-18
見殺し- たもつ自由詩1113-1-16
国境スープ- たもつ自由詩813-1-12
忘却- たもつ自由詩813-1-5
正月- たもつ自由詩2313-1-3
誕生日- たもつ自由詩2312-12-28
パレード- たもつ自由詩612-12-24
さよならの町から- たもつ自由詩1212-12-22
都会図鑑5- たもつ自由詩512-8-2
都会図鑑4- たもつ自由詩712-7-25
都会図鑑- たもつ自由詩512-7-22
ボーイ・ミーツ・ガール(もうひとつの)- たもつ自由詩13*12-7-20
ボーイ・ミーツ・ガール(僕だけの)- たもつ自由詩8*12-7-17
ボーイ・ミーツ・ガール3- たもつ自由詩8*12-7-14
ボーイ・ミーツ・ガール- たもつ自由詩14*12-7-9
名札- たもつ自由詩812-6-17
- たもつ自由詩812-6-10
豆腐の不在- たもつ自由詩912-6-9
部品- たもつ自由詩1312-6-7
カザフスタンの看護師- たもつ自由詩912-6-3

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