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心を見た人はいません。  
心に手をふれた人もいません。  
それでもみんな 
心の場所を知っています。 

もしも心がなかったら 
今日のあなたは、笑わない。 
昨日の私は、涙を流さな ....
なかなかはいはいしなかった周が 
ある日突然、棚に掴まり立ちあがった。 

「すごい、すごい」 
諸手を叩いて、僕は言う。 

「ぱ・・・ぱ・・・、ぱ・・ぱ・・」 
こちらを向いて、周が ....
帰りの電車に揺られながら、頁を開いた 
一冊の本の中にいるドストエフスキーさんが 
(人生は絶望だ・・・)と語ったところで 
僕はぱたん、と本を閉じて、目を瞑る 

物語に描かれた父と幼子を ....
家に帰って、腰を下ろし 
一才の周をだっこすれば 
小さいいのちの温もりが 
このお腹にあったかい 

この両手を 
短い足の膝下に組んで 
右に左に、ゆさり、ゆさり 

パパは君の ....
戦中・戦後を生き抜いた 
ある詩人が世を去った後 
長い足跡のつらなりと 
ひとすじの道の傍らに 
彼が種を蒔いていった花々が開き始める 

今迄の僕は 
別の場所で夢を求めていたが 
 ....
早朝の散歩で 
ふと、こちらに合図した 
草の露に宿るひと粒の太陽 

それがこころの鏡なら 
一体どんな思いを
反射して 
私は歩いてゆくだろう―― 
枯草の中に埋もれた 
名も無き花のつぼみが 
こちらに口を開いていた 

花の声に耳を澄ましていると 
自らのつぼみが 
開いてゆきそうな気がする 
あなたはその(目)を視たことがあるか? 
私はその(目)を視たことがあるか?

ほんとうの(目)はいつも 
鳥の羽ばたく虚空から 
世界の物語を眺めている 

私はあなたを視たことがあろ ....
2階の窓の下から
ざあっざあっと
枯葉を掃く音が聞こえる 

朝になると
向かいの家のおじいさんが 
箒ではく音だ 

日々の雑念というゴミが 
すぐに溜まる僕の心も 
あのおじい ....
この部屋の窓からは 
雨の降り始めた{ルビ靄=もや}の向こうに 
遥かな山々の緑があり 
眼下に一面の畑は広がり 
歩道には、レインコートを着た犬と 
飼い主が歩調を揃えて、歩いていった 
 ....
なぜか知らぬが 
私の目の前には 
日々ひとつひとつの穴が、ある。 

この両手に盛ったやわい土で 
一日、ひとつの穴をふさいで 
一歩ずつ、歩いてゆくならば 

ふりかえった背後に、 ....
お年寄りの入浴介助前に 
同僚のU君が着替えた後はいつも 
僕の下の引き出しが閉まらないまま 
脱いだ衣類が、もりあがっている 

引き出しを開けるたび 
骨が折れるが 
日頃の僕にも気 ....
変えよう、昨日まで濁っていた空気を 
変わろう、まあたらしい明日を演じる役者へ 

昔の僕は、めんどうくさいと思っていた 
今の僕は、仲間と一つになってゆこうと思う 

3・31という日付 ....
五年程前に、上のの美術館で見た 
山下清の描く「地下鉄銀座線」   

暗い線路のトンネルに 
あたらしい昭和のライトを灯して 
完成したばかりのホームに 
ゆっくりと入ってきた 

 ....
新しい、新しい、と未来ばかりに手を伸ばし 
追えば追うほど、幸いの虹は逃げてゆく 

{ルビ古=いにしえ}の魂の形象を宿すものこそ 
今・ここに新しい 

古の魂をそっと胸に納め 
自ら ....
生まれ育った故郷の林が大好きな 
賢治の妹トシは額に汗を滴らせ 
まぶたの裏に 
この世という牧場の出口で 
風に開いてゆく、木の扉を視ていた 

息を切らして、家に戻った賢治が 
震え ....
お年寄りが耳から外した 
補聴器の電池が外れて 
キーと、鳴っている 

僕自身の内にある 
電池も少し、外れているので 
脳の何処かが
キーと、鳴り 

雲に覆われた空から
(天 ....
浜辺にて、両手で掬った 
無数の砂に 
たったふたつの光った粒は 
あなたと私 

無限に広がる宇宙の闇に 
ぽつん、と浮かんだ地球の中で 
たまたま出逢った 
あなたと私

た ....
人は皆いつか「自分」という
透けた衣服を、脱いでゆく 

その日まで誰もが人という 
何処かが欠けた、器です。  

(器にはゆるしという
 {ルビ一滴=いってき}の水が響く  ) 
 ....
上野の美術館内で 
ガラスの内側に坐る法然上人は 
時を越えて歩いて来た 
旅人の私を待っていた 

少し猫背に身を屈め 
指のすき間から数珠を垂らし 

700年前に描かれた 
色 ....
嫁さんのお腹がふくらんだ頃に 
富山に嫁いだ姉から 
大きなダンボールに詰めこんだ 
育児セットが届いた 

やがて赤ちゃんが生まれてからの日々を 
哺乳瓶や抱っこひもが 
育児に追われ ....
神保町の古書店でみつけた 
亀井勝一郎の本を開く 

薄茶けた頁の紙を捲れば 
文中の「純粋」の粋のところに穴が開き 
前のページの「醜」という字が穴に重なり 
「純醜」という言葉になった ....
仕事帰りの若いサラリーマンが 
夢庵でネクタイを緩めて 
しゃぶしゃぶ定食を食べていた 

思えば僕にもそんな 
寂しさにみたされた夜があった 

職場の老人ホームで 
お年寄りが喜ん ....
世界を征服した、孤独な高い塔の上から 
広い地上を見下ろすより 
たった数人で集う、ひとつの場所を 
素朴な{ルビ日向=ひなた}でみたしたい 

「私は正しい人である」 
と胸を張るより  ....
ありきたりの日常に頬杖をつく人が 
目玉を丸めて、飛びあがる 
手造りのびっくり箱を 
日々の暮らしに、仕掛けよう 
久しぶりに実家でゆっくり過ごし 
今は亡き祖母の和室に坐り 
夕暮れの{ルビ蜩=ひぐらし}の音を聴いている 

掛け軸には富山の姪っ子の 
書き初め「広いうみ」が 
悠々とクーラーの風に揺 ....
デイサービスに初出勤の日 
助手で乗った送迎車の窓外に 
前の職場の老人ホームを去る時 
手を握りあったお婆さんが散歩道で 
杖をつき、せっせと坂を上っていた 

( 僕も、新たな日々の坂 ....
炎天下を汗だくで歩いて 
デパートに入ったら 
ひんやりとして、幸せだった 

しばらく涼んでTシャツの腕が寒くなり 
外へ出たら 
暖かくって、幸せだった 

人の幸せなんぞというも ....
身ごもった妻が慌しく、出勤していったので 
休みで家に残った僕は 
巻いてる暇のなかった水天宮の腹帯を 
胎内と等身大の赤ちゃんの絵を包むように 
ぐるぐる巻いた 

紙と帯のすき間から時 ....
仕事帰りに寄るレストランで 
よく頼むキャベツの千切り 
日によっていつも 
ドレッシングのかけ具合が違う 

毎日同じように見えるとしても  
目の前にあるのは 
一生に一 ....
subaru★さんの服部 剛さんおすすめリスト(35)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
地球の夢__- 服部 剛自由詩8*13-8-1
喜びの日_- 服部 剛自由詩5*13-1-21
天使の声_- 服部 剛自由詩10*13-1-14
あたらしい歌_- 服部 剛自由詩7*13-1-3
夢の署名_- 服部 剛自由詩10*13-1-1
草の露- 服部 剛自由詩812-12-15
花の声- 服部 剛自由詩612-11-22
目について_- 服部 剛自由詩612-9-3
おじいさんの箒_- 服部 剛自由詩512-8-28
時の流れ- 服部 剛自由詩212-7-6
道_- 服部 剛自由詩6*12-6-21
まなざし_- 服部 剛自由詩512-4-19
空の銃声_- 服部 剛自由詩2*12-4-9
夢の電車_- 服部 剛自由詩312-3-28
虹のありか_- 服部 剛自由詩4*12-3-14
イーハトーヴの国_- 服部 剛自由詩412-3-6
雲間の窓_- 服部 剛自由詩212-1-19
夫婦の星_- 服部 剛自由詩3*12-1-13
人の器_- 服部 剛自由詩7+12-1-7
不思議な声ー法然と親鸞展にてー_- 服部 剛自由詩511-12-12
オルゴールの唄_- 服部 剛自由詩411-12-7
窓_- 服部 剛自由詩511-11-29
あの頃の青年_- 服部 剛自由詩1011-11-3
天の声_- 服部 剛自由詩511-9-15
箱を置く_- 服部 剛自由詩411-8-16
夕焼けの詩_- 服部 剛自由詩311-8-11
声援- 服部 剛自由詩411-8-4
幸福について_- 服部 剛自由詩411-7-18
安産祈願_- 服部 剛自由詩411-6-17
明日の音楽_- 服部 剛自由詩511-5-24

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