すべてのおすすめ
電車の
先頭車両の
運転席の
後ろに陣取って
景色の中に
割り込むように
のびていくレールを
眺めるのが好きだった
クハ モハ クモハ サハ
駅に
着くたびに
一息入 ....
地面に
言い聞かせるように
雨が降り続く
無色の
絶え間ない呪文が
街を塗り潰す
紫陽花は
すべてを受け止めようとして
雨雲を黙読し
雨傘は
すべてを受け流そうとし ....
明けない夜はないが
晴れない朝はある
止まない雨はないが
笑えない昼はある
暮れない一日はないが
つれない人はいる
そして夜
幾つもの夜を耐えて
人は強くなると言うが
ちびち ....
あまぐも
が
垂れ下がる昼下がり
うっかり爪を引っかけたら
鈍痛を引き寄せてしまいそうな
空
あまがさ
の
濡れた匂いは嫌い
美味しくない想い出と憂鬱が
しつこ ....
そこに
握り締めていたものが
怒りだったのか
憎しみだったのか
恐れだったのか
あるいは優しさだったのか
まるで思い出せない
たとえ
プライドの端を踏んづけられても
握らない ....
不器用なのだ
皆と一緒に
綺麗に泳げないから
海底の泥の中で
ぶつぶつと独り言を
溜め込んでいる
腹が減ると
ぬめったアンテナを
おずおずと立てて
雑魚をおびき寄せては
....
バスタブからあがった
ブロッコリーが塩と胡椒で
身支度を整えている頃
次から次へと切り出された
キュウリの楕円形の
車輪は朝日を照り返して
クロゼットからはがされた
レタスが ....
「お世辞」
お世辞を言うのは
下手ではない
お世辞を言われるのが
下手なのだ
流れ落ちるほど
ユルユルに頬を緩ませて
頭の上に八分音符を
乗せてりゃいいものを
野 ....
憧れ方が
悔しがり方が
思いつき方が
諦め方が
知りたがり方が
傷つき方が
話し方が
淋しがり方が
食いつき方が
愛し方が
懐かしがり方が
嘘のつき方が
標 ....
ひとつ先のコンビニまで
遠回りする
ガムの味がしなくなるまで
遠回りする
はにかむ放置自転車
居眠りするガードレール
さえずり合う人の影
能天気に踊る前髪
温んだ街の喧騒が ....
人のこころは
おそらく丸い
誰かに
支えられなければ
何処かに
転がっていってしまう
ころころこころ
人のこころは
おそらく丸い
どんなに
縛りつけたところで
....
街の
人の
屋根瓦を
頬っぺたを
ボンネットを
ランドセルを
街の
人の
やわらかいところを
かたいところを
親切なところを
依怙地なところを
つついて
....
どうして見えないのか!
早咲きの桜の下に
噴水の飛沫の先に
賑やかに降り積もっているのは
詩ではないのか?
どうして拾わないのか!
膨らみ続ける蕾の上で
ベンチで踊る ....
厚手のコートを脱いだら
するららと
時間が落ちて
あなたに一歩近づく
梢の蕾がふくらんだら
するりりと
時間が落ちて
あなたに半歩近づく
約束の日は近くて遠い
ほんのり焦 ....
昨夜の口喧嘩の
後始末もそこそこに
降り止まない雨の中へ
ぼんやり歩き出す
昨日より重い靴底
視界に覆い被さる雨傘
押し黙ったまま濡れる自転車
舗道にすがりつく安売りのチラシ
....
取るに足らない枯木に
カシミア混の古いコートを着せて
目抜き通りのほとりで
タクシーを拾おうとしていた
通り過ぎていくのは
回送の名札を得意気につけた
ハイブリッドな北風ばかり
....
と
ある日の深夜
僕をじっと見る
餌の器をじっと見る
再び僕をじっと見る
知らんぷりして
パソコンに向かっていると
いつの間にか後ろに回り込んで
爪が出ていない肉球で
僕 ....
萎み始めた意識の片隅に
かろうじて立て掛けてある
ギターの絃はたぶん錆びついて
降り積もる時間に埋れている
僕の指は踊れないから
意味を探してしまうから
残念ながらギター弾きにはなれな ....
最初に
魚影がよぎる
同時に
背骨が見つかることもあるが
大抵は時間がかかる
次に
尻尾が見つかるが
順番が逆の時もある
頭はどうでも良い
後で取って付ければ良いのだ ....
たとえば僕が
宇宙人にさらわれたとして
僕の不在に
気がつかない人は多いだろうが
僕の不在を
嘆く人は片手で充分数えられる
別に怨みごとを言うつもりはない
そんなものだといつも思 ....
勝者と敗者の間に
三角定規で線を引く
本物と偽物の間に
フリーハンドで線を引く
好きと嫌いの間に
眉間で線を引く
面白いと面白くないの間に
口角で線を引く
瞬きする ....
さしすせそ
が
歯に沁みる朝
凍ったままの思考を
ポケットに突っ込んで
背中を丸めて歩き出す
たちつてと
が
舌で弾けない昼
すっからかんの頭に
ラーメンをすすり込 ....
生真面目な絆の国の小市民の仮面
の下には
逃げ足だけが速いご立派な大人の仮面
の下には
空気より希薄な辛うじて世帯主の仮面
の下には
コップ1杯でクダを巻ける安 ....
<1>
これがなければ
生きることができなかった
これがなくても
たぶん死ねなかったけれど
これがあったほうが
人様に迷惑をかけない
はずだった
これがあったほうが ....
流れていく方向を見失って
濁り始めた水と空気
「仕方がない」のお題目の下で
済し崩しにされる許容限度
時間をかけて築き上げた壁を
やすやすとすり抜けて
目の前に現れる他人
....
熟成した
ありがとうの肩越しに
平坦な
おはようとおやすみの隙間から
垣間見える結び目
熟練した
ごめんなさいの背中に
平熱の
いってきますとただいまの文字間から
透 ....
詩は素
素敵と言わせたくて
素っ気ない素振りで
言葉をまさぐる
詩は素
素直じゃないから
素知らぬ素振りで
言葉をこねくる
詩は素
素顔に辿り着けない ....
マーマレードの空瓶に挿した
残り物のクレソンに
小さな蕾がついたと
わざわざ見せにくる君
これから何年経っても
君の世界に吹く風は
遊歩道のささやかな花を香らせ
名も知らぬ草を撫 ....
十年も使い込んだ御飯茶碗を
呆気なく割られてしまった翌日
雑貨屋の食器売場の谷底を
額に不機嫌なしわを寄せながら
這いずり回っていた
掌と肘と腕に違和感を伝えない
丸みと厚みと高さ ....
少し神経質で几帳面すぎる
右手
無骨だけど何故か憎めない
左手
ろくに箸も持てないくせにと
名前すら満足に書けないくせにと
いつも左手をなじってばかりの
右手
何を語る ....
1 2 3 4 5 6