朝に 山の頂上にいる山吉様に祈る
大きな杉の木 細かな葉の揺れ
ただ 裏山に向かい手をたたき
深呼吸を 幾度か繰り返す
すって はいて
大きく両手を動かし 空気を循環
鳥が羽ばたくよう ....
寛解、というのだろうか
表面が四方に向かってひかっているさまを見ろよ
アスファルトの単位、瀝青のかどを水滴が打って
二次元の広がりを持つ表面を
雑音には継ぎ目がない
日常に継ぎ目がないほどに ....
きみはぼくの知らないところで、ぼくの知らない人と知らないことをしているってことを、ぼくはきみから教えてもらった。スイッチはぼくが切ったはずなのに、きみは自由にオンオフできるようになったんだね。いつ ....
めっちゃ歩いていた。東京まで30㎞だった。帰船時刻までに帰れる可能性は皆無だった。自分が間違いなくあらゆる点で自分らしいということに得心がいっていた。野良猫の匂いのする文章が書けると思った。詩になると ....
二十代の後半に、私は転職した。
外資系損害保険会社のセールスマンから、旅行代理店の添乗員に鞍替えしたのである。しかしそれは、積極的な転職ではなかった。セールスの仕事で思うように客が取れず、コミッ ....
「やっ、何でアボカドッ!」
どんぶらこどんぶらこ、
上流から流れてきたアボカドに、
おばあさんは洗濯中のおじいさんの褌を落として、思わず叫びました。大きな、大きなアボカドが流れて来たのです。 ....
私は代々木公園の特設ライブ会場にいた
しかし 友達に呼ばれた 私は
すでに興味を無くしていた 似ているものに
何も興味を覚えなくなっていた
だけど 似ていないものとは
一体なんだ ....
夏
と言ったら
海
ビーチパラソルは無く
海の家も無く
砂だけがある浜を
海水パンツ一丁で
海水に突入していく
はずはなかった
私の出身地は山間で
山から切りだされた木を
....
揺れる車中で、一瞬だけ眠ったような気がした。酒も女もしばらくこらえて、不眠症気味だ。今日の仕事を終えたら、解禁といきたいところだが・・。
定員のセダンの不自由さから逃げたい気持ちもあった。大の男が、 ....
SOSの言葉はもはや、何の意味もなさない。誰も最初から、君を助けてはくれないのだ。僕は何かを奪われそうになったら、その銃口を向け、引鉄をひくしかないのだろう。
僕は何度もSOSを発信した。
そ ....
一
罪深い朝よ
おまえはそんなにはりきってどこへ行くというのか
時空を超えて宇宙の滝まで行くというのか
俺を待ってはくれないだろうが
朝よ、おまえは嫌いじゃない
おまえが夜に吐き散らか ....
泣くのは赤子の仕事です
誰が想像できましょう
それだけで すわ うるさいと
殺されたなんていうことが
隣人の奏でるピアノの音に
苛立ちを感じたら
何かのサインだと思 ....
アインは白い階段を上り続けていました。薄い灰色をした大きな鯨の死骸が、胸鰭を反らせながら身に纏った細かな塵を月明かりにキラキラとさせ、ゆっくりと水底に沈むように風も立てず落ちてゆきました。大きな優しい ....
何もかも 夢の中のような出来事でした
おもちゃの兵隊さん
群がるチャッキー
砂のお城
悪夢もあれば淫夢もありましょう
幸せな陽だまりのような夢も
私はだから
....
咲き誇るということばにふさわしく、早すぎる夏日を仰いで薔薇が咲いている。
あちらにもこちらにもまっ赤だとかまっ白の花びらをひらいて、でもわたしの好きなのは白から甘いオレンジ色へ溶けていくような色 ....
妻はゆっくり狂い始めた。階下から甲高い声で私を呼ぶのだ。
「アナタァー」
また始まる、始まってしまった。
開け放たれた窓から、花冷えの寒気がなだれ込み、投げ出された掃除機の横で、妻は床の上 ....
もしもし
だれですか
ぼくは
だれですか
もしもし
あなたはべつにだれでもいいんですが
もしもし
ぼくは
だれですか
もしもし
もしもし
もしも
ぼくがうまれてなかったら
....
夜になったら娘はわたしの手をひいて、底へつれていきます。わたしたちはくたくたの毛布をひいて横になり、しばらく転がって遊びます。
彼女のちいさくて厚ぼったい手のひらがじょじょにあつくなっていき、そ ....
花びらを覚えるよりも続くのは そこに木がある、という認識
あの散って、地に伏している花びらは 私なのです ご存知ですか
風情とは縁遠いほど呆気ない 軽はずみだと呟く思い
花びらを拾い集めて再 ....
空が澄み渡っている
田園の上を海猫が行く
水に反射する陽射しの破片
風のそよぎ
紫色の旗が棚引いている
少年が根元の竿を掴んで運ぶ
「重いでしょう?」
「平気さ」
旗には
“我々 ....
カンパネッラ、君は今頃、
あの青白く光る星の裏側を、
旅している頃でしょうか
そこから見ればこの星で、
炭酸ガスの割合や、窒素や燐の配合や
地割れや雪崩や日照りに寒さ、おお ....
雨上がり
子どもたちが庭に出る
水溜まりから
ヒカリガソラへ
地面を踏む
薄くて固い地面の底に
ヒカリノトイキ
広がる濡れた
白鷺が半弓のように佇み
カズエちゃん
....
柔らかな陽射しなのだと気付くのは 木の色合いが桃色終わり
緑へと移り変わった頃のこと 眩しさに目を細めていても
自ずから綻ぶような微熱持ち でも今迄は、それを知らずに
新しく心の内に現れたソ ....
柳に風が
いつまでもやまないので
僕はここから離れられずに
時間だけが コチコチ
鼓動だけが ドキドキ
規則正しいリズムを鳴らして
柳に風が
ただ吹いているのを見ているだけで
....
どうせ天使にゃなれねぇ
かといって羊のように
柵の中でおとなしく暮らせもしねぇ
都会のマンホールの蓋をあける
そっとつま先を伸ばす
南米の空の上の
銀河の星の一つに
ビーチサンダ ....
【龍人】
滑らかに曲がって
緩やかに曲がって
何時までも曲がって
何処までも曲がって
掌の記憶の球体
見覚えのある顔
球体を眺める
目の奥が笑う
掌の人の形
見覚えのある顔 ....
全く故郷ではない場所で
帰って来たと思った
歯医者近くの薬局だった。
流動体のオブラートをぼおっと見ていたサラリーマンが、自動ドアと私に気が付いた。
上目づかい。流れる血が死んでいて。そこをま ....
ズルズルとずれる
もう元の状態なんて
わかりはしない
もうそれは失われてしまった
狂った猫が
心臓を食べる
顔を真っ赤にしながら
丹念に食べる
食べるのは心臓だけだ
溢れ出る血液 ....
平らかな純粋がちいさく傷ついて
音をたてたのだ
まよなかはふたりに気づくと
眼をさまし
海の風をとめた
息をひそめ
青ざめた街のかどを見つめていた
....
「ここから飛び降りてください」
と立て札にあったので
飛び降りたら
死んだ
見るものもずいぶん見てしまった
夜の枕の中で
そうは思っていても
赤い彼岸花がぐぐっと首を伸ばし ....
1 2 3 4 5