ないしょのことは
ないしょにするから
それまではあそぼうね
夢でも会えるし
いますぐにあいに行くこともできるよ
のぞめば
のぞめば
いつでも
現実は直角に交わるし ....
恐ろしい文字が天井にへばりついている
あなたを
埋めてしまわなくては
なりません、突然の雨に
暴風に、雷に
あなたが苛まれないために
土深く埋めてしまわなくてはなりません
スコップに土をすくい、 ....
じぶんの柔らかなところや
じぶんの弱いところを知ってしまったひとを
それでもいいのだと教えてくれたひとを
うしなってしまったら
僕はどんなふうになってゆくのだろう
七年まえから
六年くら ....
{引用=すきなものがたくさんあった
ある、女性歌手はそのふうけいのさきに
ひとりきりのみらいをみた}
*
すきな人がたくさんいても
私のことをよくしる人はひとり ....
光の壁の向こうに手を伸ばすと、音の河が流れている。手をつけると波紋が広がりあるいは渦が巻く。私が床に寝そべってこれを書いているときにそのことばは私と光の壁の向こうで音になっていて、その壁のさきで、園の ....
こつはすぐそこ
遠くなく
朝、もやは流れて
火だねは赤く
赤く、またすぐ
はいに埋もれる
地下ふかく
揺りかごひとつ
あかんぼねむる
からすがかあと
陽へとはばたくころ
ため ....
ひだまりを一人占めしている僕が、また、おかしな事を言ったと、
お姉さんは、にっこり笑い、手元の林檎を持ち上げた。赤々と、滑らかそうな、肌の林檎を、包みきれない、女の手、はだの色
どこか他所では花見 ....
おとこはよるに
ねむれぬよるに
ひとつ便器を
みがくのです
まあるいおんなを抱くように
できそこないの陶器を愛でるように
裸電球のよる
おとこは奉仕するのです
そうして ....
空となにかがうずまっている
そうだこれをこいとよぼう
仏間に坐って
うなだれ
首を
さしだしていたことがある
白刃の前に
ながれる水音に
耳を澄ませていたことがある
客観的なまでに静まった ....
小さな炎が鳥になり
葉の下の土を照らしている
傾く森
灰を数える
瞳に足りずに 瞳を足し
あふれるものは 金の浜になる
打ち寄せるひとつ
手のひらになる
....
わたしのことばが
唯一のものではないと知っている
幾千万の文字列を従えて歴史は動いている
止めどない比喩の群れを追って
捕まえた星のひかり
何億光年も前に息絶えたいのちの尊さを
思い出して ....
朝の訪れるたび
切り離されたからだを思う
昨日との交信が途絶えて
寄る辺ない
なまぬるい風に
輪郭を確かめる
季節がしみこんでくるのと
季節に染み出していくのが似ている ....
ピチカカという鳥がいます。それはとてもめずらしい鳥です。満月の光に当てると羽が青く光るのです。ピチカカ鳥は新月の夜に生まれます。そして満月の光に当たると青く光り輝き、月が沈む頃に卵を産み落として死んで ....
ふりむけば
母がいる
ふりむかなくても
父がいる
はずだった
およぎ続けなければ
死んでしまう
魚のように
生きている
けれどもぼくは
人間だから
時々
息 ....
君のまじめさを
遠くから見て
ぼくは何度も
水の下書きをした
雨の展覧会
氷じゃない光
具現化できない温度
ひとを生むために
まっしろにしていたひとの
あたたかさのようなもの
....
月を投げる所作で骨を嬲る
あなたよ
速度を落とし日に暮れ呼ばれ遊ぶあなたよ
春が待つようにして 白く落ちた嘆きがあるのだ
知らずして手をやる 水に揺れたのは破片であったか
....
ゆれる
歩道橋で
ぼくのからだは
空を見あげた
光の
ふやけたところから
いまにも
だれかが降りてきそうだよ
ち ....
光は屈折し
やがてその先端は
壁の末期へと続いていく
何かあってはいけないので
あなたは洗面所で
数を数えている
川幅の狭い橋を渡ってきた、と
わたしは告げ
手を握 ....
喪失!喪失!喪失!喪失!
――水であるところの僕たちは
滞ることを許されない――
置き忘れた瞬間にはなくなっているのだ
....