ゆうひがうみに
しずんでいく
ちいさな
しょうてんがいの
あかりがともる
ろうじんのために
ろうじんがはたらく
まちがここにある
ときどき
だがしをかいに
....
台風がそれて良かったと思うものの
荒れ狂う里川の変わりようを
術もなく見つめる老人の眼差しに寄り添うことは難しい
人様の身の上にふりかかった災禍などと
素知らぬ顔して晴れ上がった台風一過の ....
皮膜だけで感知するヴァイブレィション、崩落する外壁の中に
差出人すらすでに忘れた封をされた手紙、ごらんよ
それはもう俺たちの知っている言葉とは変わってしまった
ただ真っ当な憧 ....
ネクストバッターズサークルの新井が
ホームランの夢を見ているとき
マウンドの岩瀬は
スライダーの握りでサインを待っている
バッターボックスのマートンが
ほほえみながら地面をならすとき
ダグ ....
ひとの一生ははかなくて
ふいにやぶけてしまう
ぴんとはった
うすがみのように
3月11日
がんを患うあなたの目の前で
おそらく数千の一生が
一瞬にしてやぶけてしまった
....
風景は記憶を宿している
だから俺は
ゆるゆる
その風景に
流れ込む
いつも路地裏
猫がいて
丸くなって目を細くして寝てる
気持ち良さそうに
俺は雪駄で歩いていくだろう
そう ....
あっ
風の軋む音がします
※
母となれなかった女の子供が母となる
子を宿せば母になれる
そんな容易いものではなくて
幼子の抱く古びた操り人形のように
いつのまに ....
本当の名前なんて
一度も書いてあったことがない名刺を
感じ良く差し出す空っぽな指先
本当に行きたい場所へ
一度も連れていってくれたことがない
少しくたびれた空っぽな向う脛
どん ....
浅皿を覆うよどんだ水面は
つい今しがたまで命があったのです
それは固形物に味を与えていました
役割を終えて今にも
捨てられようとしているのです
いつ命が失われたのでしょう
それは最後の ....
新しい職場の老人ホームで
初めて司会のマイクを持った日
お年寄りの皆さんに
塗り絵用の色鉛筆を渡した
十二色の鉛筆の先っぽは
どれもきれいに尖っていたので
今日は鉛筆削りの ....
かいだん話はせなかから襲ってくるから
できるだけ大きなあしおとで踏み場をつくり
歩いていることの認識を保たせると
噂話
海から川にかえるころには
立派な尾ひれが生えて
人面魚だ、人面魚だ、 ....
別れる時つらいので
壊しときました
亡くなったとき
悲しいので
壊しときました
赤いレンガの通学路
壊しときました
がっかりする冷やし中華
やめときました
離れる時悲しい ....
あなたは
決してわたしをゆるさなかった
はじまりの
隠しあう接触のぬくもり
黒くながれおちる髪を
手櫛でやさしく梳きながら
洩れる水を袖口に運ぶ
清潔な距離がくれた
まどろみの ....
火力発電所、はんたーい!
ということは
ピントがズレている
でも、
どのピントから
ずれているんだろう
....
誰かに手紙を差し出したい
秘めた恋心を
白い便箋の罫線の間にそっと忍ばせて
誰かに手紙を差し出したい
今朝咲いた朝顔の欠伸が
黒いインクの文字から聴こえてくるように
誰かに手紙を差 ....
手鏡に映るわたしは、
媚びた笑顔を貼り付けて、
片想いの彼に振り向いてもらうための練習をしていた
プリクラに写るわたしは
美白と睫を盛る効果で
タレントみたいに可愛くなって、笑っていた
....
あさおきて、かおをあらって、ごはんをたべて、それからがっこうへいきました……
そこでもう、ただ鉛筆を舐めている。その先へは進めない。
楽しかったことや、辛かったことも書いたらいい、と先生。
やす ....
歯は歯へとたどりつかぬまま歯となりて響かぬ箱を咬みつづけている
卵から卵のかたち抜け出して誰も居ぬ街誰も居ぬ日々
数列の文字の並びに指を置き現われる色あ ....
犬猫とは違うことぐらい
判っているよ
※
でもね
薄汚れた服でサンダル引き摺ってた女の子
大切にしてもらっているのかな
パートのお母さんと
いつも家でタバコ吸っている男の ....
あーあ
夏が来た
やばい
俺が性犯罪者に最も近づく季節
ってかさ
なによ
おねーちゃんたちの
あの格好
ミニスカート
ホットパンツ
キャミソール
下手すると下着見せてる
君 ....
<種類別> アイスクリーム(自称)
<体脂肪> 22.0 %以上
<内臓脂肪> そこそこ
<原材料名>
怠惰、臆病、猫背、妄想、未練
安定剤(貧乏ゆすり)、乳化剤(溜息)
....
道を歩くと つい最近まで、卯の花や すいかづらの匂いがしていたけれど、季節は進み 香の蒸散するスピードも早くなり、このごろでは すっかり緑の陰ばかり探してしまいます。神社の石段下っていると 眼下に鳥居 ....
あ、義父さん
ハンカチを一枚お借りします
+ + +
初めて会うひとはわたしのすべてを見透かしたあとに
無学なバイトの若造が生活(いちにんまえ)を語るのかと息巻きながらも
そ ....
{画像=110709105543.jpg}
金魚鉢のそれのように、
一つの世界がそこで完結するとすると、
地球が再現され、
宇宙が再現され、
ついに発生する突然変異に、
ビオトープ ....
暑中お見舞い申し上げます。 たま
地下鉄
地下鉄はまっすぐ走るものだと思っていた
車体が傾いてとなりの女の顔が急に近づいた
ね、 複雑でしょ・・
耳元の吐息はいつも体 ....
いびきを避けて 影を盗む
彼の妹であるところの犬を食む
偏平足にて 浴びる ぶどう酒
裏切りに咲く獣の気配に
やさしい呼び名を 与えよう
月は 出ていない
今夜の君は 美し ....
べつだん躊躇ったりすることもなく
無造作に引きちぎった胸元のボタンを手渡してくれた
「ありがとう」
「礼なんていらないよ
こうするものらしいしさ」
恥じらいをみせれくれれば可愛い ....
夜の空にかかる大きな河を
私はまだ肉眼で見たことが
ないのです
日常生活の光は
私に空を見ることなど
許してはくれない
私が疲れて眠っている間に
胸の奥から生まれてきた
誰にも ....
大きな欅の木のしたで
乾いた蚯蚓が八の字を描いて死んでいる
無から生まれた宇宙の話しを聴きながら
きみはもう死んでしまったから
こんな話しはおもしろくないかもしれないけど
きみに残さ ....
1、
時計が居た。
車椅子の少女の部屋、机の上に小さな
目覚ましアラーム機能付きの。シンプルな。
セロハンテープは寝ていた。
事務員の引き出しの中で、無雑作に横になり
不必要な書類 ....
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