夜を走る電車
十五両編成の最後尾
ゆっくり居眠りしようと
乗り込んで席を確保した
はずだったのに
次の駅から
スノーボードと思しき
荷物を抱えて乗り込んできた
二十代前半の女性が
暫 ....
瞳の先の 仄かな揺らぎを
感知するのが 私の習性
痺れ続ける毎日が 毒という毒を盛り
空白が 膨らんでいくから
気怠さから 抜けられなく
見知らぬ人にまで 助けを求めたなら
それが ....
土砂降りの校庭から
駆けてきたあの人の
透けた鎖骨に
胸の筋肉に
魅せられた
あの夏の日
頬を染める
息を止める
激しく脈打つ
濡れたカラダを巡る
あの熱の正体に
気がつ ....
空は
あくまでも
空であり
雲は
いつものように
雲であり
雨は
定義のように
ふり
木は
そのとおりに
そこに
立ち
風は
かぜのままに
ふく
ダニエルは犬だ。ゴミ箱の前で、線路の影で、
夜を待っている犬だ。月が湿っている。赤くなる
空の前で、ゴミ箱がぼやけている。陽炎の
中のダニエル。ゴミ箱は青。霧雨も
降らないのに、電車は光をつけ ....
鶏がらじゃないよ
うさがら だよ
煮るのは禁物
跳ねるから
なきがらじゃないよ
うさがら だよ
赤い目だけど
元から
ぬけがらじゃないよ
うさがら だよ
からか ....
夕暮れ時 太陽の沈む音
二度と戻れぬ今日の日に「またね」と声をかける子ら
薄明かり 絵画のような雲の色
ひとりふたりと木馬に乗って帰っていく
どうしてこうも世界は緩やかに
まるで明日 ....
さようならのかわりに
しあわせのかずを
かぞえてくださったなら
さいわいです
きおくのぺーじに
しおりていどに
はさんでくださればけっこうです
いつかなくしてしまっても
それは ....
薄く目を開き
ぼんやりと霞む
蛍光灯に
壁や
柱は
照らされて
土壁に
生まれた
生きた
死んだ生物の
擂りつぶれた亡骸が
ジッ と
燐光を放っては
塗り固められているの ....
スイッチを切るためのスイッチは
ヒトをあざわらって入れられたのに
気取って薬指を伸ばすと
完全試合を放棄した口が
ハイヒールを履いて
「わたしは左が凹んでいるほうが好きなの」
なんてほ ....
キリンは新婚カップルの取材を担当した
ツルとカメは生き証人として
動物園の歴史を書いた
シロクマは環境問題に
ゾウは動物虐待の実態に
鋭い論調でメスを入れた
羊たちは眠れない子供のために
....
むかし、
いやなことがあったりすると
よく近所の公園の砂場に来た
いつも靴をぬいで
はだしになって
そっと 冷たい粒にふれた
ひんやりとして
きもちよくて
なんだか心が落ち ....
何もかもがいやになって
下を向いて歩くのだ
メールを
打つふりなんかして
詩を書いたりしちゃうのだ
幸せな人は詩を書かない
というのは本当です
だけど
私の不幸など
ありふれ ....
ハロー
いま、ぼくのそばにいる、コトバ、は
みどりいろをしています。
ハロー
もう、ハル、なんですから
きっとすべてがうまくいきます。
ぼくの、てのひらで、
コトバ、は、硝煙、の匂いに
....
かなしみに しずんだ
せいかつ なので
どうしても
いのちが ひとつ
たりなく おもえるので
こねこを もらってきました
かなしみにも
どこかに
あたたかさは あって
あたたかな ....
星空は
誰かを亡くした後に見ると
もうせつなくて
全身の力を奪うけれど
残された人間はそのまま
生きるしかないのだから
永い年月をかけてでも
また
星空を見上げる勇気を
わたした ....
小さな窓に流れ来る
微かな風の匂う秋
去りゆく時の寂しさか
訪れ{ルビ来=きた}るうれしさか
僅かばかりの部屋の中
大きな空に染まりゆく
彩る色の魅せる秋
どこから{ルビ来=きた}る ....
青春てつまり絶望だよね
よく乗り越えてきたと思う
みんなニーチェやゴッホになる
そんな苦しみが凡人になんになる
五合目あたりで
ちょっと手首を切ってみて
血の赤さで目が覚める
おかあ ....
ポストがあんまり赤く誘うから
こっそり仕組んだ悪戯めかして
宛名にきみの名前を書いた
雪があんまりひっきりなしに
きみの傍に寄り添うから
水晶の珠を割って
ちいさな虹で
憂欝の左 ....
H
\
ながれるべきものたち ながれ
そよぐべきものたち そよぎ
ひかるべきものたち ひかり
うたうべきものたち うたい
H
\
....
てれびをみるきょうだいのよこに
みたらしだんごが
いっぽんあって
いっぽんには
さんこささっていて
きょうだいはひとつずつたべて
のこりのいっこをふたりでうかがって ....
夏の日差しだ
これは夏の日差しだ
覚えている よく覚えている
夏の風だ
これは夏の風だ
覚えている よく覚えている
カエルの声と 水田の青々さと
僕の心臓は ....
なにかがたりないよね
って
みんないう
なにが
ってきいても
こたえてくれない
たしかに
それはめいかくに
おもいえがかれているはずなのに
めをそらして
うまくいえないけど
....
なすときゅうりの馬なんて
のれないよねえ とつぶやいたとき
お兄ちゃんは
ひらたくて少し冷たい手のひらで
あたしの手を
つかんでいた
じいん と鳴る
すずしいかぜに
....
生まれた日のことを覚えている
ちらちらと雪が降って
がやがやと人の声が聞こえた
そして何度か暗くなった
明かりは穏やかに灯った
鳥の声が聞こえた
硬貨の匂いがした
笑っていた
抱きしめ ....
「私のひと押し詩人」というテーマでの依頼。
ひと押しというか、好きな詩人は、
1.有名で今さら紹介する必要もない人
2.ひっそりと書いていて紹介なんかされたくない人
だいたいこ ....
花に目をふせ
空を喰み
目の内の手に
空を聴く
花に 花に かたむく火
花に 花に したたる火
からだのどこかに揺れ育つ
ひとつの荊に耳すますとき
水の気配 ....
テスト用紙の四角い枠に答えを書こうとすると
鉛筆の芯がぼきっと折れた
クラスメイトの鉛筆が
かりかり音をたてて問題をといていた
ふで箱をあけても
先のとがった鉛筆はもう一本ものこっていな ....
風の暖かくなった
空から鳥が落ちてきた
インフィオラータを知っているか
無数の花びらで地上に大きな絵を描くのだ
極楽鳥や孔雀は空から落ちてこない
カラスとハトの
いつのまにか 大雨だ
....
重たい言葉を呟きながら
折った鶴はくずれた格好でいました
尾なのか頭なのかわからない二本のツノは
怒っていました
指がふるえて
上手に折れないのですから仕方ありません
せめて寂しくない ....
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