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机上の聖書の上に置かれた
ひとりの骸骨が
遥かな明日の空を視て、笑ってる。
骸骨は、恐いものと思っていたが
全てがそうではないらしい
どんな人もいつかきっと骨になり
顔 ....
ふと手にした一枚の紙切れに
優れた画家のデッサンが浮かぶように
鏡は少女の清らかな
一瞬の微笑を映すだろう
ほのかな{ルビ灯=ともしび}のひかりの中に
明け方の少女がひとり
....
夫婦みたいに並んでいる
ふたつの小島の周囲には
ひかりの宝石を無数に散りばめた
松島の海が穏やかに
さらさら滑ってゆくのです
先ほど赤い福浦橋の上から
遠い空の下にいる嫁さ ....
昔々、虔十さんという風変わりな男は
ぶなの木の葉がちらちら揺れて煌くほどに
もう嬉しくてたまらなくなり
一枚々々の葉のひかりが
自らの体内に踊っているかのように
いつのまに、ぶ ....
つまらぬことで口げんかをして
下の階にいた嫁さん・子供を呼んできて
布団の上に座らせて
ごめん、ごめん、と育児にこった肩をゆっくり揉んだ
布団の上にひとりあぐらをかいて腕を組む、午 ....
町の喧騒の外れで
川のほとりに佇み
一台の車が、風を切って
傍らの道を通り過ぎた
ふと、耳にした水の音に
下の方、下の方へと
へりくだってゆく
水のすがたを思う
....
今迄きらいと思った人と
互いの気持をぶつけた後で
くるり、と心が回転して
鳥の場所から眺めれば
思いもよらぬ親しみが
じゅわっと胸に湧いてくる
その時ようやく私は
私 ....
僕の前に、一つの丸い窓がある。
春の嵐にずぶ濡れて
身を{ルビ撓=しな}らせながら、葉をきらめかせ
必死の思いで立っている
ひとりの木
それは今夜も
世界の何処かで{ル ....
鞄から引っ張り出したノートの角が
勢いあまって目に入り
白目に赤い線がひとすじ入った
思わず両手で片目を抑え
あいたたたたた・・・とうずくまり
まったくついてねぇや、と目医者に ....
そろそろ何でもない日常の革命を起こそうか
お爺ちゃんやお婆ちゃん達の前で
昨日都内の喫茶店で、偶然
美川憲一さんに遭遇したという
一期一会の詩を、朗読してみようか
職場の ....
旅の時間に身を置くと
宿で食べる朝食の
目玉焼きの黄味や
納豆の一粒までも
電球の日に照らされて
嬉しそうに皿に盛られているのです
小皿には仲良く並んだらっきょうの間に
も ....
年度末の会議の後
僕は所長に
新たな年の契約書を、手渡して
旅の報告をした
「 石巻の日和山から見渡す一面の荒地に
ひとり・・・ふたり・・・と
笑顔の花を咲かせたい ....
ビールを飲んだ僕のからだは
北国の暖炉みたいにほてっとあっだがぐなってくる。
心臓がどくりどくりと高鳴ってくる。
このボールペンを持つ手も、震えてくる。
しゃんそんっていいなぁ・・ ....
今、神保町の珈琲店・さぼうるで
赤煉瓦の壁の地下にある席で
珈琲をすする僕の目線の先の1階では
美川憲一・はるな愛・ノブシコブシの吉村さんが
おいしいナポリタンをフォークで
すくっ ....
震災から1年の3・11に復興を願い
仙台で行われた朗読会の前
主宰者の南ダイケンさんは
「これ、心ばかりですが・・・」と言い
直筆で「謝礼」と書いた
白い封筒を、僕に手渡した。
....
新しい、新しい、と未来ばかりに手を伸ばし
追えば追うほど、幸いの虹は逃げてゆく
{ルビ古=いにしえ}の魂の形象を宿すものこそ
今・ここに新しい
古の魂をそっと胸に納め
自ら ....
12色のビー玉が入った瓶を
逆さに持って
机にこん、と落ちた一つは金色の
きらり、と光る玉でした
もし、空の上に
あなたを主役にした作家がいるなら
筋書きの無い物語を
....
私はずっと気づかなかった
霧の向こうのお日様が
銀の色にかがやいて
あなたの瞳に宿っているのを
私は今、遠い異国の空の下
遥か昔に栄えた、廃墟の前に立っている
まっ青な空に輝く太陽に照らされた
誰ひとりいない古代の都市で
幾百年の時を越えて吹く風に
角の溶けた無数の柱の間 ....
生まれ育った故郷の林が大好きな
賢治の妹トシは額に汗を滴らせ
まぶたの裏に
この世という牧場の出口で
風に開いてゆく、木の扉を視ていた
息を切らして、家に戻った賢治が
震え ....
結婚前の嫁さんを僕は(きれいだなぁ)
と、うっとり見ていた
結婚後にいつも一緒の嫁さんは、時折
いもに見えることがある
高熱にうなされ
布団からふらふら身を起こした僕に
....
「位置について、用意」
乾いた鉄砲が空に鳴ったら
時を忘れて
自らの存在が溶け去る迄
只、走り続けよ
脳内から分泌される
あどれなりんの快楽が
体内を巡り
魂の ....
テレビの中のマジシャンが
逆さに置いたシルクハットから
花吹雪が舞い上がった
一日に一つ位
そんな手品があってもいい
さぁ、この詩の中の
机に置いたシルクハットを
....
半身麻痺のお婆さんの
両手を引いて後ろ向きで歩く
介護青年だった、10年前の僕
いつも面会中にさりげなくにこやかに
見守っていた初老の娘さんと
古都鎌倉の喫茶「扉」で
偶然顔 ....
目が覚めた、部屋の窓の風景は
雨にすっかり洗われた
まあたらしい世界
一枚の葉は透けた滴をしたたらせ
こちらに合図を送っている
憂鬱な気分に頬杖ついて
眠っている間に ....
「悩み」という荷物を
背負えば
世界にひとりであるように
ずしりと肩に、喰い込む。
高層ビルの39階から
ビルの足元を見下ろせば
無数の蟻の人々が
うようよしている。
....
ふと立ち止まり仰いだ夜空に
一瞬、星は流れ
願いごとを言う間もなく
黒い幕の裏側へ
しゅぅ・・・と消えた
もし、あの一瞬の光が
無限の宇宙に含まれた
一人ひとりの一生なら ....
ふいに巻き起こる北風に
働くおばさんの手にした
書類は飛ばされ
ガードレールの下から
川へと落ちそうなその時
ほっ!と短い足が出て
サラリーマンの
きらりと光る革靴から ....
飲み屋の座敷で
一人酒の盃を傾け
いつしかこの頬は赤らみ
脳みそは何処までも歪み
おぼろなる意識の内で
{ルビ転寝=うたたね}にかくんっと首の抜ける時
夢の夜空にたった一つ ....
友と杯を交し
日々の想いを
語らう夜に
酔いどれて独り
家路を辿る
夜の道すがら
何ヶ月も同じ場所に坐り
路傍の石と化した
家無き人の
汚 ....
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