すべてのおすすめ
海の近くに本が落ちている
頁をめくると
漁師町の屋根はどこまでも続き
伝えたいことは
すべて終わっている
誰に叱られることもなく
海鳥が飛び方を記憶している
 
 
アパートに似た生き物が
背中を掻いている
古い窓を開ければ子供の声が聞こえ
秋の風も入るようになった

父が死に
母が死に
君は僕と同じ籍にいたくないと言った
もう昔みたい ....
 
 
夜、本から紙魚が出てきて
僕を食べる
文字じゃない、と言うけれど
紙魚はお構いなしに
僕の身体を食べる
だから負けずに
僕も紙魚を食べる
本当は枝豆の方が好きなのに
食べ続 ....
牛丼屋でウシが食事をしていた
まさか共食いか、
と思ってよく見ると
豚丼だった
食べ終えたウシは
お父さんごめんね、と言って
手を合わせ
泣き始めた
他のお客さんは皆
見て見ぬふ ....
床屋で髪を切ってもらっている間に
数十年が過ぎた
僕はすっかり骨だけになり
頭髪もすべてなくなった
目も耳もないので
確認のしようもないけれど
テレビでは昔聞いたことのある
ニュ ....
 
 
テーブルの下に
豆腐が落ちていた 
原形がわからないくらいに 
ぐちゃぐちゃに崩れていた 
世を儚んで
飛び降りたのだ
窓を開ける
初夏の風が吹いて
部屋の中を涼しくする
 ....
喉が渇いたので
醤油を飲んでいたら
目が痛くなった
目薬と間違えて
醤油を差していた
まるで
お寿司のように

空っぽになった
醤油を探して
東京を歩く
薬屋はたくさんあるのに
 ....
 
 
明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた

すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った

 ....
 
 
野原に自転車が倒れていた
車輪が外れていたので
持っていたアイロンで
直すことにした
うまく直せないでいると
両親と兄がやってきた
みんなアイロンを持っていた
あれこれしてい ....
 
 
身体と言葉の境界に沿って
路面電車が夜を走る
ミルクをつなぐ、世界はまだ
つぶやきをやめない

みんな季節
みんな瞬間
みんな波、その動き
みんないつか
割れていきたい
 ....
 
 
頭からキノコが生えている
抜いて良いものかどうか
水や肥料をやるべきかどうか
などと迷っているうちに
毎日少しずつ
キノコは大きくなっていく
キノコ生えてるよ
と心配していた ....
 

電話が鳴る
慌てて冷蔵庫の扉を開ける
受話器が耳に冷たい

+

電話が鳴る
慌てて冷蔵庫の扉を開ける
外はすっかり夏のようだ

+

電話が鳴る
慌てて電話機と冷 ....
 
 
レジの長い列に並ぶ
列は進んでいるのに
なかなか順番は回ってこない
季節はいつしかすっかり秋となり
半袖のTシャツでは
肌寒く感じるようになった
小腹も空いた
トイレにも行き ....
 
 
壊れたヤドカリが階段を上る
その先には二階があるだけなのに
暑いと感じる人は、暑い、と言う
今日という退屈な一日
下駄屋のおじいさんが亡くなった
母を斎場まで車で送った
一時間 ....
 
 
植物群が眠っている
僕の知らない言葉の中で

息を吐き出すように
近所の商店街は
ゆっくりと潰れていった

帰りたい、と父が言う
他にどこに帰るの、と母が言う
帰りたい、 ....
庭に咲く向日葵の陰で
雑種の犬が寝ている

鼻先に吹いた風は部屋に入り
指先や広げた時刻表の表面を涼しくして
再び外へと出ていく

真昼の駅、三等車に乗って
てんとうむしは出征 ....
自動販売機があった
少年は喉が渇いていた
でたらめにボタンを押してみた
何も出てこなかった
今日は車に当たる日だった
先日はかすり傷で済んだ
父親はそのことが
気に入らないようだった
 ....
 
 
街はコップの中にあった
人々は皆
銀色の言葉で話をしていた
消しゴムの形をした像が
中央広場に置かれていた
教訓めいたことが刻まれていた
僕は草色の列車に乗った
寒天の匂いが ....
サラは低所得者用の公営住宅に住んでいる
ある日、軒下にコガタスズメバチの巣ができていた
トックリ状の形をしていて
入口が長く下に向かって伸びている
サラには就学前の二人の娘がいた
年 ....
 
 
とても柔らかな
パンを焼いていると
わたしの指は
マヨネーズ
できることと
できないことの
 
お風呂場に散らばった
キュウリの抜け殻を
お父さんはまだ
片付けてくれな ....
 
 
カバンを抱えて人を待っている
いつしかカバンから手足が生えてくる
カバンに抱えられる
私の手足は引っ込む
カバンが私のファスナーを開ける
あんなにあった体の中身がなくなっている
 ....
粒の中に
粒、ずっと粒
惑星のように
ささやくと
平たくなる
蟹になる
蟹はハサミを見ている
ハサミの向こうに海
海からの風
でもハサミだけ見ている
ハサミに刻まれた
 ....
 
 
ひとつ、またひとつ
豆腐が落ちていく
月のテーブルから


+


引継書は、深夜
透明に
積まれて


+


陽だまりに
トマトの痕跡
使わないのに ....
 
 
消しゴムを食べていると
母が気を利かせて
夏みかんのジャムを持ってきてくれた

消しゴムなど食べられるはずもないから
いらない、と断ると
代わりにコーヒーを入れてくれた

 ....
 
 
お店屋さんで息をした
お店屋さんだから
みんなしていた

様々な形が売っていた
気に入った色があったので
近くにいた店員の女の人に
色だけ買えるか聞いた
形もついてきます
 ....
 
  
 
これから結婚について書きます。
その前に男性側の視点であることを前提としなければなりません。
何故なら私が男だからです。
女性側からの視点で書くことも不可能ではありません。
 ....
 
歯磨きが終わり
コップを手に取ると
何かのゼリーのような感触がして
指が中へと沈んでいく
そして右手は
コップそのものになってしまう
これから歯ブラシは
左手で持たなければいけない ....
 
 
僕にヒゲが生えていた頃
あなたは優しくヒゲを撫でてくれた。
今ではすっかりヒゲは枯れ
ビルなどの建築物が建ち
唇の近くまで人も歩くようになったけれど。
あなたの手のことはあまり思 ....
 
 
無精卵の内側から
殻を破ろうとする
判読不能な文字たち
その音だけが
暗く冷たい鶏舎に響く

昨日とは上空の風向きが違うのか
朝から火山灰が
あたり一面に降り積もっている
 ....
 
 
近所のフランス人が遊びに来て
ニンジンを食べて行った
日本のニンジンはとても美味しい、と
たいそう喜んで
お礼にエッフェル塔の置物をくれた
大きさからしてどう見ても
偽物のエッ ....
森の猫さんのたもつさんおすすめリスト(35)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
simple_plan2- たもつ自由詩1214-3-24
電話- たもつ自由詩2313-9-9
紙魚- たもつ自由詩1013-5-16
都会図鑑4- たもつ自由詩712-7-25
ニュース- たもつ自由詩512-7-5
厚揚げ- たもつ自由詩1212-5-28
東京- たもつ自由詩512-5-22
冷奴- たもつ自由詩1312-5-21
蜜柑- たもつ自由詩1112-5-10
罫線- たもつ自由詩911-11-27
見守るキノコ- たもつ自由詩711-11-9
電話が鳴る- たもつ自由詩311-10-22
レジに並ぶと- たもつ自由詩611-10-2
海の生き物- たもつ自由詩311-8-25
帰ろうか- たもつ自由詩911-7-23
冷麦- たもつ自由詩411-7-5
笑うために- たもつ自由詩511-7-1
憧憬- たもつ自由詩611-6-28
サラとスズメバチ- たもつ自由詩1011-6-27
マヨネーズ- たもつ自由詩311-6-15
中身- たもつ自由詩6+11-6-8
鮮魚コーナーにワタリガニが並んでいた- たもつ自由詩711-6-7
ひとつ- たもつ自由詩6*11-5-22
右利き- たもつ自由詩611-4-16
目印- たもつ自由詩411-2-26
結婚について- たもつ自由詩2411-2-16
歯磨き- たもつ自由詩310-12-7
僕にヒゲが生えていた頃- たもつ自由詩8*10-11-28
誕生- たもつ自由詩610-9-10
パリ- たもつ自由詩610-5-24

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