言葉
目配せする紫陽花たちはにぎやか/に笑みをこらえる。もうすぐ先生がやって来る。廊下をひた走る。期待。新学期はとうに古びて奇妙な連帯感が地中に根を伸ばす。もうすぐ黒板消しが落下する。中間テスト ....
たまに現れて
たまに言葉をぶつけてくる
痛い
オブラート買ってきて
せめてどうかお願いするなら丑三つ時はやめて
痛い
痛くて痛くて毎日を素通り出来なくなる
....
毎日通る道なのに
少し時間が違うだけで
まったく違う風景を見せてくれる
少し気分が違うだけで
知らない道に迷い込んだ気分になる
いつもよりランドセルが軽かったり
....
二年前、私は仕事を終えると毎日病院に通っていた。
夫を車椅子にのせ、夜の病院内をさまよった。病院から出ることができないなら、せめて外気にに触れさせてあげたいと思った。
屋上テラスの扉は鍵がか ....
身分証明書を
と言われて財布を探ったが
パン屋のレシートがぱらりと落ちただけ
カード入れにはブックオフのカードだけ
午後の図書館だった
カウンターのミセスは
住所と名前が記されている ....
*
僕たちは午後から出発した
地面に句読点をつけるよりも速く
きれいな風が僕たちを追い抜いていく
足もとを通り抜ける
小さな音が風を追いかけていく
白いページにやがて日が傾き
それぞ ....
*
目覚めると音のない世界
カーテンの隙間から灰色の光が射している
明けていくカーテン越しの光のなかで
青磁の肌が鈍く輝く
この部屋はこんなふうに朝を迎えるんだね。
僕は君を置き去りに ....