どこにだったか
どこでだったか
てんしのこえきいた
いつだったか
うまれるまえだったか
てんしのこえたしかにきいた
なんていったか
なんかいったか
てんしのこえ ....
ゆっくりと赤ん坊に返る
その人をわたしは知っている
夫の祖父だ
わたしを、「大きな女だ」と言った、祖父だ
いつも戦争の話をする、祖父だ
布団の上でお絵かきをしていた、祖父だ
初めて ....
真昼に死んだ雀の葬式が埼京線内で行われた
ガタンゴトンと無機質なレクイエムに合わせて
小さく焼かれた雀がタレに漬けられて
綺麗な漆黒の皿に乗せられていた
電気の走った頬 ....
気のめいる商談まで
まだ時間があったから
崖の上のポニョにはいった
宮崎駿は
テレビで見た風の谷のナウシカいらいだ
このふたつしか観ていないのに
なんだかこんなこと ....
秋に夜が訪れて
炭酸水が流れこむと
暗い海の底
音もなく稲穂が揺れる
えら呼吸をはじめる
溺れないように
母が子守唄を歌う
目を覚ますまで
魚になる
泡をこらえて ....
エアポートには感傷的なものがない
暮らしのなかにそれはないからだ
曇り空だけがちょこんと光景に座っている
仕事先が
大連であろうと
シカゴであろうと
名古屋であろうと
僕じしんの
能 ....
とても幸せそうな家庭だった
それなのに
僕が帰ると言うと
君は泣きそうな顔をして
つまらなそうにうつむくのだった
いつか君も
僕の家に遊びに来た
垢にまみれた泥の顔をして
即 ....
初めて会う人の顔の真ん中に
或いは胸の真ん中に
おへその辺りに
とにかくその人の中心線に
隙間がないかどうか
確かめる
それは
ある時はボーリングの球くらいの大きさだったり
ある時は米 ....