ある雪の日に手紙を出しに外へ出て
すべって転んで骨を折ったヨシ子さん
ケアマネージャーが入院先へ
見舞いに行ったら泣きべそで
「アタシ馬鹿よね、おほほほほ・・・」
折れた骨がく ....
ぶらさがって いる
ただ
ぶらさがって いる
ただただ
ぶらさがって いる
明かりを灯らす
役割があるだけ
立派なのかもしれない
無味乾燥の心
ついには発火
くゆる煙は
....
僕が知りたいのは
CMの後に出される答じゃなくて
消費されていく新曲じゃなくて
僕が知りたいのは 僕が知りたいのは
作りかけてやめた
誰に送る宛てのなかった
....
ホリデイ
青空にはためく白い洗濯物
私は音の出ない口笛を吹きながら
遠くに走る車のきらめきを見ていた
いつか見た潮騒のようだとふと思う
あなたはまだ帰って来ない
風が気持ちいいわ 春のよう ....
集められる限りの写真を集めて、アルバムにすればいい
一人部屋でページをめくり
かつてあった日々の思い出を愛せ
それらの日々をノートに刻み込め
言葉にできないことはみんな行間に遊ばせたまま
言 ....
この頃は
新聞の死亡記事を切り抜いて
町内の電信柱に
べたりべたりと貼り付けることにしている
今日もこんなに沢山の人が死にました
毎日毎日人は死にます
これだけの人が死ぬ中で
わ ....
迷える羊の群の
一匹であるわたしは
たとえ世の牧場が
冷たい雨に打たれる日さえ
何を思い煩うこと無く
風の首輪で牽かれるように
只わたしは従いてゆく
天に向けて角笛を鳴 ....
つま先立ちで そっと
両腕を広げて
目蓋は閉じたまま
屋上で こうしていると
天使になれる
そんな気がしてた
天使は僕の憧れ
純白のワンピィス
柔らかな羽根
羽ばたかせて空を舞う ....
昨日哀しみを突き放し
今日の瞼は何も隔てない
地表を渡る細波を
裸足でなぞり
葉の無い枝のように
四方へと手指を広げている
数羽の鳥が羽を休める
屋根の上には
ソーダ色の空が
....
病気になると みんな
入院すると思ってる
ずっと入院されていたんですよね
お見舞いに伺いたいのですが どちらの病院ですか
病院にいた方が 苦しくないんじゃないか
病院にいた方が 安心なん ....
シャボン玉に
うつした顔が
空を舞い上がる
はじけると
わたしは幼く
母の布団の中にいる
目覚めると
またシャボン玉が
空を舞っている
朝日さえ当たらぬこの長い廊下
軋みだけが響き渡る
亡きがらを引き取りに
亡きがらを引き取りに
売られて連れられ廓の網
格子窓から手を出して
遊客に色を売り
遊客に色を売り
....
スカアトを持ち上げたわたくしの
内股を流れおちる、それは
ルビイのやうに光り輝いておりまして
わたくしの声を
ただの吐息としてしまいます
生まれでる前に
終はりを迎えたいのちが
恍 ....
―健二に
包丁一本さらしに巻いて
君は西洋にやってきた
言葉なんて何にも知らないのに
義理人情
いろんな人を愛し 愛 ....
.
母が死んだ日の翌朝
わたしはいつもの時間に起きて
いつものようにご飯を食べた
横たわった母の手を
そっと、さわる
(つめたい、手)
(瞼はかたく閉じられていて)
これが ....
女は消印を食べ続けた
消印を食べなければ生きていけなかった
医者には病気のようなものだと言われた
普通に届く郵便物だけでは
必要な量は満たせなかった
子供のころは
両親が女のために手紙を書 ....
きみの魚にふれたくて
えら呼吸を切望したら
肺が痛んだ
朝への開口を防ぐように
その
呼吸のひとつ
くちびるを
置いていく
きみの鳥をとびたくて
背中にそらを作ったら
煙に ....
ホントに情けない話だけど
もう死にたくても
さびしすぎるから
ひとりぼっちでは死ねないよ
こうなったら誰かを道連れに
・
道いく人にいくら頼んでも
頭を下げても 脅してみせても
たい ....
何が起きたのかわからなかった
地鳴りと轟音とともに
その瞬間
すべてを失った
激しく燃えさかる炎と
黒煙の中
太陽は赤く揺らいだ
衝撃と
悲しみと
脱力感の中に
いた
茫 ....
僕が少し思春期に染まり始めた
中2の夏
おじいちゃんの家から
自分の家に帰る日
おじいちゃんの声がして
2階から降りてくる
階段の天井には
手を伸ばせば届きそうだ
のしのしと足音を ....
ただしいこと
どこへ つなげていこう とも
わたしは わたしの
かなしみで めいいっぱいで
あなたは あなたの
こころを ひょうげんできないまま
とおりすぎて
あれから ....
長い陽も沈むよう
医院の外灯が付いて
傘の影が三つにひらく
バス停にひとり
何も捉えぬ目で
車道の先に見た夢も
呆気なく流れて
ちっぽけで哀れな足を
ざぶざぶと濡らす
雨粒は ....
嫌になるほど青い空
暑さしかない休日だけど
洗濯バサミが壊れたから
バスに乗って出かけよう
片道三十分と少し
乗り継いで三百七十円
何処方面に乗ればいいか
それくらいは分かっている
....
なつかしげに からまった
毛糸玉をほどけば
ふわふわと 手触り柔らかに
つながっている糸
すべてほどいてしまったら
もう一度 からまりあった玉に
丸めてゆきましょう
もう一度 ....
日が落ちて 暗い川に
すう とよぎる物がある
魚のひれに
背の高い草
それから
釣りのおじいさん
長い棒で
水をかき
橋をくぐる
なにがみえるのか
なにがきこえるのか
波紋と ....
思っている事は
頭の中をぐるりと回って
言葉となって発せられる
ただ
思いによって
何周するかは個人差があり
僕の頭の
中には
まだ
居残りさせられて
何週も走らされて ....
海辺の坂を走る自転車のブレーキが
みぃみぃと鳴く
それが合図だったかのように
目をつぶると
浜辺の巻貝の中へ
体が入り込んでしまった
殻の奥でくつろいでいた巻貝は
ヌルリとだるそ ....
少年は
旅に出た
真っ白なノートを
一冊持って
そのノートに
この世のすべての言葉を
すべての意味を
書くために
街には
言葉が溢れていた
朝には朝の
....
千本 の 針を
つないだ 蒔絵
朝焼け に溶け出す
真っ暗 な朝
骨 の 隙間に宿る
鈴 の 声
つながれて
つながって
心 に まみれた
火傷 のよう ....
曼陀羅寺へは湖沼の脇のあぜ道を
通って行かねばならない 丈の低
い湿原植物の群生が道を覆い隠す
ように拡がっている 湖沼にはぼ
んやりと霧が立ちこめ向こう岸は
見えない 風はなく水面はほとん ....
1 2