星雲の強烈な光
片方の瞳孔に浴び
身もだえる俺
頭を押さえつけられ
逃げることができない
涙がとまらない
鼻腔に漂う
甘い乳の匂い
この人間拘束帯
実はオンナだ
お前は ....
あなたの蛇の皮もどきの諦めを
満月の海に見た
あたしの心は
そのとき蒼く静かに燃え盛り
そして今は静かに冷え切っている
透明な風が 冷やしていくのだ
死の匂いのするス ....
おんなは夜ひとり泣いたりする生き物だ
目をこすって赤く腫らしたりする生き物だ
落ち込んだりじぶんを責めたり
おんなは忙しくて切実なる生き物だ
おんなはみんな渡り鳥だ
あたまのなかの磁石に ....
瑠璃色 空がはぜる
祈る子の贖罪がおわって
世界に太陽を取り戻した
水面に満ち足りて
みなぎる光を
トンボたちが拾っていく
きらめいて
またふりまいて
運びきれない
....
昔たってそんな昔じゃない昔
筑豊とかの炭鉱では女のひとも坑内で働いていたらしい
上半身裸で乳房丸出しの腰巻き一枚
薄暗く蒸し暑いヤマの奥底で
気の荒い男衆に混じり
掘り出したばかりの石炭 ....
バスに乗ってたら
13番目のバス停で
ある男が乗ってきて
いちばん前の
広がる窓の席に座った
明るい緑の
Tシャツと
三本ラインの入った
黒のジャージ
靴下の足は ....
君が雨の向こう側へといってしまう
私の指は君の枷とは成り得なかった
どこにも行けない手紙を持ったまま
消えない空を追い求めていた君の
首筋の匂いがいつまでも離れないでいるの
不思 ....
今はもうだいぶ古びてしまったけど、
あなたが生まれてすぐの頃
お風呂に入れている写真がある。
頭の後ろを片手で支えて
おなかの上にはガーゼのハンカチ
ただ無心に 洗い残しのないようにと気 ....
描きかけた まるい絵を
仕上げた事はなかった
曖昧な空に 風船を放つ
重さなどは いらない
この世界のたくさんの声が漏れて
帰り道、溶けそうな歌声に酔う
わたしはわずかに軽い
....
角砂糖をひとつ
昨日の夕焼けに落とした
レモンだけじゃ
辛すぎるかもしれないし
ただなんとなく
作り笑いをひとつ
一昨日の捨て台詞に添えた
当って砕けただけじゃ
苦すぎるかもし ....
誰もいない土手に座って 動かないブルドーザーを見てる
雨が降ったのはもう何日も前 消えない水たまりを
車輪のついた風が駆け抜ける
人がいないのはこの一瞬だけ まばたきをすれば
....
長い長い、ゆめが落下して
重さを忘れたわたしは、大きな幹の鼓動を聴いている
その音と音のリズムが春の速度と似ていて
甘い甘い、きみも落下する
そこらじゅうに溢れているのは、
多分、今年の
....
きみが帰ってこないあの日から
砂時計の砂はさかさまにこぼれて、こぼれて、
しだいに、ちいさな子供になってしまう、夜
遠くで、つぶやくきみの言葉が、わたしの名前だといい
そんなふうにして ....
空の涙は
私の手のひらで
悲しみを預けながら
そっと
冷えた空気に混じりあう
音もなく消える
その悲しさを
何に伝えたらよかったの
かじかんだ手を
あたためてくれた人はとおく
冷えきった深夜の駅
まばらなひとたち
だれも私をしらない
わたしのことさえ だれもしらない
どんなにののしられても
それを愛に ....
白梅も微睡む夜明けに
あなたしか呼ばない呼びかたの、
わたしの名前が
幾度も鼓膜を揺さぶる
それは
何処か黄昏色を、
かなしみの予感を引き寄せるようで
嗚咽が止まらず
あなた、との ....
月がきれいだよって
君に教えようとしたのに
君を見たら君がきれいで
そのまま君を見ていた僕に君が
月がきれいだよって
そうそう
月がきれいなんだよねって
思い出して見上 ....
雑踏ならば天使みたいな昼間のキミのキス
は磁石みたいでこわい
最悪感でひろがるのに
何度もやめたくなくてくりかえす
後ろの座席で友達がねてるのに
寝てないフリをしている
たぶん
たぶ ....
あんたは豊かになるため
何を燻らせ
何を吐きだし続ける
螺旋階段の真ん中で
上と下
二か所に出口がある
檻の中で
いつまで座り続ける
行動が停滞しているから
意識が混濁する
マリフ ....
夜になる。
テレビを消した静けさが嫌いだ、と彼女は言う。
その横、彼は頷いていただろう。
夜になった。薄い群青色の空が、
夜になった、と。たぶん。
部屋の明かりをつける。
明かりをつけない ....
二十歳になった時
ずっと十九歳でいようと思った
三十歳になった時も
ずっと二十九歳でいようと思った
来年わたしは
四十歳になるのだけれども
三十九歳は
なかなか簡単には終わって ....
メリー、
それは細長い
木々の根元から枝の先までがちょうど、
ひかりだけ流れているようにみえた
夢みたいな夜
ぼくらは産み落とされて
地図だけを持たされていた
しずかに痛みな ....
忘れてください
と、口にした時から忘れられなくなる
ふいにこぼした言葉も
思いつめた頬の感じも
忘れてください
忘れたものは戻ってこないと知っている
ある日ふとまざまざと
風に揺 ....
きみの世界が回る
その自転を知り、触れたいと思う
わたしが逆らっても
きみは進んでしまうから
追い付くことはない
きみを紐解くように
その髪を梳いている
....
目覚めたくないよ
君の姿からは
想像できなくなってしまった
青い、青い世界
色褪せて、しまった
冷たい空気の中で
震えているのに眼、
逸らしたまんま
{引用=d r o p . ....
淡白な言葉じゃつまらないから
頭から口までを迷路にした
たぶん楽しんでくれるだろう
きっと飽きられはしないだろう
事実 幾人かは認めてくれた
他の人とは違う、と言って
服を脱ぎ 鍵穴を見せ ....
彼女の朝食は
チーズトーストと、シリアルと、サラダ
スライスチーズを乗せたパンをトースターに入れると
シリアルとサラダの準備をする
ある朝
シリアルが10g足りないと
彼女が泣いた
....
答えは出ている。
だけど今夜はNOなんだ。
何でってオレがキミを、キミがオレを騙しきれなかったから。
そんなもんだよ。
だまし絵の中に探し物を見つけたのなら想像してみるといい。
....
舞う、
それは、かすかに穏やかで
重力と風をさらう
そして、アスファルトへと帰るまで
溶けては消え、溶けては、
あたりは、
そうそうと時をつなげている、師走
風を分けて走 ....
ちいさな町のあちこちに
狂ったような橙色のあかりが灯る
天使がベッドシーンを覗く夜
(こんな粉雪の舞う晩は
殺人鬼がやってくるんだ
もろびとこぞりて唄いながら
殺人鬼がやってくる ....
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