すべてのおすすめ
東から西へ
クリークのような商店街の上を
滑空する
コンビニの角を南に曲って
コソコソとパチンコ屋へ向かう
八百屋の若旦那を左目で見ながら
西から北へ
生易しい北風を切り裂く ....
ぬっぺふほふ
脂身 から にゅるんと 手と
煮凍り から ぬらりんと 足が
新月の 夜道を ぺたりぺたり 歩いて
軒下の 薄明かりに ぐんにゃり うずくまる
こらあげん の 垂れ ....
枕返し
枕は魂を夢の入り江へ運ぶ舟
夢と現の狭間に横たわる
とろんとした浅瀬を行き来する
僕は腕利きの一等航海士
大抵の鼾や歯軋りには動じないけれど
獏の襲来にはかなり手を ....
木魅 (こだま)
「好きだ」
溢れ出した想いを返せないまま
あなたは土に還り
わたしは朽ちることもできずに
「好きよ」
抱えすぎた言の葉をざわめかせながら
夜毎 すすり泣 ....
ぬらりひょん
つかみどころなんてあってたまるか
若い頃の苦労はすぐに質入れしたし
長い物は巻かれるふりして帯にした
真っ正面から当たるなんてドジは踏まない
折れない柳は風を知り尽 ....
坊主が屏風に上手に坊主の絵
を描いているところに
東京都特許許可局
の役人が訪ねて来て
裏庭には二羽庭には二羽ニワトリがいる
と教えてくれたので
青巻紙赤巻紙黄巻紙
を携えて駆けつけ ....
シャワーヘッドから
ほとばしる呪文で
昨日までの身体を
洗い流したら
有効期限切れの
プラシーボを
ペリエで飲み下して
街へはみ出る
手にした青が
全部フェイクだったから ....
うっかりついてしまった
溜息の先端から
滑り落ちたマンボウが
午後3時17分の紙コップの
コーヒーの中に浮かんでいた
セクハラまがいの
丸い横っ腹を堂々と晒して
背びれと尻びれを ....
目頭にこびりついた
ノスタル自慰を
擦り落としたら
液晶で描かれた
瑞々しい少年は
皮肉っぽい脂身になっていた
買い置きしすぎた
ファンタ自慰を
解凍し損ねたら
活け作りのつ ....
うろこ雲の尻尾につかまって
東の空へ流れ去った君は
雨雲に紛れ込んで
細やかな涙を降らせた
柔らかな時の掌に撫でられて
色鮮やかに頬を染めた君は
頼りない指先に手折られて
夕餉の ....
足が歩いていた
宙ぶらりんの午後の
人影も疎らな舗道を
足が歩いていた
左右ぃ 左右ぃぃ
交互に舗道を愛撫しながら
足が歩いていた
素っ気ない陽射しを
ふくらはぎに受けて
....
<伝える>
ひとつの言葉に
ひとつの意味しか
与えられていなかったら
ちゃんと伝わるのかな
肯定と否定の
二者択一で
チャートを辿っていけば
簡単に真理に近づけ ....
憶えてないくらい前から僕は
屋根裏部屋の
喋らないラジヲと古雑誌の間で
首を傾げてる
別に忘れられたことを
恨んでるわけじゃない
淋しさのように埃は積もっていくけど
僕は元気
....
ちょっとだけ焦げたトーストに
マーマレードを丹念に塗りつけながら
行間が欠伸している新聞記事を
接続詞のように眺めていた
かなりぬるくなったコーヒーを
スプーンで執拗にもてあそびなが ....
あのさ
君にはずっと黙っていたんだけど
実はね
僕は土星人と暮らしているんだ
あっ
いつものつまらないジョークなんかじゃないよ
それと
僕はたぶん正気だから心配しないで
えっ
ヒ ....
ガラス張りの冷蔵庫から
ぼんやり眺める街並みは
いつか見た夢のように
とても希薄で
行き過ぎる人影は
照りつける陽射しに
丁寧に舐め回された揚句
溶けかけている
薄いアイス ....
乱れたシーツに
打ち上げられたのは
僕だけだった
散らばった鱗を
キレイに片付けた君は
もうコーヒーを香らせている
カーテンから漏れてくる
光の海蛇を蹴飛ばしながら ....
小銭をじゃらじゃらさせてる
オジサンは
時代は買えないが
切符は買える
路線図に目を凝らしてる
オジサンは
時代には乗れないが
電車には乗れる
ホームの端で背中を丸める
....
細長い一日の側面には
たくさんの出窓が一列に並んでいた
窓枠には下手な絵が嵌め込まれていたから
僕は脇目もふらず
いったりきたりするしかなかった
細長い一日の両端には
それぞれにひ ....
6本目の指が
映っていないじゃないか
いつもその指で
現実と幻想の結び目を
引き寄せているのに
鎖骨のあたりの鰓が
映っていないじゃないか
いつもその鰓で
言葉にならないガラク ....
ニューロンの地下道を
何度も行き来して
シナプスのエスカレーターを
ノルアドレナリンなみに昇り降りして
君の行方を捜していた
視床下部から垂れ下がる
独善的な案内板は
劇的な ....
いっそのこと
壊れてやろうかと思ったのです
午前8時20分 正確には午前8時19分49秒
あなたは怖いものでも見るような目つきで
私を見ると言葉でない何かを叫びました
それから物凄い ....
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