わたし、はじまりの朝に
終わりに近付いていく
ほどけていく絡み合った
か細い線に引き込まれて
ほら、いまにも
ちぎれてしまいそう
小さな声で呟く
あなたの消えそうなか ....
愛すことを忘れた
曖昧な笑みで
あなたに似たあたしは
赤い糸を
あちこち千切っている
朝に疲れてしまった
あたしは、そっと
新しい夢を見る
明日を、探している
飽き ....
ちいさなころの わたしは いじめられっこ
クラス中の男の子が 「ばいきん」ってよぶ
先生まで ばいきんあつかい
先生も いじめっこ
わたしのかいた 詩も
わたしのかいた 小説も
私の ....
夜の飛行場には
サヨナラが点在する
携帯電話のキーのような
小さな光の形をして
滑走路を疾走するもの
引き離されるもの
雲に呑まれるもの
星になるもの
僕らの住む街 ....
雨の夕暮れ
うそはまばたき
影の下
ぼくはうそつき
路面をみてごらんよ
路面を
路面を見てごらんよ
路面を
神頼み
なみだはかがやき
空の下
ぼくはうぬぶれ
....
(その繋がりは拒絶からはじまる)
時として必要になる
人と人との間には
その、繋がりがあって
それは瞬く間に
拒絶に変わる
雨の降る真夜中 その中で
佇むわたしの背後 ....
来る日も来る日も
こうやって
涙さえでるのを忘れて
来る日も来る日も
こうやって
焦燥を{ルビ抱=だ}く他仕方ない
去る日を何時も
忘れてしまって
うつくし日々は嗚呼何処
....
ダンボール箱
いや、もう、箱ではない
これに
俺は
云いようもないさみしさを覚え
やあ、俺が
もう、君のよに、なってしまったら
どうしよか
なりたくはない
ダンボールのよに
雑用さ ....
・
初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
....
南風に乗って、夏が
駆け込んできた
いつだったか あなたは
疑いなく寄せるそれを
レモンの光、と呼んで
指先で掬い上げて口付けをした
透明な時軸につかまって、僕は
ひとま ....
フロントガラスに映る
木漏れ日をなぞって
睡眠体勢をとる
外に出てしまうと
少し、汗ばむ陽気だけれど
一つ隔てた世界では
丁度良い感じだから
上昇気流に乗って
飛ばさ ....
.
雨は夜更け前に
一段と激しくなるだろう
永遠を探していた
一人、何もない道を歩いて
世界の事なんて考えながら
夢と現実の狭間を
さまよっている
母が死にました
川はい ....
.
笑う事をやめた月
わたしはそれを
悲しみと呼んだ
いつからかわたしたちは
色を忘れてしまい
光を失ったまま
月と一緒に
やせほそっていく
ここは
あの人のいない ....
.
母が死んだ日の翌朝
わたしはいつもの時間に起きて
いつものようにご飯を食べた
横たわった母の手を
そっと、さわる
(つめたい、手)
(瞼はかたく閉じられていて)
これが ....
逆光でよく見えなかった顔は
少し寂しそうだった
あの人、もうすぐ死ぬの
朝靄に紛れて
毎日出かけていく
今、生きている
その事を
実感したいのかもしれない
かわいそうな人
....
朝露が髪にあたり
それは次第に
大量の雨へと変わっていった
頬を伝って体中に
染み渡る
冷たい雨
歪んだ風景
溶けていくわたしは
雨、同化していく
高すぎて見えない
....
少し遠くの楽園から
手招きしている人がいる
とうめいの雪が
小さく呟きながら
わたしに降りそそいでくるのが
とても心地よくて
夏の雪
月の白さに隠れて
楽園を照らす
わた ....
遠いところへ行く
だれもいない所へ
わたしという存在を
消すために
紫がかった夕暮れ
落ちていく太陽を
目で追う
暗闇が訪れた時
わたしは、無に帰る
砂の混ざった荒れ ....
深い青色をした海が
少しずつ近づいてくる
わたしだけでは
とても耐えられない
そんな場所で
あの人は毎日
立ちつくしている
冷たい手のひら
からめた指がふるえる
見つめると
....
夕暮れの風が皮膚に冷たくあたる頃
さざ波がわたしの足をさらっていく
水にうもれた死は
ゆっくりと潮をひいていく
(ゆれる)
悲しみに
消えてしまった夕焼け
わたしを照らすものは
無 ....
藍色に染まっていく
わたしの目の前には
小さな蒲公英が
たくさん並んで
誰かが一つ一つ
ふみつぶしていく
その様が
おかしくて
笑ってしまった
深い所にある
重いトビラ
....
夕焼けの水平線に
引き込まれるわたし
明日の事も
分かろうとせず
無を、怖がる
窓辺に映る雲は
西へと動き
わたしは
小さな音を鳴らしながら
ゆらゆらと流れていく
裏がえっ ....
あなたの名前は
この悲しみに似ている
木霊になって消えていく声を
遠く向こうに感じた
その冷たさ透明さが
あなたなのだと思う
繋がらない海と雨とが
真夜中にせめぎ合う
ざわめく ....
本を読む人の眼は
例外なく真っ黒い色をしている
それはもちろん
眼が活字のインキを吸収してしまうからである
本を読みすぎて
白眼まで真っ黒になってしまった人が
こちらを向い ....
その少年は、少女で動いていた。
少年のどこかに少女が埋めこまれている。
少年はときどき吐き気がする。
そういうとき、たいていそれは夜だけれど、砂浜を思い描く。すると、少女が少年の砂浜を歩 ....
てのひらに乗った 雪が
溶け出して、僕の
一部になってゆく
降り始めに気がついたのが
どちらだったか
もう忘れてしまった
雪は
これで最後かもしれない、と
最初に言ったのは君の ....