白鳥は十字が似合うと言う錯覚
一等先の 空を照らす 特攻隊長は
恐れ知らずの 頑固者
雁は どんな形で 飛来するのか
考えたことも なかった
今冬は 随分と 小ちゃい虫ばかりと
遊 ....
遺影のある家に行くと
線香の良い匂いがして
羊羹を一口食べた
奥さんがずっと昔からのように
右手で左手を触っている
側では子どもたちがわたしの名前を知っているので
窓から外を見ると
....
ふたつの手のひらを
使いこなせない昼下がり
耳を澄ませてわたしは
しずかに風を
遮断する
すべては
それとなく遠い気がして
けれども確証はなくて
言えずに続いた
....
空をさす小枝のような
父の指に
赤とんぼがとまる
お父さん
声をかけると
赤とんぼを残して
父は飛んでいってしまった
驚かせるつもりなんてなかった
いい年をして、と
笑われるか ....
大通りがあるでしょう
そうまっすぐのアスファルトの大通り
右側にショッピングセンターのあるあの大通りよ
その大通りをまっすぐ行って
どこもカーブしてないからまっすぐ行って
三つ目の信号を左に ....
角のない消しゴムは
捨てられる寸前だった
角があろうとなかろうと
同じ材質なのに
四つの角があるとないだけで
大きな差をつくっていた
丸みの部分にはすれたえんぴつが
くっついていて
手 ....
満員電車が大量の労働力を
吐き出し、東京は声を上げる
坂道で女子高生はスカートを
翻し、青春が血をたぎらせる
すれ違ったサラリーマンの一日
肩で風切るヤクザの明日
ホームレスがやっと終 ....
大講義室で机に突っ伏し熟睡
ようやく目覚めてもまだ教授は話をしている
大学の講義はやたらと長い
君はすこし呆れ顔で
顔に寝あとついてるわよって
解読不能な文字が並ぶ僕のノートに ....
僕もポイと 捨てられるのかな
君が次々と 失くしてゆく手袋や
指輪みたいに
捨てるんじゃないよ
逃げてゆくの
大切にしていた 手袋も 指輪も
男達も
にらむように前を見つめて
....
つい最近まで
小さくうなだれていたのに
海の地平線までしっかりと
見つめるようになった君の瞳
明日かもしれない切なさを
胸の奥で感じながらも
瞳の眩しさは
陽を浴びて光り輝く海原のよ ....
見知らぬ空を仰いで
温もりを感じる日々
ときおり舞い降りる
透き通った言葉を
奥深い森の落ち葉で包んで
肉体のない愛情を知る
交じり合うことのなかった
細い光の線が
一瞬の ....
?.
神経質そうに痩せた手を合わせて祈っている
ひざまずいて
教会の中 ステンドグラスを割ってこぼれる夕日に溶けそうな
白金の髪
俺はその斜め後ろに座って
じっと ....
悪い子は見つからないパパにもママにも見つからないぼくは悪い、
押し入れの中は宇宙だから漂う星たちは涙じゃない。
膝を抱えて星座に ....
魚は
夜に鳴く
なくした
ラッパを思って
+
砂糖瓶を
よく洗って石段に
並べていくと橋を渡る
来客があった
+
探し物の
予定のない日
菜の花畑で一人
ラジ ....
出木杉くんが主役だったら「おはなし」にならないのび太はのび太。
おまえの悲しみはおれのものだからなんでも言ってくれ剛田武。
ヒロイン ....
新しいお絵描き帳と
クレヨンを持っていった
何も描けなかった
周りの子たちは
鳥も魚も人も
自由に描いた
真っ白く広げられたものの前で
どうしたらよいのか
わからなかった
どうしたの ....
雨が降っていた
陸地のいたるところに
がんもどきと
豆腐は今日も
売られていた
+
暑い日が続き
両親は
学校へと行った
届けたかったのだ
うちわをあなたに
+
....
俺は君の喉奥に居て
いつかの歌を聴いている
ヴ
いや、ラ
ヴぃ
飲み込んでいる
俺はかつて
空に下りる全ての命は爆弾だ、
と言いかけてやめた
君に会えて嬉しい
四季が蠢いて
....
体のことを思えよ
おれの
体のことを
体のことを思うよ
おまえの
体のことを
体がいいから
おれたちの
体がいいから
おまえの肌のきめを
北から ....
町外れにある小さな海岸には
波が来るたびに
無数の椅子が打ち上げられる
町に住む子供たちにとって波音とは
木や金属のぶつかったり
こすれたりする音に他ならないので
海遊びをするときは
上 ....
2002/02/05
だめだ!だめだ、だめた!
絶対にダメだ!
どんなに懇願しようが許さねえ
たとえ明日地球が無くなるとしても
娘はやれねえ。
だめだ! ....
鳥かごを作った
鳥は空にいるので
それで良かった
代わりに魚を入れると
苦しそうに跳ねた
花や玩具を入れても
どうということはなかった
鳥かごは
誰のものでもなかった
鳥は空にいた
....
僕は男だから
産む痛みを知らない
同じくらいに
産まない痛みを知らない
痛みなんて知らない
ここは戦地ではないから
僕はあなたではないから
幸せになる方法を知らない
幸せにする ....
小高い丘に店を開いた
お客が来た
出入り口なので
お客は出ても入っても良かった
晴れた日は
見渡せることろまで見渡せた
雨の日は
屋根や壁に雨があたった
ただここにいて
何かを待って ....
背中がまがっているよ
葉巻が落ちたよ
おじいちゃん
手を 貸すよ
おじいちゃん
買い物のビニール袋が
たくさんだよ
おばあちゃん
手を 貸すよ
おばあちゃん
....
郵便配達員がポストと
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね ....
ふわふわのシャボン玉の中では
ふわふわの魚が泳いでいる
しゅわんとはじけると
魚は空にかえっていく
私もかえりたい
空じゃなくていいから
ふわふわじゃなくてもいいから
....
トムソンはがぜる
がぜり続ける
健やかに育ち
育ち続ける梢と梢の
間からメニューを覗き
何という名のファミリーレストランか
ハンバーグを和風セットで注文する
まるで都会だねここは
....
池袋のスクランブル交差点
ど真ん中で俺は
釣り糸をたれる
ジョニー にぼしのジョニー
おまえはどこか
白い皿の上で美しく
干からびている
ジョニー にぼしのジョニー
おまえもかつて ....
おおきい かあさん おおきいな
ちいさい とうさん ちいさいな
ひるね ひるね らいおん ひるね
おしろのてっぺん こうじちゅう
+
さとうと えんぴつ けんかし ....
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