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職場で必ず着用するエプロンには
大きなポッケットが付いています
わたしはその中に
いろいろなものを放り込むのが癖です
ポッケットが膨らんでいないと
落ち着かないのです
膨らんでいて少 ....
きみの一日を 僕は知らない
きみが毎朝買っているパンの味も
きみが気にして飲んでいる健康ドリンクのことも
きみが僕に隠れて嬉しそうに読んでいる新聞の四コマ漫画のことも
きみが髪を無造作 ....
本を読む人の眼は
例外なく真っ黒い色をしている
それはもちろん
眼が活字のインキを吸収してしまうからである
本を読みすぎて
白眼まで真っ黒になってしまった人が
こちらを向い ....
喉が渇いたので
駅のホームのキオスクで買った
「苺ミルク」の蓋にストローを差し
口に{ルビ銜=くわ}えて吸っていると
隣に座る
野球帽にジャージ姿のおじさんが
じぃ〜っとこ ....
はだかんぼうのうたうたい。
寒々しく、背骨は軋むよ。
あたしがね、君の手を握るたびに
(思ったよりもね、きみの手は小さい)
守るべきは自尊心なのか、という自問自答が。
小さな手で守りきれ ....
「たいへんよくできました」
というスタンプがどうしても
自分のノートに押されたかった
先生にノートを渡しても
いつも「がんばろう」とか
「あとひといき」ばかりだった
同じクマのスタンプなの ....
見たまえ、この格子状の麗しきラインを
これこそがメロンパンだよ。
我々はかつてヴイーナスを美の象徴として崇めた。
しかし歴史は変わった。
アフロディーテすら予測できなかった時代が
到来して ....
おまえはきいろいねとむかしいわれた
そういうあなたはびょうきみたいとしかえした
あうたびにだきあっていたから
わたしたちみえなくなってしまって
わたし
ひこうきでかえってきたの
きみは ....
あたしのほしい車を買うには
あたしの貯金は
ちょっと足りない
なのでう〜んと悩んでいる
磨いたウィンドウのなかのレッドがまぶしい
あたしのほしいブーツを買うには
あたしの給料は
....
あなたが口を開ける
中には空が広がっている
雲が浮かんでいる
舌がある
少し乾燥している
その先に
喉ちんこがぶら下がっている
双発のプロペラ機が
飛んでいくのが見える
空の一番青い ....
ある日からだった
鳥たちがいっせいに地下を飛ぶようになった
空を捨てて森を捨てて
鳥たちは土の中へと潜っていった
地上には鳥の姿は見られなくなった
人間は鳥の居場所を探したが
かなり深くま ....
日が明るく見通せるから明日というけれど
何も見えないからこそ明日なのかもれない
日が今だから今日というけれど
何もしていなければ昨日と同じかもしれない
今日を大切にするということは
昨日の自 ....
青が足りない。
気づいたんだ、僕には青が足りてない。
手足がとてもぎくしゃくしてポリゴンみたいなのも
青が足りないせいなんだ。
気づいても、青は足りない。
依然、足りてない。 ....
聞き捨てならんな
お前はあれを首と呼ぶのか
2メートル以上はあるあれが首か
そりゃキリンにだって首は要るだろうよ
持ってたいだろうよ なくしたか無いだろうよ
頭と胴体のあいだにキュッと一本ほ ....
例えば
あなたはこれだけで
きみはこれくらい
ぼくはこんなに少ししか無くて
それでも息をしていくわけで
へへ と笑ってみても
それは増えるわけでもなくて
でも ....
わたしは
くらやみで
ふと きこえる
すずのおと のような
かなしみです
わたしは
ばろぼろに やぶれた
ごみぶくろ のような
かなしみです
わたしは
あおくて ふかい
....
くそぉくそぉ
さっきまで携帯で喋ってて
切った途端に出てくる言葉がソレですか
馴染みの居酒屋
後ろの席に座ってる知らない中年男性
同じ事を何度も繰り返すばかりの長い電話
詳 ....
息停めて
ほーっと階段一気にかけあがってみてん
一息ついて
階段の踊り場でふっと息をのむ
あっちゅう間に十段も飛ばしてしもうた
もったいないことしたかなぁ
そっと視線を ....
夕方に無性に悲しくなったので
人参と玉葱とジャガ芋と
それから少し高いお肉を買った
湯気で前が見えなくて良かった
テレビがひとり
笑い声をあげている
朝になれば目が覚める
そこはぼくの家
いや
ぼくの家らしい
今までぼくの家と言われてきたのだから
そうなのかもしれない
生まれてきた時から繰り返したことを済ませ
家を出て学校に行く
そ ....
ショートケーキひとつ
落ちていく
月夜の道に
落下する
やわらかな音
聞こえない
苺がひとつ転がった
外れてとれて痛んでる
暴風通ってまた転がり
赤い
実の
白い
いち ....
嵐のあと
歩道に{ルビ棄=す}てられた
ぼろぼろなビニール傘
雲間から射す日射しに
一本だけ折れなかった
細い背骨が光る
あのような
ひとすじの {ルビ芯=しん} ....
当時はもてはやされた
流行のデジタルカメラ
今では部屋の片隅で
勢いで買った専用のプリンタとともに
すっかり埃にかぶっている
電池も完全に切れている
プリンタに差し込まれたままの紙は
純 ....
ピンクの頭を描きました
その中に
緑の脳を描きましょう
紫の右目
左目は見えません
黄色い御鼻
黒い唇
滴る透明の血
宇宙を掴む大きな手
しゃぶりつきたくな ....
?.
この絵、あんたにそっくりね
そういっておまえが笑った絵は
リオハのお城みたいなワイン美術館にあって
おまえが指差して笑った絵は
赤ん坊のバッカスが
ワインをラッパ ....
私の中にいる悪魔が
名前を欲しがります
自分のことを呼んで貰いたいのでしょう
私はとても奇麗な名前を
悪魔につけてやりました
悪魔は毎日自分を呼んでくれとせがみます
仕方が ....
いつかあなたは僕の絵を
「痩せた狐の落とし子ね」
笑って僕に言いました
弱って僕は、虹のあなたに
「よくも、よくも」と笑ってました
いつかあなたは僕の絵を
「止まった時計のようだわ ....