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音もなくカルナヴァルはやって来た
花吹雪の中をカルナヴァルはやって来た
爪先立ちで熱狂する
サンバ
魂を奮い立たせる
アンゴラのリズム
髪にまぶたに乳房に腰に
音も楽器もなく花は降りそそ ....
彼とは佐賀の九州陶磁文化館の研究会で初めて会った
私が書いた明末清初の華南三彩陶磁の論文を読んだと彼は言った
高名な李朝白磁研究の専門家に自分の論文が読まれたと知って私は高揚した
その頃私は中国 ....
暹羅(シャム)猫を飼うのは難しいから止めたほうがいいと友人は言っていた
でもお前を飼って正解だったと今は思う
私はこの2年仕事を終えると一目散にお前のもとに帰ってくる
ソファに寝そべって愛しい茶 ....
お前と一緒に暮らしていて
いつも思い知らされるのが
与えた分だけ与えられるとは限らないのが愛だということ
誰よりお前を愛している
手入れされた上質の柔らかな毛皮
しなやかな体つきや
綺麗な ....
青空模様のタイルに覆われたような
ガラス天蓋のあるコンコースを歩く
ひとけのすくない午後の駅には
のどかな旅愁が満ちている
上空は強い風が吹いているのだろう
立ち止まった路のうえを
雲が落 ....
切り倒したばかりの白木 刳り貫いて
船をつくろう 船をつくろう
亡くなった人の骸を入れるため
船の棺に入れて 愛しい亡骸を入れて
白浜へ挽いていこう 海まで挽いていこう ....
新しいドアの前に辿り着いて
ノブを回してドアを開ける
中に入ってからばたりとドアを閉める
今入ってきた場所と薄いドアの一枚で遠く隔てられた世界
ドアのこちら側でしばらく立ち止ま ....
映画館の観客席で
私はサイレント映画の最終上映を観ている
スクリーンの中では
どこか大きな河の岸辺に
冬の渡り鳥が集まり
その鳥を1羽
少女が肩に乗せている
枯草と砂 ....
新月の深い闇夜はいつも
晩夏の有明海を思い出す
まだ19歳のひとり旅だった
熊本長洲港から最終間際の有明フェリーに乗船し
対岸の長崎国見の多比良港に渡った
フェリーに親しげに ....
ある国に住んでいる悪魔が
ある教会の美しいステンドグラスとオルガンと聖母子像と黄金の鐘と
そこで毎日祈りを捧げている敬虔な神父を激しく憎んでいた
彼は日が暮れると宵の明星、魔王に誓いをたてた ....
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小さな南の島の
星砂の浜に
小さな青海亀が生まれました
波の泡のように柔らかな水色の甲羅を背負った
たくさんの子海亀たち
まあるいお月さ ....
いつもより遠出した散歩の途中
気がつくと僕は
古墳の前にいた
その古墳のことを
僕はそれまでただの自然の丘だと思っていた
『県指定史跡』と書かれた案内板に
黒い鳥が一匹だけ止まっている ....
とろりとろりと
日が暮れて
お社の石灯篭の暗い影
僕の背丈より
いつの間にか長い
鬱蒼と生い茂る鎮守の森
空にはねぐらに帰ってきた鴉の
黒く騒がしい群れ
忍び寄る夕闇せかされて
....
新月
月が新たに生まれ変わる夜
世界は何処も彼処も
静かなる闇夜
時計の針が12時を回って
私の眼はますます冴えてゆく
カップには
黒真珠のように ....
嵐が過ぎ去ったばかりの
夜明けの海岸に
僕は僕の相棒の野良犬と連れ立ってやって来た
激しい台風が
思う存分 遠慮なく吹き荒れてくれたおかげで
夜明けの海の薄い水平 ....
その髪は毒の蛇
歯は鋭い猪の牙
青銅の手に 黄金の翼を持つ
彼女の姿を見た者は
全て石となる
神話時代の醜い怪物メデゥーサ
乾いた丘陵のうえの神殿が
....
最近では人の姿もめっきり少なくなった
街角の公園
細い木立の合間
ブランコが木枯らしに揺れる
寝そべり始めた太陽が
砂の上にいくつも影を落とす
錆付いた ....
小さな黄色いトウシューズ
夜空に投げ込む
舞姫ひとり
気がつけば
見知らぬ砂浜 星と佇む
昇る三日月
波の舟
櫂漕ぐピエロ
どこか微笑 ....
鳥が一羽きり
ないている
夜中に
あの娘の名前を唄にして
星に見せかけた
小さな願いも いつか
君の瞳に飛び込んでいく
弓弦弾かれる
僕は見つける
きっと射抜かれた
....
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