高村光太郎が
智恵子の首を彫ったのは
34歳の頃だという
写真では
苔生したような絨毯の上に
白い
智恵子の首が
ぼそり と
載っている
愛なのか
悲痛なのか
....
一人称は怖ろしい
野イチゴの時期が終わりを迎える
サツキの花が申し訳なさそうにしぼんで
紫陽花が幼児のような色をして準備している
時計の咳が聞こえる
ウグイスが鳴いている、練習不足のとき
....
てのひらに降らせたカラフルなキャンディの雨
気前よく景気よく弾けるクラッカーの紙テープ
そんなふうに
グリンピース
ぐらぐら沸き立つナベの中に
グリンピース
放り込むのは何故この両 ....
何かもう、めちゃくちゃに好き あんたのこと
でもさ、どうしてか、これは恋愛じゃないんだね
手を繋いだり、キスしたりしなくても全然構わない
むしろ話すらしなくてもいいって気がする
傍にすら、 ....
夕焼けの嘆息、きぬごし、
漏れた光を褥とし、
少年のまどろみ。
春風が、ひとしきり、
染められた、創傷のある、頬をなで、
現実を匂わす。
少年、嘆息するが、
ひらり、
こればか ....
君の声がキコエルから
声を全部スクッテあげる
ヨンデいるわけじゃない
黙々と声をナラシテいる
君の声がキコエルから
声を押し殺してあげる
ナイテいるわけじゃない
....
きみとぼくのあいだに
けされたせんが
たくさんあって
そういうふうに
きょうかいせんは
あいまいになって
こういうのがいちばん
むずかしい
きみはそこまで
ぼくはここまで
....
銀杏並木通り 風が舞う
銀杏と風は 戯れ遊び
ふと出逢う 街角
信号待ちのフロントガラスに
一枚の銀杏葉が 蝶のように舞い降り
気まぐれな風ととも ....
昔ここに種を植えた
何の種か分からなかったから何が生えてくるのか楽しみで毎日水をあげた
でもいつのまにか
忘れてた
こんにちはお元気ですか覚えてますか
あの膝下までしかなかった小さな木が ....
この牢獄(パプノティコン)は、ひじょうにあたまの冴えたクールな狂人が設計したのだ。
天窓からふりそそぐ季節ごとの光の重量、色彩の変容までを数量化し、
そこから落ちてくる微細なホコリの乱反射までを
....
脂喰坊主は地下鉄の端で
ホームに顔を突き出して遊んでいる
駅員が慌てて止めるが
大丈夫
脂喰坊主は死なない
脂喰坊主はバツの悪い顔で笑う
それから
目を閉じてかっきり一秒
....
たこ焼き屋のまえで
たこ焼きが出来上がるのをじっと待っているジャリたれは
いつも実存のことばかりに頭を巡らせているので
たこ焼きくるくるするの難しい?
としつこく同じことを尋ねては
店のおば ....
溶けてしまっていたものを
元に戻すくらいの力があるなら
夜半を過ぎても止まない雨を
酸性に変える事だって容易いことなのでしょうね
容易いさ
そんなの
って言う位だったら
対価払ってち ....
銀紙を たくさん砕いてるよ
もう ずいぶんたまったよ
今日は よく晴れた日だったね
君を呼び出して
あの 高い橋の上から
砕いた銀紙を ばら蒔くよ
君に見せたいから ....
夢のような色合いの
からっぽの貝がら
心のような色合いの
砕けてしまった貝がら
チクリと指に花を咲かす
害のない言葉など
ないと知りながら
きれいな言葉を
使いたかった ....
良く晴れた月曜の
憂鬱な空気が
僕の角膜の
屈折率を変えて
広角に見せるので
ただでさえ薄暗い
工場の中は
いよいよ真っ暗くなり
何も見えなくなるのです
悪意だけが
浮かび上が ....
雲は糸で動かされているのよ
これは君が私に残した最後の言葉
ここから見えるあの猫のあくびさえ
君の目には糸が見えた
庭に咲く白い花も
風が動かしているのかと問う君に
....
電線に疾風わたる
わたりゆく
音は
こする
鼓膜は
朝から
私を
しらせる
トタンの屋根に粉雪つもる
つもりおつ
光は
....
地獄のとある片隅に
けしごむのかすがうずたかく積もっている
ここはけしごむ地獄
後悔ばかりして生きていた人間が
人生を白紙に戻すため
けしごむを動かす
ぐい、ぐい、ぐい
自分の人生は ....
雨、そして雨。雨だ雨が降っている。鋪装された道が熱い。その上に降っているのだ。雨だ。こんなにも暗い。その上を彩っているのだ。螺旋に彩るそれを湯気と呼ぶ。湯気、湯気、こっちにおいで。来ない。来るわけが ....
さばくにじょうろでみずをやってもさらさらとのみこまれてしまうように
かわいたこころほしつえきをあたえてもいっこうになおるけはいはなく
ちょうちょむすびをしようがかたむすびをしようが
....
揚げ雲雀
東京の空は小さし揚げ雲雀
芝桜しゃがんだ犬と小学生
燕来て一瞬消える歩道橋
薔薇胸に泣き崩れたる送別会
陽炎に溶けてし ....
壊れゆくものはとても美しい
なんてあたりまえのことを叫んだりはしない
毎日が間違っていく過程だとすれば
それはとても正しいことに違いない
壊れる
という状態を恐れない
恐れ ....
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