すべてのおすすめ
保育園の窓の外では
世界童話全集が産卵をしています
孵化したばかりの童話は
粘液で汚れしかも鋭い牙があるので
先生たちがきれいに拭いて
牙を一本一本抜いていくのです
暴れて困るものはダンボ ....
亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい
+
かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている
+
カンガルーが直立したまま
波音 ....
公園の砂場で
車のおもちゃが死んでいた
一度も生きたことがないのに
もう自ら動くこともないのだ
近所の庭に咲く
キンモクセイが香っている
今まで見たことのある死体と同じように
嫌な匂 ....
たくさんの花を枯らした
サボテンやアロエも枯らしたし
ケフィアやカスピ海ヨーグルトも駄目にした
それでも命は大切にしなければならないからと
小さな虫はその形や色が嫌いでも
なるべく殺さず ....
足がつった
魚を釣った
痛さにのたうつ小指が
餌に見えたのか
少なくとも自分の足の小指くらいは
何をも傷つけないと思っていたのに
魚は同じようにのたうってる
口をこじ開け
引っ掛かって ....
公園のベンチに腰をかけ
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と ....
大通りがあるでしょう
そうまっすぐのアスファルトの大通り
右側にショッピングセンターのあるあの大通りよ
その大通りをまっすぐ行って
どこもカーブしてないからまっすぐ行って
三つ目の信号を左に ....
揚子江のほとりで
あなたは生きてください
わたしは揚子江の様子は知らないけれど
多分あなたも同じくらいに知らないでしょうけれど
揚子江のほとりにも花は咲くでしょう
この年になっても花の名前は ....
階段の踊り場のあたりで
父が釣りをしていた
家の中とはいえ
釣りをする父の姿が
再び見られるとは思ってなかったので
嬉しかった
子供のころ一度行ったきりだった
工場地帯の隅っこに広がる
....
箪笥の奥には
凪いだ海がしまわれている
微かに潮の匂いが漂っている
妻は夕暮れの淡い光に
静かなシルエットとなり
折り目正しく丁寧に
洗濯物を畳む
その姿は僕らの感傷を代弁する
何 ....
日が暮れて今日も塩屋に
ナメクジたちが集まる
口々に死にたい死にたいと言いながら
塩を求めにやってくるのだ
けれど感情が昂りすぎて
みな自分の流した涙で溶けてしまう
翌朝塩屋の前は
粘液 ....
ホームセンターで
子象を買って帰る
前から欲しかったので
お金をコツコツと貯めていたのだ
家族の喜ぶ顔が見られるとも思ったが
案の定こんなもの買ってきて
と妻に叱られる
「詩とは違うんだ ....
絵本の側で
子供が頭をあわせ
内緒話をしている
二人だけの秘密は
二人だけの秘密のまま
やがていつか忘れられてしまう
僕らは今日必要なことを
ひとつひとつ整理していく
特別なことはない ....
魚は
夜に鳴く
なくした
ラッパを思って
+
砂糖瓶を
よく洗って石段に
並べていくと橋を渡る
来客があった
+
探し物の
予定のない日
菜の花畑で一人
ラジ ....
あなたが口を開ける
中には空が広がっている
雲が浮かんでいる
舌がある
少し乾燥している
その先に
喉ちんこがぶら下がっている
双発のプロペラ機が
飛んでいくのが見える
空の一番青い ....
新しいお絵描き帳と
クレヨンを持っていった
何も描けなかった
周りの子たちは
鳥も魚も人も
自由に描いた
真っ白く広げられたものの前で
どうしたらよいのか
わからなかった
どうしたの ....
針金を折りたたんでいく、と
先には僕らが息をしている家が見える
目を細めれば海のようなものがあって
僕らはそれを海と呼んだ
その前で君はセーターを編み続け
僕は隣でセーターを食べ続けてい ....
僕は男だから
産む痛みを知らない
同じくらいに
産まない痛みを知らない
痛みなんて知らない
ここは戦地ではないから
僕はあなたではないから
幸せになる方法を知らない
幸せにする ....
エアー、夏のように
薄い服を着たあなたが
少し口を開けて
世界とつながっている
あなたの唇も手も皺に慣れましたね
前より縮んで
それでもまだ懐かしい
エアー、吸えるものは
たくさん ....
小高い丘に店を開いた
お客が来た
出入り口なので
お客は出ても入っても良かった
晴れた日は
見渡せることろまで見渡せた
雨の日は
屋根や壁に雨があたった
ただここにいて
何かを待って ....
冬が終わりそうなので
ひだりの方を向いたら
そこにはひだみがいた
ひだみと名づけられたひだみは
自分が何であるのかわからないので
大そう困っている
僕もひだみと言ったものの
ひだ ....
咳をしたらたまたま側にいた
隣の課のえむさんが
フルーツのど飴をくれた
えむさんがフルーツのど飴を好きだなんて
初めて知った
えむさんは僕より十歳くらい下の女の子だけど
背は僕より十セ ....
背中国の背中法廷では
今日も背中裁判が開かれている
背中!
裁判長の素晴らしい判決に
原告も被告も
手をとり歓喜の涙に
背中を震わせている
背中国の人々の背中に当たる日の光は
....
石ころが落ちていた
少し透きとおってきれいだったので
拾って帰った
こんなもの拾ってきて
母は決してそう叱らなかった
しばらく手で触ったり眺めたりしたあと
かわいそうだから放してあげて
....
弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れ ....
はらだまさるさんのたもつさんおすすめリスト
(55)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
噛みつく童話
-
たもつ
自由詩
16
07-4-2
かなしみ
-
たもつ
自由詩
37*
07-3-31
キンモクセイ
-
たもつ
自由詩
16
07-3-27
花
-
たもつ
自由詩
42*
07-3-24
こむら返り
-
たもつ
自由詩
13
07-3-22
手続き
-
たもつ
自由詩
15
07-3-22
道しるべ
-
たもつ
自由詩
13
07-3-21
揚子江のほとりで
-
たもつ
自由詩
16
07-3-20
釣り
-
たもつ
自由詩
13
07-3-19
箪笥
-
たもつ
自由詩
17
07-3-16
結晶
-
たもつ
自由詩
15
07-3-15
詩とは違うのだから
-
たもつ
自由詩
16
07-3-14
待合
-
たもつ
自由詩
8
07-3-13
さよなら
-
たもつ
自由詩
29*
07-3-12
目
-
たもつ
自由詩
13
07-3-11
紙
-
たもつ
自由詩
16
07-3-10
波
-
たもつ
自由詩
14
07-3-5
花束
-
たもつ
自由詩
35
07-2-28
エアー
-
たもつ
自由詩
12
07-2-26
開店
-
たもつ
自由詩
21
07-2-25
ひだみ
-
たもつ
自由詩
10
07-2-24
えむさんの草原
-
たもつ
自由詩
37
07-2-17
背
-
たもつ
自由詩
6
07-2-16
宝石
-
たもつ
自由詩
18*
07-2-13
空腹
-
たもつ
自由詩
36
06-10-14
1
2
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