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あなたにはじめて出逢ったのは
この廃屋が未だ駅舎として機能していた頃のこと
夏草の浸食に怯える赤錆びた鉄路と
剥がれかけた青森ねぶた祭りのポスターが一枚

この駅を訪れるひとと ....
同じフロアの同じ間取り
南西向きの小さなワンルーム
好きなひとの去ったベッドに横たわり
ひとりの男の死を想ってみる

駅前のスーパーで買い物を済ませ
近く有料になるとかのレジ袋をぶら下げ
 ....
自ら築いた家庭を守る
そんな当たり前の事ができなかったのだと
あのひとは言った

幸せそうな笑顔の傍らをすり抜けるとき
言い知れぬ悪寒を覚えるのだと
あのひとは呻いた

家族のために自 ....
両の人差し指でぱたぱた
ニワトリが餌でも突いているようで
思わず吹き出しそうになるけど

なにやら真剣に打ち込んでいる
あなたの横顔
見方によっては男らしいとも言えそうで

古いやつだ ....
天涯孤独だからさ…
それは、あなたの口ぐせ

帰るべき家があって
待っていてくれるひともいる

それなのにどうしてそんなことを言うのだろう

こころの空白を満たそうと
終わりの無い旅 ....
世の中には支えるひとと
支えられるひとがいる

支えるひとは暗い海に胸元まで浸かり
力の限り支え続け

次々と押し寄せる荒波に揉まれては
やがて力尽き海の藻屑と消える

支え続ければ ....
好きとか嫌いとか
そのような感情と同じ速度で
五月の空はわたしのこころを蝕んでゆく

そして陽射しに揺れる葉桜が
散り行く先など知る縁も無いように
他者への憎しみを
こころの襞奥に抱え込 ....
はじめての出逢い
それは父親に肩車されてのこと

ガラスの向う側で
愛らしそうな顔して笹を食べていたっけ

何時でもいるのが当たり前
そんな存在でもあったような気がして
パンダってまた ....
お愛想だと判っていても
みょうな期待を持たされてしまう

口ぐせなんだよね

未来と繋がっているようで
繋がってなくて
この連休の天気予報みたいに当てにならない

悪気なんて無いのだ ....
長い間待ち望んでいた瞬間が訪れる
受付の看護士さんに案内され
病院らしい匂いのする待合室の長椅子に
わたしはひとりで腰掛けていた

手術自体はあっと言う間ですから

こころにメスを入れる ....
女子トイレに入ってきた
あなた
あっと小声上げたと思ったら
ばつの悪そうな顔して出ていった

なんだかおまぬけで可愛いよね
あれれ、わざとかな

石橋は疑って渡れ

ほとんどの誤り ....
自分で考えてみても些細過ぎる悩み事を
頷きながら聞いてくれる
復縁できたらとか下心あるのかな

彼だった頃は喧嘩ばかりしていたのに
なんだか不思議だよね
今では心を開いて相談できる
同志 ....
ゴスロリっていうのかな
そんなフリルのたくさん付いた服
一度くらい着てみたいけど
「おばさんの癖して…」
あなたに言わてしまいそうだし
そんなの着れる歳じゃないことぐらい判っている

ふ ....
へのへのもへじみたいだねと問いかけたら
「へへののもへじ」が正しいんだと
あのひとは言った

―へのへの

叱られて家に帰れなかった
夕焼け空に
ロウセキで描いた
へのへのもへじ
 ....
先週末に桜が散ったばかりなのに
あなたは
物置から引っ張り出したビーチパラソル
具合を見たいからと
これ見よがしに拡げてみせる

どうやら使えそうだな

アルミパイプの椅子まで組み立て ....
焼けてきたお肉を器用に裏返してくれる
横の物を縦にもしない性格だと思っていたのに
どうやらそうでも無さそうで

アルコールの度数は低いからと
ビールの飲めない私に勧めてくれた
甘くてとろり ....
ぼっかり空いたこころの隙間に
あなたの優しさが忍び込む

そのひとに騙されているのではと
友達は忠告してくれた
仮にそうであったとしても
構わないと思ってしまうわたしがいる

ひとの弱 ....
なんだかこぎ疲れたから
ちょっと立ち止り休んでみる
無理してこがなくとも良いのだと
あなたは諭してくれたけど
途中でやめるなんてことできなくて

意固地になんかなっていないよ
こぎ続ける ....
誰かの哀しみを拾い上げる
冷たい小糠雨に濡れ
誰かの哀しみは
つぶらな瞳でわたしを見上げたように思えて
この胸に優しく抱きかかえた

歩道橋下の暗がりで拾い上げた
誰かの哀しみは
手の ....
一枚の写真のなかで私
笑っていた
卸したての制服は似合っていないし
表情もなんだかぎこちない

引越しの準備とかで慌しい最中
久しぶりに開いてみた
アルバム
こっちへ出てくるときに母が ....
おかず一品足りないと
不機嫌そうな顔をするあなた
でもね、わたしだって何かと忙しいし
お給料日だってずっと先

あなたに足らないのはおかずじゃなくて
もうちょっとの頑張りなのかな
好きな ....
「おつかれさま」

思わず「えっ」と聞き返してしまった
久しく労わりのことばなんて無かったのに
何かにつけて話しかけてくるし
誰かさんからの着信メールを気にしなくなった

あなたの言葉を ....
「ねえ、良いだろ?」

何が良いんだかと思いつつ
とりあえず
あなたの左腕にしがみついてみる

押し付けた胸のふくらみに気づいたらしく
慌てふためく様子が可笑しくて

かまととだとか ....
また後で携帯にメールでも入れるから

あなたの去った
バスルーム
鏡に映るのは恋に疲れたひとりのおんな
乱れきった髪が物語る
しがみつこうとしてしがみきれなかったものへの思い

シャワ ....
ひとは指折り数える

その日の訪れを確かなものにしようと
指を折り
心に刻み込む
自らの身体に刻み込む

いつの日か死は必ず訪れることを知っている
それでも
死に往く日まで知ろうとす ....
わたしを手渡されたときの
あなた
ちょっと驚いたように目を丸くしてたよね
ぎこちなく両手で受け取ってくれて
すなおにお礼を言ってくれた

わたしは
この日のために生まれてきたようなもの
 ....
紫色のくちびるを震わせ
熱いコーヒーで暖を取るわたしに背を向けて
あなたはストーブに薪をくべている

見覚えのあるチェック柄の毛布
あなたの匂いを胸一杯に吸い込んでみた

冬の嵐の去った ....
どうしよう、スタートまであと何分も無いよ
周りを見渡せば皆速そうな人ばかりだし
私がここにいるのって何だか場違いに思えてきた

友だちに誘われはじめてはみたけれど
誘った張本人はとっくの昔に ....
虫のいどころでも悪いのか
いつまでも押し黙ったままで
あなたはテレビの画面を眺めるでもなく
そっと箸を置く

テレビのなかには
つまらないギャグに笑い転げる顔があり
テレビのそとには
 ....
ルーズな踝はいつのまにか姿を消し
タイトな紺色が街を闊歩する

こんな横並びを欲する時代だからこそ
曖昧なままでは許されないと言わんばかりに
膝上近くまで引き上げられた紺色に感じる息苦しさと ....
北大路京介さんの恋月 ぴのさんおすすめリスト(275)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
無人駅のひと- 恋月 ぴ ...自由詩26*08-6-29
孤独なひと- 恋月 ぴ ...自由詩22*08-6-24
守れなかったひと- 恋月 ぴ ...自由詩22*08-6-18
古いひと- 恋月 ぴ ...自由詩18*08-6-7
支えられるひと- 恋月 ぴ ...自由詩27*08-6-1
支えるひと- 恋月 ぴ ...自由詩28*08-5-25
五月のひと- 恋月 ぴ ...自由詩34*08-5-19
パンダなひと- 恋月 ぴ ...自由詩18*08-5-13
「また今度」なひと- 恋月 ぴ ...自由詩19*08-5-8
待合室のひと- 恋月 ぴ ...自由詩36*08-5-3
ピンポンゲートなひと- 恋月 ぴ ...自由詩16*08-4-28
見つめなおすひと- 恋月 ぴ ...自由詩24*08-4-23
ふりふりなひと- 恋月 ぴ ...自由詩31*08-4-17
もへじなひと- 恋月 ぴ ...自由詩30*08-4-11
気の早いひと- 恋月 ぴ ...自由詩33*08-4-5
まっこりなひと- 恋月 ぴ ...自由詩22*08-4-1
騙されるひと- 恋月 ぴ ...自由詩23*08-3-26
ゆっちゃりなひと- 恋月 ぴ ...自由詩20*08-3-20
拾い続けるひと- 恋月 ぴ ...自由詩30*08-3-15
引っ越すひと- 恋月 ぴ ...自由詩25*08-3-10
足りないひと- 恋月 ぴ ...自由詩27*08-3-5
疑惑のひと- 恋月 ぴ ...自由詩11*08-3-3
断わりきれないひと- 恋月 ぴ ...自由詩27*08-2-27
揺れるひと- 恋月 ぴ ...自由詩24*08-2-22
数えるひと- 恋月 ぴ ...自由詩28*08-2-17
甘いひと- 恋月 ぴ ...自由詩23*08-2-12
拾われたひと- 恋月 ぴ ...自由詩26*08-2-8
走るひと- 恋月 ぴ ...自由詩16*08-2-3
ささくれたひと- 恋月 ぴ ...自由詩23*08-1-29
ルーズアンドタイト- 恋月 ぴ ...自由詩19*08-1-24

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