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風は暗がりから吹く
私の影は滴りつづける
誰も居ない
かつて誰かが居たかもしれない
そのわずかな痕跡も
とうの昔に温度を失い
記憶を失い
頭上には黒い星座たち
ただ脳裏 ....
身のまわりのひとところが
なんだか前よりも
がらんとあかるくなった気がするのは
そこに虚無がひとつ
生まれていたためだった
私はいまだその大きさも輪郭もつかめず
いつかつかめる日がくるかど ....
場末の小さな店を出ると
もう真夜中のはずなのに
不思議とあたりは白っぽく明るい
街灯もひとつもともっていない
しかし明るいとはいえ太陽がないので
なんだか昼間とはちがった
さびしい明るさだ ....
壁を自在に移動する窓
持ち歩き可能な窓
心臓に取り付けるための窓
蜃気楼だけが見える窓
窓硝子に詩を書くための窓
叩き壊しても何度でも再生する窓
脱け出すためだけの窓
忍 ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
僕の黒いノートの表紙に
ときどき
窓が出来ていることがある
その向こうで
君のかなしみが
淡い落下をいつまでもつづけている
(背景はいつも夏の
{ルビ誰彼時=たそがれどき}か
{ル ....
オパール・グリーンの夜明け
褪めた窓
虚空を漂う巨大なビルボード
モノトーンの呟き
夢の露頭
遠い風
コロイド状の街燈の光
見えない傷と瑕
古びたソファー
非在の時空に架けるピンクの ....
浅い午睡に
思いがけず野蛮な夢をみる
それを誰かのせいにしてみたところで仕方ない
けれど
ああ
夏が甘く爛れる匂いがする
それは私の倦怠と
なまぬるく混ざりあってゆく
何もかも ....
また夏がめぐり来て
空も緑も色深まり
光と影が幻のようにあざやかに世界を象っています
夏の花々も色が強く
私には似合わないのです
降りそそぐ{ルビ眩=まばゆ}さと熱にも
ただただ圧倒さ ....
夜明けの窓は孔雀色
今年もまたうたうように
アガパンサスが咲いている
七月はわたしの中で
いちばん甘く実る果実
君はいつかそれを 別の名前で
呼んだかもしれない
少しずつ風がうご ....
空は虹色に溶け
得体の知れない甘さが
いちめんに薫り立つ夏のゆうぐれだ
長い夏のゆうぐれだ
君の記憶が
水のように透明に
けれど水よりも濃い密度で滴ってきて
それは容易く
私の現在を侵 ....
白い春の夕暮れ
浅い眩暈が意識を通過する
柔らかな距離がゆるやかに傾き
西に沈む誰かの声 遠い声
傍らの抽斗の中で
淡い儀式の記憶が疼く
それはやはりある春の夕暮れの
古い棟のうらさ ....
私の中に
午前を飼っている
白い舟がいくつか
遠く漂う午前だ
華奢な草の葉がためらいがちに揺れ
吹く風のなかに
覚束なげな青さが
消えない午前だ
もう長いこと飼っている
だからも ....
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