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ほうらご覧よ
あんなに見事な
ゆるりゆるりと
銀の鱗を光らせて
水面に映る魚のよう
ゆるりゆるりと
眺めていたら
水の底から
見上げてるのは
こちらのほう
銀の鱗の魚に ....
曇った空の下では
海も鈍い色をしていた
打ち寄せる波の先だけは白く
足元に届けられて
よーく目を凝らして見てごらん
水平線が弧を描いている
停留しているタンカーが遥か沖のほうで
....
ねこになったきみとぼく
木漏れ日ゆれる
ねむの木の下で
二匹ころんと横になる
長い尻尾が自慢の
きみはしましまトラ猫で
大きな耳が自慢の
ぼくは三色三毛猫で
仲良く顔を並べて
昼 ....
黄昏が
哀しみの手をひいて
波打ち際へと運ぶ
きらきらと
波間に揺れるものを
幾度つかまえようと
泡と消えていくそれは
知るはずのない「永遠」
時計の針を止めても
季節は巡り ....
蝉時雨も止んだというのに
真昼の喧騒が
じりりと
耳に焼き付いたのを
両手で塞いだ
鳥の群れが西をめざし
灯火色した空に
消えていくのを
門口に焚いた火とともに
静かに見ている
....
まどろんだまま
深く吸った息で
体中に雨が透る
窓辺においた手紙が
濡れているのは雨のせい
滲んだ青いインクの
消えかけた名前を呼んで
雨の一粒一粒が
体の中で弾ける
ソ ....
買い手のつかぬまま
何年か空き地だったお隣に
店舗兼アパートが建った
店舗といっても
コインランドリーのせいか
雨の日以外は閑散としている
アパートもまだ空いたままで
梅雨明けのあとは
....
日没にはまだ少し早い
真昼の太陽で暖まった道は
この足どりを重たくする
ふうと
ため息に似て
諦めともつかない
息を吐きかけたとき
風が首のあたりを
掠めていく
この道の
....
青々と
広がる蓮葉には
明け方の雨の
ひとつぶ、ふたつぶ
みつぶ、よつぶが
それは見事な玉を作り
ころころと
風にゆれながら
まるで生まれたての
宝石のよう
真っすぐのびた
....
肌の全部が
湿った薄い膜で被われて
少しの息苦しさで
満ちている午後
畳の跡がついてしまうかしら
そう思いながらも
まるで猫の昼寝の如く
時折どこからか吹いてくる風で
意識を保って ....
それは
降りしきる雨の
隙間をぬって
遅れて届けられた
一通の手紙のように
雨と雨が
触れあう音に紛れて
見慣れた景色の
匂いの片隅
未送信のまま
閉じられ ....
ふたり来た道
ひとり戻る道
降り出した雨に
そこから一歩も
動けなくなる
泣かないと決めたから
唇噛んで
きみの姿を巻き戻し
雨のスクリーンに何度も映す
いくつもの
色の移 ....
雨と雨の間に
かおを出した青空に
並んで一緒に伸びをする
夏草はいつのまに
私を追いこして
掲げた手さえ届かない
ぐうんとジャンプで
きみ(夏草)にタッチ
ぐうんと伸びして
きみ(夏草)は空にタッチ ....
物語の終えた本を
閉じると同時に
欠伸をひとつ
いつの間にか外は雨
こんなに近く
ガラスを滑る雨に
今更気づいて
覗いてみたのは
深い夜
明けること
わかっていても
朝はまだ ....
地面に伸びた影を
ただひたすらに
追いかける
僕らはあの日
自由だった
悪戯な
きみの笑い声が
背中をくすぐって
僕のなかにあったのは
「現在」という時間だけ
確かにあの時 ....
*翔る*
頭上の
ヘリコプターに向けて
大きく両腕を振る
「おーい」って叫んだ
何度も叫んだ
声だけが
翔けていく
*風*
自転車の
ペダルを漕ぐのも
間に合 ....
石垣に肩を預けて戯れは
我が身を石に初夏の景色に
それは‥
季節で言えば
今頃の
濃さを増す
木々の緑も鮮やかに
天気で言えば
曇天とも
雨天とも
言えるような
....
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