即席麺みたいに茹でられて
ぬめったまま口へ運ばれる
舌でもてあそばれた挙句
結局なかったことにされる
後悔させてやるから
夏の縁を走る車窓のスライド
途切れ途切れの堤防の上
影を無くした雲たちが
空に溶け切れず沈殿する
銀色に眩しい床に脚を伸ばせば
車音の波にすくわれて
すぐに溺れてしまうだろう
もたれ掛か ....
コップの縁からあふれている
緑は
泣き出しそうに
低いところへ向かっていく
その底辺で
受け止めて
手の中に溜まっていくのをみてる
私の睫毛の先から漏れた
藍色と
手の中 ....
ことばカタパルト
秋には空が高くなる
魚たちもぽんぽん跳ねる
ぴちぴちと
身をくねらせて青空に踊り
それからぽちゃんとするだけだけど
きれいだし面白いし
十分じゃないか
ボラ、 ....
インフルエンザの{ルビ影響=インフルーエンス}でしょうか
秋風に風邪をひきました
夕方になると熱が出て
夢だとわかっている夢の中から
戻ってくるのが一苦労
彼岸花がそろそろだと思っていた ....
二週間に一度
電車に揺られ
ヘッドフォンで耳を塞いでもうなんにも余計な物は聞かないように
通い慣れた踏切/目的地以外は何もわからない駅/ひゃくにじゅうえんで三時間珈琲
先生はどうですか ....
詰まる所さ
自分が一番可愛くて
優先順位が頂点なのさ
奇麗事を謂う輩
お前も自分が一番可愛いだろ、
そうでなきゃ今すぐに
其処の銃で頭打ち抜けよ
流れる血さえ愛せるって
ほら判るか ....
帰ります。
否、もう今すぐに。
もどれないなんていうんだったらぼくはすぐにかえってみせるさ/とんで/いますぐに
きみのやさしさは静か過ぎるので
わざと大きな音で噛み砕いてやった錠剤の色は白
そこは ....
見失った起点をとりもどすための儀式。なぜそれが必要なのかはわからないけれど。ホームから(赤い)傘を放って、虹を呼ぶ。虹は来る。(生き物のように)。雨は去る。対になろうとする、ことば ....
日が沈んだ
この{ルビ郷=さと}では太陽はビルではなく
山々の間に沈むのだ
当然ながら日没から夜までは早く
一人星を探せど時既に遅し
見渡せど君は今はいない
この時間に仕事はない
....
今年はじめての風邪をひいて
布団の中でまるまっていたいのに
僕は先生なんて呼ばれたりしているので
待っている子供たちのために教室へ行く
ところで
そこの教室の窓はとても大きい
僕が ....
近頃、世の中すっきりしないことばかり
それなのに火に油を注ぐように、また一つすっきりしないものが現れた
「糖質ゼロ」
どこがすっきりしてるんだ? 俺はちっともすっきりしない 釈然としない
糖質 ....
君がはじめて家に来た日を覚えているよ。
車で迎えに行くときすごく楽しみだった
姉弟に負けて母犬のお乳に近づけなくて
一番小さかった末っ子の君
はじめて抱いた時
白くって温かくってコロコロしてたっ ....
私の町
海辺の港町
夢うつつに波音で目覚めて
窓を開ければ
かすかな潮の香り
胸いっぱいに深呼吸して
優しい海で満たして
一日が始まる
私の家
高台の一軒家
階段を下りると
....
君が糸電話を作っていた
夕暮れまで
まだ時間があるというのに
いったい誰にかけたかったのか
小学校の図工の時間のように
器用な指先で紙コップの底を切り取り
セロハンを貼っている
....
子供の頃は
船乗りになりたかった
世界中を旅して
冒険して
人食い人種にとらわれて
奇跡の脱出
漂流して
魚食べて生きて
雨を集めて
さめを殺して
奇跡 ....
服を脱ぎ捨てながら
でもそれはなんだか恥ずかしくて
でも人間だから好きあってるから
服を脱ぎすてながら走る
それはチューリップで
色とりどりのチューリップで
....
一、 銀色の背中
飯も喰わずに、カピが月ばかり見ているので
座敷に上げて訳を聞くと
長い沈黙のあと
神妙な顔で
片想いなのだという
いったいどこの娘かと問えば
まだ逢ったこと ....
小さな女の子が俺に
だじゃもん ちょうだいっていう
だじゃもん ほしいっていう
だじゃもん ねえ だじゃもん
だじゃもん ちょうだい
だじゃもん ほしい
そういわれ ....
弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れ ....
しかしまあどうだ今朝のこの赤ん坊っぷりは
何にも考えてない
何にも考えてないで
シャウトしてるぜ
オパポー
オパポー
おぱぽう
おはようじゃなくて
おぱぽうだ
....
?.
朝風呂が好きだった
その朝もおまえは
俺たちの小さな家の小さな風呂に
窮屈そうに仰向けになって
顔を沈めて
水の中で
目は見開いて
くちびるが
SEE YOU って
....
昨日のこと。
夕暮れる空をくじらは泳いで
大きなくじらのそばには
半分ほどの大きさのくじらがいます。
小さなくじらは泳ぐのが苦手なので
大きなくじらよりも先に
尾が橙色に染まってしまいます ....
駅前で兄を探していたら
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので ....
パン屋で晩ごはんに
パンを買ってたらさ
雨降ってきて
俺のほかにお客さん三人
雨宿りだ
このパン屋は引っ越してからよく来るようになった
おいしいし
お姉さんがきれいだ ....
タイも
ヒラメも
マグロも
みんないました
白いお皿の上で
おそろいのお刺身でした
海みたい
子が言いました
まだ海を
見たことのない子でした
まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる
こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
交差点の向こう側で
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬 ....
今日は仕事ないから
俺たち遅くまで寝てたっていい
でも空がほら
あんまり青いから
外に出ようぜ
競争だぜ
階段駆け下りて
飼い犬に ....
象の飼育係をやめて
バスの運転手になった
象の目は悲しげだ
と言うけれど
乗り降りする人たちも
体のどこか一部が悲しげだった
遠くに行きたかったのだろうか
数頭の象が停留所にいた
....
1 2 3 4 5 6