君と
ばいばいって
約束もなしに
手を振るとき
誰かが
波打ち際で砂を踏むのです
僕の胸の奥の
小さな
渚で
知らないふりをして
君はきっと自分の魅力に気付いてる
もう十分すぎるほど
輝いているのに
もっと もっと と
高みを目指してかけてゆく君
光よりも早く
かけてゆく君
その指先がこの涙をぬぐうことは
もうないのだ、と
うすうすは わかっていたよ
その手がこの手を握ることは
もうないのだ、と
うすうすは 気づいてはいたよ
その腕がこの体を抱 ....
君の名前を入れてみて
検索ボタンを押したなら
数千件の検索結果
どれも君じゃないけれど
思い出したくないって
何をしてようが関係ないって
何度嘯いてみたとしても
何度言い放ってみたと ....
一日に何度も何度も
「わたしのこと好き?」
って聞いちゃうのは
あなたがわたしのことを好きだって
信じているから
だから
しつこいって怒らないでね
もしもあなたの気持ちが
変わるような ....
愛すべき空に別れを告げ
僕は海へと息を潜める
静かに暗い闇の中で
空の光源を見つめ
帰れないんだと
僕は思い出し
冷たい水を
切り裂き
泳いだ
冬の
事
あたしにも確固たる夢がほしい
誰に何を言われても揺るがない、
あたしだけの
夢
あたしにも確固たる思いがほしい
誰がどう言おうと、
あたしはあなたの側にいたい
といえる
あたしだけ ....
たとえば
あなた宛てにメールを出して
それが
行方不明にならない
しあわせ
届ける
ことはできるんだ
つながってはいなくても
時折
いたずらな風 ....
不意打ちに
「がんばっているかい」と聞かれて
戸惑ったわたし
「うん。」とだけ答えて、
わたしは嘘をついた
話題をかえて逃げようとした
そのことにきみが気づかなくても
塑性変形
とは
もとの形
が損なわれた状態をいいます
バターを塗って
パンをかじる
牛乳を飲み干す
あなたはよく
わたしを褒めてくれた
許容応力
とは
塑性変形
が起こらな ....
薄暗い軒先で
植えてもいないのに咲いている
高貴とは程遠い
紫の嫌な匂いを放つ花を
じっと 見ていた
「毒に彩られた花やね。」と教えてくれた
少女の丸くかがんだ背中から
....
貴方の瞳があまりにも
澄んだ色をしているから
向かいあうと俯いてしまって
貴方の爪先ばかりを見ている
眩しいと感じるものが苦手で
目を逸らしてしまうのは
自分の穢 ....
インターホンが壊れてしまって
不在票ばかり、溜まってゆく
ドアをノックする手を
誰も持たない
再配達を
今日は頼んだから、
夕暮れにつづく時刻に
言い訳を抱えて
ドアの内側に寄 ....
いくつも詩を読んでくうちに
詩なんてくそくらえと思う
飾っちゃってさ
君をもっと知るために君の陰部を見せてくれないか
君は呆れ身構えるが
そうしないと僕には君が見えないんだ
....
俺はあの女が嫌いだった
あの女も俺が嫌いだった
あの女は俺のダチが愛した奴だった
【手向け】−骨−
ダチが死んだ
唖然とした
初めての喪服は
急すぎて買う ....
涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた
雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている
物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた
栞を
....
家を飛び出たとき
こっそり タッパーに入れて
持ってきたの
毎日手塩にかけて掻き混ぜて
泪も汗もいい塩梅に混ざり合い
父と喧嘩をしても必ず
母は
台所でぶつぶつ罵りながら
一心不乱 ....