君があの子の話をする度に
僕の胸の奥底に一輪
黄色い薔薇が咲く
全て君に
摘み取って欲しいと
思うけれど
云える筈もない
咲き乱れる
薔薇の香りで
噎せ返りそうだ
今宵も
....
夕と闇の間で
海蛍の群れに導かれ
滑空する機体の重さ
地面へと伝わる
伝わる振動は
両の耳鳴りを増幅する
アンプのように
硝子の中で火花を散らす
長い鉄塔につい ....
僕の飼い猫は
愛想がない
ただ寝て
ただ食べて
ただ走り回って
僕より
偉いのかもしれない
僕より
かしこいのかもしれない
僕みたいに
人に
....
小さな箱と中ぐらいの箱と大きな箱
僕は大きな箱を開けた
「あなたのお願い一つ叶えてあげますわ」
真っ青な目をした黒猫が言った
吸っていた煙草をもみ消しながら空を見上げた
....
もう一度、始まるのです
そう言って眠り落ちる人
危なくはないですか
休みたくは、ないですか
瞼の裏側の静かな暗闇で
一人で旅に出るそうです
朝までには戻るから、と
その人は
積 ....
「涙の色は何色?」
と君が突然訊いたから
「透明なアオかな」
と僕は答えたけれど
「きっと濁ってる」
と言って君は俯いた
あの時
手を伸ばし遅れて
....
勇気を出して走ってみた
転んだ
勇気を出して喋ってみた
舌を噛んだ
勇気を出して微笑んでみた
「何にらんでんの?」って言われた
勇気なんて要らないと思った
だ ....
少しだけ、冷たい風が吹いてきたのは
とても遠い場所からだった
人はいなくなる、ということが出来るらしい
世界はいつも通りに明るくて
僕らは同じように電車に乗り込む
乗り継ぎ駅で世界が追い ....
「本を読みなさい」
その人はそう言って
夕暮れて図書館が閉まるまで
わたしの隣で静かに本を読んでいた
映画を観なさい
音楽を聴き ....
2億5千万個の眼球の海へ
君はボートを漕ぎ出す
オールで眼球を叩く度に
そのひとつひとつが
グリグリ音を立て
歪んだ眼差しで君を見つめる
見つめる眼球に映るのは
どこまでも青い空 ....
どうしたら此処から翔べるのか
そればかり考えていて
けっきょく何処にも翔べなかった
次々と羽化する蝶たちを
横目で見ながら
葉陰に守られて留まって
安穏
すがるような言葉 ....
ところで
夕暮れはもう間近に迫り
みんな精一杯に迷っているので
その足元を照らす明かりも
その足で踏みしめているものも
記憶は近さも見せないくらいに
空で燻るものだから
こうやって今日も ....