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蔓薔薇が石塔に深く絡まっていて
霧に浮かびあがり声をもらしている
清らかな
石塔には
老人の深遠な目でこう刻まれていた
?在る{ルビ可=べ}し?
霊園の霧は
空中に充足した空虚な ....
冷たい北風に煽られ
凍える霙に打たれても
白樫の木は黙して耐え抜く
容赦ない吹雪の最中
総てを失う事の恐ろしさに
怯えてはならない
大地深く張り巡らした根の先より
明日への滋養を ....
軋む
一歩ごと
軋む
心ごと
逃げ込んだ森は
甘美な瀞が満ち
わたしは愛しい景色を
凍る爪先で犯してゆく
痛む
一言ごと
傷む
一夜ごと
明日を司る月が
昨日 ....
このパンフルートの音色で
君の過去を知る事が出来るとしても
僕は知りたくないし
このパンフルートの音色で
ふたりの未来を覗く事が出来るとしても
僕は覗きたくないよ
昨夜からの冷たい ....
あやつられる
わたしの背中に糸が生えている
よく見ると
足からも
腕からも
糸が生えていて
どうにかすると口がパクパクする
声だけが違う場所にあって
伝えることができない
こ ....
夜に打ちひしがれた
インディオたちは
せっせと
生贄を殺す
太陽の活力は
人間の心臓と血液であるとの
*ウィツィロポチトリの信仰は
なかなか揺るがない
われら
翼有る蛇の化身 ....
地の神様は朝霧と共に山を駆け昇る
風の神様は雲を引き連れて空を渡り切る
日の神様は炎を揺らしながら天を焦がす
日と月を追いかけて
神々が睦月に旅を始める
冬には雪をしんしん降 ....
花瓶のなか
ぎっしり 眠る
胎児の へその
緒のさきに
咲いている
むかいあった
瞳の奥も雪が降る
水彩画になる
そして
ことばは
すべて
呪文
だから
口から
音になって
発せられると同時に
指先から
文字になって
記されると同時に
それは
すべて
呪いになる
....
あなたの人生は箱のようなもの
箱の中で生まれて
箱の中で死んでいく
わたしは気まぐれで
あなたの箱の中に
おもちゃを入れていく
「愛」だとか「真実」だとか
あ ....
インターホンが壊れてしまって
不在票ばかり、溜まってゆく
ドアをノックする手を
誰も持たない
再配達を
今日は頼んだから、
夕暮れにつづく時刻に
言い訳を抱えて
ドアの内側に寄 ....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
久しぶりに行った
動物園
檻のなかでまどろむライオンが
君に似ていた
こんなところにさえ
まだ君は現れるのか
蒼白の薄明
永遠に処女の領域
素数のみで刻まれた暗号
純粋遊離線
冷たい蜃気楼
置き去られた天象儀
倦んだ庭園
途絶えがちなピアノの音
未分化な恐怖を秘めた深淵 ....
カタン カタン
二度と開かない
扉が閉まり
カタン カタン
と音がして
隣の男は人形に
カタン カタン
手首を垂れて
立ってた女も人形に
カタン カタン
カタン カ ....
ピアノの鍵盤はじける
もどらぬ深海の底に
画用紙をはみだした黒と
混じり
内出血は生まれる
願いをこめた文字に
紙やすりをかける
....
なんだかとっても寒いので
財布の中をのぞいたら
やっぱり寒い
ころりと100円玉
音をたてることもなく居て
街角の自動販売機
120円という表示が淋しい
一昔前なら缶コーヒー ....
ここは誰かの土地だから
入ってはダメよ
ほら2センチはみ出して
男の子がひとさし指を削がれたよ
にこにこ笑いながら
誘うおじいさんとおばあさん
ダメよ入ったら
ほらまたはみ出して
きれ ....
眠りは当局から支給される
月にいちど注文をすることになっている
私は主に スタンダードな「白の眠り」を注文する
けれどいつもおなじ眠りというのも
あじけない気がするので
やはりスタンダードな ....
吹かれるように手を振る
ススキの群れの中に
枯れて埋もれていきたいと
いや、そんな最期のために
生きていきたいのです
西風が波を走らせて
遠泳の息継ぎのように
{ルビ水面=みなも ....
鹿になりたや
そして逃げたや
小さな紅葉の降る頃に
紅いその葉をなお紅く
鹿になりたや
そして逢いたや
いつかの昔にかいまみた
綺麗なひとみの山のひと
鹿になりたや
そして越 ....
君は寝た振りが得意
わかっていてもウッカリ騙され
今朝もゴミ捨ては僕の役目
君は大人だから
分をわきまえているよね
僕はと言えば歳はくっても
燃える恋と燃えない恋の分別さえ
未だ ....
{引用=音も無く 少し時雨れた 夕間暮れ
秋桜 ゆらり
かしいで ゆらり
涙の雫を 集めます
波間の 初音に 合わせ逢い
天女の羽衣 筋雲と
見 ....
{引用=
自分が自分であることに
儚い戸惑いを隠せないのなら
あなたは泣いていい
存分に泣け
其処には
散々に舞う桜の花弁のように泣く理由が在る
自分が自分であることに
未来を確立 ....
どうしても肌寒い蟋蟀質の摩擦によって
むしろ冷却されるわたしたちは概ね
低温のまま一生を終える腹部だ
脆い部分からアルコール消毒されてゆき
ついには殺虫されてしいんとす ....
雪融けのせせらぎが
草木に沁み込む速さで伝わる春
ひらいた花のはなびらが
舞い散る中で見た空の
青さを呼吸するような夏を過ぎ
虫の声に名残匂わす
涼しさにはほんのりと憂いの秋が
....
空いている電車に乗り 席に座る
駅に停まり 駅を通過し
また駅を通過し 駅に停まり
車内は次第に混んでくるが
他の席はどんどん埋まってゆくが
私の隣はいつまでも空いたまま
誰も座ろうとはし ....
わたしたち
しんだひとのこと
わすれちゃった
おぼえていても
きえてしまうの
だからもうゆめもみないし
うまれてきたものだって
ふくざつなの
あやしいおしえはないけど
かわい ....
人の嘘で
鳥は空を飛ぶ
鳥の嘘で
ドアは人を
閉じ込める
ドアの中で
人は鳥を
飛ばし続ける
+
いつも
三人なのに
いつも
八等分
してしまう
+
....
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