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淡い太陽が
黒い淵にゆっくりと沈みゆく

街は刻一刻記号へと分解されながら
地平の方へ徒歩の速度で遠ざかる

立ち尽くしていると
不意に頭上から降りしきるのは
清らかな絶望
清らかな ....
君の既視感を舞っているのは
紙製の蝶だよ
いちめんのなのはな と君は呟くけれど
此処はうち棄てられて久しい館の中庭
君が坐っているのは朽ちかけたベンチだよ
とうの昔に涸れた噴水の傍の

 ....
そうです
世界から隠れて
潜って居られる場所が要るのです

まじりけない初期衝動とだけ
ひたすらに戯れて居られる
そんなパラダイスを
とめどなく夢見てしまいます

子どもじみているの ....
声を聴かせて
おのずから妙なる旋律を宿すその声を

流れがうまれる
その声が意識に触れた場所から
涼やかにゆるやかに
深くたゆたう流れがうまれる
私はその流れに
身をゆだね
漂う
 ....
偽造された朝を押しつけられても
注文どおりの覚醒など出来よう筈もなく
自らを小さく蝕むことで
存在可能な時空をどうにかつなぎとめ
意識はただ浅く笑い
深く滅んでゆく



 ....
眠りは当局から支給される
月にいちど注文をすることになっている
私は主に スタンダードな「白の眠り」を注文する
けれどいつもおなじ眠りというのも
あじけない気がするので
やはりスタンダードな ....
プラットフォームで 日陰のベンチに坐り
僕は詩を書いていた
いいや君への手紙だったのかもしれない

白い午後
静かな校庭のこと
いたいけな青空のこと

いいやそんなことじゃない
間奏 ....
私の中に
午前を飼っている
白い舟がいくつか
遠く漂う午前だ
華奢な草の葉がためらいがちに揺れ
吹く風のなかに
覚束なげな青さが
消えない午前だ

もう長いこと飼っている
だからも ....
燭台にともされたろうそくの炎が
一点の曇りもない銀のナイフとフォークに
照り映えています
用意された皿はただ一枚
白い無垢な皿です
さあ時間になりました
採れたての ....
あたりじゅうすべてが蜃気楼と化してしまいそうな
夏の午後
裾の長い木綿の部屋着に包まれ
籐の長椅子で微睡む一個の
流線型の生命体
窓からのゆるい風が
肌にときおり触れて過ぎる
ほの甘くあ ....
かなしい夏 ?


夏の首すじが
眩しい

何もすることのない午後

空気さえ発光している

しなやかな夏のゆびさきが
飽きもせずあやとりしてる

夏はあの木立のてっぺんあた ....
予約していたのは
ありふれた ごくごく簡素なホテル
チェックインし 渡された鍵は1547号
けれど15階の何処にも
47号室は見当たらず

フロントにとって返して尋ねると
ああ 失礼しま ....
誰もいなくなったプラネタリウムの
暗いドームの下
まるで其処が聖堂ででもあるかのように
ひざまづいて祈る影がある

何を何故祈るのか
誰にも知られることなく
ひとりきり目を閉じて
長い ....
夏を告げる鐘が鳴ると
少年たちの中で 天国が走り出す
眠りの中心にたたずむ
黒いしずかな球
その球を無垢な白い身体で抱きしめて
いつまでも眠っているのは誰だろう
六月の
曖昧な空の下
白くたたずむ部屋
横たわる私の身体から
刻一刻と
鼓動がこぼれ落ちる

けだるい指で
クロニクルのページを繰る
季節は私には
いつも晩くやってくる

忘却 ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で

蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
窓辺を漂っていたスウィートピーたちは
薄れて消えてしまったよ
白いのもピンクのも薄紫のも
いつか行こうなんて云っていた
銀の門のある空中果樹園も
いつのまにかどこへやら消え失せてしまったよ
 ....
僕らは 一列に並んで
少しずつ 進んでゆく
かぎりなく長く思える柱廊を
誰も 一言も発さないまま

僕らは 白い衣を着て
白い布で覆われた銀の皿を両手に捧げ
少しずつ 進んでゆく

 ....
あたしの中で
水が{ルビ捩=よじ}れる
還るべき水脈を何処かに探してのことなのか
それとも単に気まぐれなのかはわからないが
あたしの中で
時折ふいに
水が捩れる
たとえばそれは
安易な ....
いつまでもそうやって
ガラスの風船で遊んでおいで
僕はもう青い月を抱いて
眠ってしまうから
夜がやってきて空気の色が
こわくなってきてもずっとそこでそうやって
遊んでおいで

箱庭のよ ....
私の意識の
極北に立つひとがいる

彼はいつも黒い服を纏い
時にその服を髪を風にたなびかせ
時に無風のなかに
その立ち姿の輪郭をくっきりと映し出し

時に彼は流れる水のような
ゆらめ ....

錯乱
咲き乱れ
    風に舞う舞う
    花吹雪
狂おしく舞え
狂おしく散れ
    桜
    錯乱
    咲き乱れ
        闇まで染めよ
        夜 ....
私という虚ろよ

未完成という名の陶酔を

響くように生み出しつづける

青白い坩堝と化すがいい
桃いろをうつす銀 青をうつす銀
たちどころにいりまじり 夢心地

    息づく闇の何処かで
    黒髪の 解かれる気配

ほのかに 立ちまようのは
知らない花の香と
やわらかな水の ....
病院の長い待合い廊下に坐って
考えている
私の気はたしかなのかと
時々 呼び出しに応じて
いくつかの個室のどれかへと
人が 入ってゆく
そしてやがてまた出てくる
入ったまま
出てこない ....
千波 一也さんの塔野夏子さんおすすめリスト(56)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
見_者- 塔野夏子自由詩7*06-2-25
架空の春- 塔野夏子自由詩15*06-2-7
Hide-and-Seek- 塔野夏子自由詩11*06-1-13
声を聴かせて- 塔野夏子自由詩9*05-12-29
- 塔野夏子自由詩11*05-11-17
眠りのシステム- 塔野夏子自由詩35*05-10-5
間奏曲- 塔野夏子自由詩12*05-9-19
午前を飼う- 塔野夏子自由詩26*05-9-3
晩_餐- 塔野夏子自由詩7*05-8-27
午_睡- 塔野夏子自由詩18*05-8-5
かなしい夏- 塔野夏子自由詩20*05-7-31
隠れ処ホテル- 塔野夏子自由詩4*05-7-11
沈黙の星座- 塔野夏子自由詩6*05-7-7
条件反射- 塔野夏子自由詩9*05-6-29
眠りの核- 塔野夏子自由詩14*05-6-11
午後の舟- 塔野夏子自由詩12*05-6-7
夏について- 塔野夏子自由詩27*05-5-23
灰の月- 塔野夏子自由詩11*05-5-17
行_列- 塔野夏子自由詩6*05-5-15
水が捩れる- 塔野夏子自由詩5*05-5-5
ガラスの風船- 塔野夏子自由詩4*05-4-25
極北に立つひと- 塔野夏子自由詩7*05-4-17
桜・錯乱- 塔野夏子自由詩4*05-4-5
錬銀術- 塔野夏子自由詩3*05-4-1
春夜彷徨- 塔野夏子自由詩8*05-3-11
外_来- 塔野夏子自由詩11*05-3-5

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