夏の
体の
着衣のまわりくどさを
一枚、一枚、可愛がるように
指でしか剥ぎ取れぬ熱を
一枚ずつ剥ぎ取ってきました
あ、
そういえば、
非常階 ....
雨の中
セカンドバックに
滴がポタリ
そして吸い込む
郵便屋さんの
青いシャツが
水玉模様の痕
緊張している
ナスタチウムが赤と黄色で
咲いている。
この花エディブルフラワ ....
早朝の
夜が やっと明け始めるころ
眠りから覚めた
鳥たちが挨拶を交わし始めるころ
色白の
肌が青白く影を帯び始めるころ
私は、
私自身の気配にかすかな境界を感じ
縁側でぽつねんと ....
夕焼けに
うす紫に染まった
ほほにひとすじ
熱いものが流れて
小さな手のひらで顔をおおう
影が淡く
暗い血潮へ暮れてゆき
無器用な翼の
色調不明する鳴き声が、
空ろに響く
指の ....
名残の冬を集めて
風がつくった
春待ち味の
ロールケーキはいかが?
うすい鎖骨の層をすべり落ちるひとつの円く欠けた球体
それが、
あら
早いのね
雲はしびれて そろそろ雨の匂い
届かなかったのね
手を伸ばしても 反射する灰色の空気を泳ぐ
稚魚の透けた ....
ごらん、
イルカが橋を飛び越えて行くよ。
夏が欠けていきます
溌剌とした空の滴りを
濃厚な季節が吸い尽し
あとはさらさらと乾きゆくだけです
さっきりと出た月の高さも
いつの間にか伸びて
変わりゆく時は
青葉さえ少しずつ朽 ....
不覚にも
こころときめき
きみの一挙手一投足に
いちいち振り向くこの僕
恋なんぞ
有り余っているのに
何故またこんな
浮かばれぬ思いを
....
紅さし指で
この唇をなぞっておくれ
宵をにぎわす祭りの夜に
提灯ゆらり
光はたぶんに
正しいものだけ捕まえる
ほら
燃える可憐な蛾がひとつ
短命ながらも風情をもって ....
もうすぐ
爆撃機のように
八月がやって来る
さあ灯りを消して
ふたりで
ベッドに隠れよう
赤子の手をひねるように
詩をひねる
エディタを操る
手の速さは
詩作の早さ
私 毎日だってできちゃう
十月十日は昔の話
毎夜できた 赤子たち
列をなして画面に向えば
出来ちゃ ....
心惹かれた彼がいた。
止まらない程、高ぶった夜、
私は違う人と居た。
翌朝起きると窓は雨。
泣かせちゃったね、私は言った。
そして心は飛んで行って、彼の事なんて忘れて走っ ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
クジを引いて、中をみたとき消えるもの
花が咲いて、そのとき消えるもの
求めて求めてやっと辿り着いて、消えるもの
氷でできたグラスが消える
名のない匂いの記憶が消える
人には言えない重 ....
無数のソーダ水の泡が
ソーダ水から夏へ飛び立つ
そのときの一頻りの冷たい破裂音を
私たちは聞きます
ね、
それは、模範的な別れの際だと
ほら、そのあとに残るぼんやりとし ....
手のひらにそいつをのせたら
無言でフレンチキス
この行為の意味は
文字通り"カエルの面に小便"になる
だから
愛撫よりも愛情をこめて
じっと見つめるのがいい
....
みんな投げやりだってこと
私たちは
体感したいのだ
本能には抗えないってこと
おなじ
罪人になりたいんだ
しかたないよねって
あなたの言うままに
ハンドルを切る
国道は
....
{引用=
深夜、
線路を枕に
寝ました
駅のホームには
過ぎ去った
時間が、
停車して
いました
星が
綺麗でした
遠くから
君の声が
聞こえ ....
ホトケさんは?
これだ。
…、悪いが、無様だな。死因は?
なんとも。外傷は見当たらん。
こりゃあ…。
なんだ
ガスか、毒じゃないか?
あり得るな。今、検死官が当たってる。
絶命 ....
ギンギンに陽が照りつける中
えんえんと続く海岸線の途中で
すやすやと眠って、ふと起きると
てくてくと翼を傷めたカモメがやってきて
そわそわとして寂しそうで
カラカラに喉が ....
暑いから扇風機を背後に
パソコンで作業をし
中風
そのうち目が乾いてきて
電源を切る
一時間ほどの作業の末に
また暑くなり
振り返ると扇風機は
あっちを向いて止まっている
そんなにわ ....
夏のとおい空に
誰もいない部屋あって
積乱雲の斜面に
眩しい青春が引っかかっている
ぼくは懐かしく見つめたりしてる
2Hの鉛筆で描いた
チーターが
風の中を奔っていくとき
遡れ ....