すべてのおすすめ
君のだみ声は大海原のうねり
君のいらっしゃいは忘却の号令
ねじり鉢巻
生の残酷さと尊さを知りながらも
君の口は頑なに語ることを拒み続ける
いま目の前には
かつて自由に泳ぎまわっていたも ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
人間は
ただあてもなく{ルビ彷徨=さまよ}っているだけなのかもしれない
調度
あてもなく流される植物の種子のように
今日、いいことをした
今日、彼氏(彼女)ができた
今日、何々をし ....
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた
それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
....
私の獏は夢を食べない
捨て獏だったからかしら
母乳で育たなかったからかしら
理由はわからないのだけど
とにかく夢をさし出しても
ふんっと顔を背けてしまうから
長い長い格闘の結果
....
眼を閉じると古代の森が広がる
見たこともないはずの
それらが
私の中に確かに在る
植物は草食恐竜に食べられ
草食恐竜は肉食恐竜に食べられ
そんな彼らはみな土に還り
そうやって
....
− 素子へ、特別版 −
子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言った ....
気狂いに刃物
猿に電車
ガキにプール
妻に避妊具
配達員に写メール
青菜に塩
梅干に鰻
童貞にこんにゃく
並木に青虫
女優にバナナ
牛車にロケット
鈍器に着け火
電車曲がる軋む ....
さかさまつげ と診断され
父に手をつないでもらって
眼科に通って いた頃
診察してくださった先生は
遠くをみつめなさい と言った
遠くの山の緑 遠くの景色を
とても 眼にいいか ....
音を形容する言葉が足りない と君は 喉をならしてビールを飲みながら 言う
君の発する言葉 そのもの が音でしかないから 仕方ない
めがねのつるをつまんでふりまわしたら 机のかどに当たって レンズが ....
夕闇に
かみひこうき
投げて
どこまで
飛んでいって
くれるのか
と
思い
を
馳せる
季節は春めいても
頬を撫でる風は
まだ
冷たい
ふと
隣に居な ....
今朝すれちがった女の子のビニール傘の
持ち手の色は雨の街に浮き立つ人工ピンク
沈むことのない色をのせてまわる世界で
雨にも負けズ人類は渇く
ピンクというのはなーんか迷っている色
赤と白の ....
馬鹿ターボ
全開で帰宅する俺
髭をたくわえ少しワイルドな俺に
おかえり、を言う娘は少しワイルドな俺に少し慣れ
一番星が出始めた空の下で縄跳びの練習中
綺麗でしょ、綺麗でしょ
いや、 ....
覚えてる
迷ったときの指先のちょっとした仕草とか
暑い室内でむっと漂ってきた身体の匂いとか
正午、君がサイレンの口真似をすると
僕らは作業を中断して
いつも小さな昼食をとった
今日 ....
娘は将来アイス屋になりたいと言う
好物のアイスを好きなだけ食べられるから
ではなくて
沢山の人を幸せにしたいからだそうだ
いっしょにお風呂に入ると必ずその話題になって
バニラ ....
夕暮れ時のトイレで俺は
花子を殴る
ドリフの大爆笑のオープニングテーマを高らかに歌い
俺は花子を殴り続ける
だって、お化けだぜえ、恐怖だぜえ、恐いんだぜえ
俺は花子を殴る
花子は微 ....
交差点で白いす・うどんに呪いをかけている
たくさんのうどん屋の店主
ただひたすらに紙を排出する事務機器の前
笑いすぎて釣り合いがとれなくなった僕の右と左側は
吸い込まれていく 具の ....
手をひらき
髪の葉に触れる
手をひらき
道の葉に触れる
手をひらき
手をひらき
離れゆく光の手に触れる
巣にかかった糸くずを
蜘蛛がじっと見つめている
....
その皇子
東へ進軍し
その剣
雲を斬り
丘を割き
沼を埋め
戦に次ぐ戦
謀殺に次ぐ謀殺
返り血の乾く間も無く
川にかかれば妻を売って渡り
海峡にかかれば妻を売って船を買い
船を打 ....
おえべっさんの縁日には、
なんでもいいから、
ちゃんと尾っぽと頭のある魚をそなえるンだよ。
シラスでもいいかって?
シラスじゃあんまりだ。
せめてジンダァくらいにしとけ。
猫マタギっち ....
14歳の冬
生理が1ヶ月近く
止まらなかったことがあった
わたしは学校で倒れ
保健室に運ばれた
どうしたのと先生に
やさしく聞かれても
上手く話せない
自分でもわからない
母親に病院 ....
小雨の降る日
林檎もぎは雨合羽を着る
雨水が肌に流れてくると
体が冷える
袖口と 首を
丁寧にタオルでふさぐ
滴に濡れた林檎は
しんとして曇り
ひとつ ひとつ 手作 ....
あのひとの黒髪をみたことがない
彼女は髪の長いひと
はじめて手紙をくれたひと
姪っ子にリンゴ飴を買ってきてねと頼まれて
祭りの帰りに
「ちょっと待っててください」
と闇の中へと消えたひ ....
「メリーゴーラウンド」 11
声
何度も何度も
くりかえし読んだ童話がある
街はずれの丘のてっぺんに
大きな観覧車があって
雨の日も風の日も ....
雌は
ものうげにそれを眺め
海のリズムそのままに
雄に近づき
雄は
引きつけられ
口を大きく開けて
雌に
すり寄り
いそいそと
せかせかと
自慢の家まで案内し
....
湾岸道路を東京方面へ
助手席にへたり込むわたしと
渋滞に巻き込まれ不機嫌なあなたと
つまんないラジオ聞きながら
めんどくさいから話しかけない
または
全然関係ないことばかり言う
どう ....
壊れてしまった
ふとんばさみが
とりのような
弧を描いている。
夏のベランダ
せっかく東京に来たのだから
上野駅に行ってみた。
ホームレスの仲間に入れてもらおうと
ダンボール箱を持って。
とにかく東京に来たのだから
山谷に入ってみた。
リュックを担いで、ジョギン ....
にゃんでか知らにゃいけど
「にゃににゅにぇにょ」
が言えにゃくて、全部
「にゃににゅにぇにょ」
ににゃる
日常生活に支障はにゃいもにょにょ
こにょままでは
僕が僕でなくなってしまう
....
昨日見た夢の中で
銀世界の夜
雪だるま達が
無言の笑い声を響かせ
雪合戦をしていた
目覚めたベッドから
窓を開けると
おととい冬の子供等が
煙の吐息昇らせて
きゃっきゃっ とつく ....
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