プランターに大根が育つ
セッセと蟻のように虫を爪弾きした成果だ
その蟻も我が物顔でプランターに通う
家に入れば味噌汁が待っている
買ってきた大根の味噌汁
母が汗水たらして買っ ....
歌詞をわすれた歌手が
案山子になって
仮死してる
観客は稲穂になって
空をからすが飛んでいる
沈む夕日に
染まれずに浮かぶ
くろい雲がひとつある
産声をあげて
案 ....
梅雨を横切る
あをいそら
濡れた地面を蒼く染め
少女が被った麦藁帽子
雨をなみなみ閉じ込めた
水玉模様リボンを掛けて
口ずさむのは夏の風
海面アスファルト
踊る靴音五月 ....
蝉の抜け殻を
村で一番集めていた村長が死んだ
彼の亡骸は
蝉の抜け殻に埋められるようにして
荼毘に付された
それがみんな燃え終わる前に
新しい村長がやって来た
新しい村長は口ひげを生 ....
僕は夜の海に船出する
たった一人で
目的地はあるものの
たどり着けるかどうか
わからない
それでも
船を漕ぐ
今までの人生に
いったん
サヨナラを告げて来た
僕 ....
雨に打たれて
溶けて私は水になり
土にしみ込み
消えてしまえたら
雨上がりの強い日差しに
裁かれて
細かな気体になり
空へと舞い上がれたなら
どんなに楽であり
そ ....
会議をサボッて
帰りに寄った
夜の教習所
開いた
校舎の窓
路上運転までの
待ち時間に見下ろす
校内コースを
のろのろ走る
初心者運転者達
あれは日中の僕だ ....
ふんわりやさしく控えめだけど、何か芯の強さが伝わってくる
どこかお茶目で どこか大胆で どこかたくましくて
つらい気持ちを乗り越えてきた 魂の強さ
あなたの恋は実ったのでしょうか?せつなさは? ....
みんなはわかっているのに
あたしだけがわからないまま
「みんなと違う」
そう認めるのが嫌で
みんなと違うからできないと思われるのが嫌で
でもあたしにはわからないことだらけ
みん ....
雨上がり
屈折した気持ちで見上げた空に
描かれた虹
一つ悲しみを乗り越えるとき
失くしてしまうものがあるとしたら
それはある種の光なのかもしれません
水分を透過して
感情の成分を ....
松林のにおい
やわらかに透過する光
あなたのその目じりのしわが好きだった
波風がうばっていく言葉に
その想いものせて
わたしたちはあめふらし
ふいに雨音が恋しくなる
傘の下で肩を並べ ....
思い通りにならぬ現実に
いつしか胸に開いた空洞を
貫く剣を、我は磨かん
人の傷つく剣でなく
只、自らの弱さのみを斬る
光の剣を、我は磨かん
辿りつくただひとつの島を探して
泳いでいた日々があった
そんな歌があった
{引用=
見知らぬ人よ
あなたは何処にいるのですか
めぐりあいを信じていますか}
探し続けていま ....
感じるのは
波のように不安定な今と
風のように不確かな未来
ただそれだけ
過去は火にかけて葬り去った
跡形もなく灰になった
あんなにも綺麗に燃え上がったのに
土にすがり付いて ....
アバウト
チャランポラン
ボケー
笑ってごまかす。
傷つきたくない
プライド投げ捨てて
違った視線で
人を笑わせる
けっして怒らず
けっして泣かず
けっして悲しまず
いつ ....
誰もいない教室で
机の落書きを消す
たいていが内容の無いもので
消すのにためらうこともないのだが
ふと窓をみると
結露したときに指で書いたのだろう
一つの文字が見えた
「海」 ....
泥になって歩く
海の方から風が吹くと
私じしんである 泥
がかわいてしまいそうになる
おまけに潮のにおいまで
はりついてしまいそうになる
この湾岸沿いの道は 淋しさ
そのものが細長く伸び ....
夜行列車の車窓。
夜明け前の雪国。
宙に舞う風雪。
山々の裏に潜む朝陽に
うっすらと浮かび上がる
ましろい雪原。
( {ルビ転寝=うたたね}の合間
( 車窓の外に離れて浮 ....
せつないからため息をつくのだろうか
ため息をつくからせつなくなるのだろうか
その両方だと彼は言う
あの人に恋をしているのだろうか
恋がしたいだけなのだろうか
その両方だと彼女は言 ....
どこまで行くかな。
どこに行きたい?
外してあげようか。
僕たちみたいに。
ひとりの人間の哀しみに
わたしは立ち入ることができない
十日前に夫を亡くした同僚の
目の前を覆う暗闇に
指一本たりとも
わたしはふれることができない
( 背後から追い立て ....
目覚めると
駅のホームの端に立つ街灯の下で
粉雪はさらさら吹雪いておりました
次の駅の街灯の下で
雪は舞い踊っているようでした
その次の駅の街灯の下で
雪はまばらに降っ ....
ほしいもの
それはお金でもなく
名誉なんかでもない
ほんの小さな手だけでいい
温かみのある誰かの手
ありがとうと
軽く振ってくれる手
がんばってと
応援してくれる手
大丈夫だよと ....
もしも空がなかったら
空よりも広い
夢を抱くことができただろうか
静かに流れている雲は
どこから来て
どこへ向かうのだろう
もしも星がなかったら
星よりも遠い
想いを馳せることがで ....
仄暗い公園のベンチで
みかんの皮を食べろと言われている老人が
喜んでと言って頬張っていたのは新聞紙
これでいいですかとにこにこしながら
鳩の目で少年たちを睨みつける
ぽおっぽっぽっぽ ぽ ....
ドラッグは要らない
タバコとビールで十分だよ
セックスもほどほどでいい
だけどさ
ロックなんだ
誰が何といおうと
これはロックだ
おれのロックだ
たとえありふれた言葉でも
どんなに使 ....
唐突に ざわめき始めた夜のいとまに手を伸ばす
鍵括弧と 鍵括弧の中に押し込めてしまう
かなしみや さみしさを
あなたは知らず
いいえ 知ろうともせず
いいえ 知ることもなく
恨むくらいなら ....
指先でつまんで
そのあとどうするの?
まさか捨てたりしないよね
脇役は最後まで残っても
結局脇役で
だけどその場面を彩るのには必要なんだ
パセリ
緑色のアクセント
僕が ....
あなたの子供は駈けていきました
あなたの急を知らせに
道の向こうの
そのまた向こうまで
私が知らない間に
他の多くの大人たちが
それぞれの世界の片隅で
何も変えられないでいる間に
あな ....
君の声がキコエルから
声を全部スクッテあげる
ヨンデいるわけじゃない
黙々と声をナラシテいる
君の声がキコエルから
声を押し殺してあげる
ナイテいるわけじゃない
....
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