愛はクジラと同じで
水をやらないと枯れてしまう
そもそも
愛は大きいほどもろいのだ
クジラと同じで
そのくせ
小さなプランクトンを
一心に集めている
それが
思い出だったりことばだっ ....
1.
かみさまはいるよ、
って
教えてくれた人は
もうすぐ死んでゆく人だったけど
それは黙っておいた
だって、あいしてるんだ
2.
きのう、かみさまを見か ....
大切な物は
消えるんだと思ってた
大好きな物は
誰かにあげるもの
大好きだった
母の手は妹に
大好きだった
父の膝の上は弟に
だから
好きにならない
だから
....
あの頃、君に告げられなかったことを今
***
ねぇ、君
冷やし中華を誰よりも早く始めたいの、とはりきる君の姿が僕は好きだったんだ
ねぇ、君
扇風機の首フリに合わ ....
入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに
鶴を折っていました
それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき
その子 ....
郵便受けに溜まった新聞が日焼けしていた
古い日付は、風に晒されて
更に風化した遠いあなたの
背中に張り付いて
帰ってこない のに
201号室の、窓から入る西日を受けながら
忘れて ....
僕らの旅は午後の教室から始まる
机の上ではまだら模様の教科書が青い空を目指し
ゆっくりと羽化している
君の強固な筆入れは中身がすべて行方知らずの風紋
象が踏んでも壊れないけど
涙の一 ....
一日中何をしていても
ずっとあなたの歌声が聞こえてきます
最後の夜
あたたかい腕の中で聞いたせつない曲
あなたが想いをこめて歌ってくれたお別れの曲
自動繰り返しモードで流れてくるから ....
本当は、こんな文章を書くべきではないのかもしれない。ましてやそれを発表するなどということは、絶対にしてはいけないことなのかもしれない。だが、時には書かなければいられないこともあるし、書かなければなら ....
ミルクが欲しい1歳は
男が欲しい21歳に
あっけなく捨て去られる
新しいゲームソフトが欲しい12歳が
プラダが欲しい32歳の
財布から金を抜き取る
夢が欲しい33歳は
安定が欲し ....
重たい言葉を呟きながら
折った鶴はくずれた格好でいました
尾なのか頭なのかわからない二本のツノは
怒っていました
指がふるえて
上手に折れないのですから仕方ありません
せめて寂しくない ....
夢の面影を
青い空に映してみたり
償うことのできない
いわれのない罪を背負って
人は
悲しいぐらい忘れていく
何もかも失っていく
それでも
どうして生きるのか
悲しみの中からうま ....
向かい風の吹いている
地図の上です
収縮と膨張を繰り返す波打ち際の
緩やかなカーブをなぞること
波音は届かずに
待ち焦がれるばかりの
海岸線が近い
そうで
少しずつ僕らに迫 ....
君色に染まりたくて
カメレオンになったのに
とんだ予想違い
そこかしこの風景に同化して
君はちっとも見つけてくれない
庭の木にセミの抜け殻があった
手にとって握りつぶすと
ぬちゃ
それはセミの抜け殻ではなく
抜け殻のようなセミ
もて余した僕はこっそり
ぬか床に隠してしまった
夕食の時
今日のぬ ....
グレープフルーツを半分に
ぱっさり、と
切ってごらん
まんなかにはいつも
記号
が
ぎゅう、
と
しぼったら
記号のしずくが
溜まるから
飲んでごらん
沈殿するのは
....
久しぶりに自転車の後ろに乗りました
私は弟の腰あたりにしがみつき
下唇を噛みしめていました
弟の背中はもう決して小さくはなく
細く長い目が 時々私をみて
落ちるなよ、と笑いました ....
時々思うことがあります。
人は死ぬ前はどうなるの?
時々思うことがあります。
人は死ぬとどうなるの?
この記憶。この体。この気持ち。
人は死んだら ....
「ごめんなさい、体調不良で休みます」とメール
風邪を引いた 精神性疾病
成人式を過ぎても相変わらず自立できない私は
鼻声で母に旨を伝える
小さい頃から
白濁と沈殿した私のこころ ....
思いを
どこに残すこともなく
証拠を
どこに残すこともなく
死ねることは
幸せなのに
人はまた
かわいそう
と 言う
一時 心を騒がせて
かわいそうと言っても忘れ去る
月明かり 淡い金色の光迷い森 月明かりだけが道を照らす
シーンとした真っ暗な木々がら聞こえる鳥の声
店や家がなくなっても
体が道を覚えてる
木 草 石 を覚えてる
いまは何もないと ....
「ねぇねぇ ムカデさん ムカデさん
足がいっぱいあるけれど次はどの足動かすの?」
「何だい君は! そんなことを聞かれたら
ずいぶんと歩きづらくなるじゃないか」
「だってムカデさ ....
わたしたちは湖のほとりに住んだ、
白い壁の賑やかな寮に住んだ、
壁は雨が降るたびによごれたので、
日曜がくるとわたしたちは、
大騒ぎしてよごれを湖水で洗い流した。
湖のむこうには、
冠 ....
〔3月の風〕
風上に向い口を開ける
口の中を短い鼓動で回流する風は
粘膜を乾かすことをやめようとしない
〔幼少の頃、〕
「この子は他の子より唾液が多いみたいで」
母は決まっ ....