その喧騒の中にあって、ミス・ブランチだけは異次元にひっそりと佇んでいる
ようだった。水槽の中で絶えずうごめいていて他のものはひたりと動くのを止
めている。彼女は金の魚ではないのに金魚という種類だ。 ....
リップクリームの溶ける温度から急速に冷めていく唇に
強引にすべらせていく言葉
その摩擦熱は誰もいない理科室で
どの水槽にあてはまることもなく爪先に滲んでいく
金魚はしゃべれない
....
「奥さん」
と呼ばれて振り向いた
そこにはオウムがいた
オウムはオウムスタンドに
鎖で繋がれて
にこにこ笑っている
「なあに」
とわたしは答える
オウムは首をかしげ
「こんにちは」
....
でっぷりと
脂の巻いた腹を
波打たせて
浮かんでいる
隣では
これまた太鼓腹が
頭にタオルを被せ
キリストよろしく
両手を手すりに預け
うたせ湯している
あちらの薬草風 ....
ドーナツの穴に通した薬指キミは微笑って食べちゃったけど
夕焼けとカレーの匂い誘われて結局君を選んだ僕は
なんとなく恋の病に効くモノを君に聞いてる治る気はなし
ポトフを作った
皮をむいたジャガイモ丸ごとと
大きく切ったにんじんと
白菜、鶏肉、カリフラワー、セロリ
はて、
ポトフって?
しばし検索時間。
牛肉の塊を煮込むだって…。
ふん ....
ほどける
ほどけた
わたしの
こころは
もつれた
これから
わたしは
ほどけて
ここから
みている
いつもの
ばしょを