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どこまでも
続こうとする坂道
喘ぎながら
繰り返される
独り言のような呪文
聞きながら
闇雲にしがみついた
あなたの背中
眠ったふりしながら
安いおしろいに混じった
....
微かに潮の香りがした
ような気がして振り返ると
手を振りながら君がアトリエ坂を
駆け上がってくるところだった
打ち寄せる波のように真っ直ぐに
トビウオのような足取りで
変なあだ名で ....
「逢う」と「会う」の違いが
分かりますか
「夢」と「現」の境目が
見えますか
埋火のような想いはどうやって消したら
よいのでしょうか
叶わぬ願いを此処に置いて行っては
い ....
この街から
本当の暗闇が消えて
どれほどの時間が
過ぎ去ったのだろう
街の暗闇から追われた
人ではない者達は
やがて人の内の暗闇に
棲みつくようになった
今宵
宴の余韻を ....
擦れ違う
人と人と
袖と袖と
熱と色と
闇と息と
擦れ違う
季節と憂鬱と
言葉と黄昏と
畏れと香りと
祈りと呪いと
擦れ違う
風と唇と
声と光と
女と ....
空から落ちてきた
一粒の火の粉が発芽して
庭に硝子の意志が蔓延った
温い月光を受け止めた
水盤には真鍮の孤独が湧き
何匹かのメダカが犠牲になった
溶けたアイスキャンデーの
「 ....
想い出したように
鳴る
風鈴が
躊躇うように
あなたが
幼い頃の話をする時のように
鳴る
風鈴が
逃げる風を追い駆けようとして
諦めたように
鳴る
あなた ....
いつまでも
想い出にならない夏
痛くもなく
ただ痺れていただけの夏
ぽとり
昨日の端から
呆気なく零れ落ちたわたしは
黒い服を着せられ
どこかが
痛いような顔 ....
角度に実直に
ながれる水
起伏に忠実に
うねる水
感情に従順に
あふれる水
代謝に一途に
したたる水
速さを競って
にごる水
優しさに慣れて
とどこおる水
正しさを嫌っ ....
ときどき船になる
ただ流されるだけの
木の葉ではなくて
川を下る船になる
くぐった橋を数えるだけの
泡ぶくではなくて
時を忘れた船になる
舳先にとまったユリカモメ ....
お花畑が好きな
あなたに出会うまでは
あちら側なんて
存在しないと思っていた
お花畑が好きな
あなたに出会ってからは
あちら側を
薄っすら信じるのも悪くないと思っている
....
わだかまりを引き摺ったまま
辿り着いた朝
とびっきり苦いコーヒーで
昨日を飲み下す
垣間見る液晶は
物価高とゴシップと
ヒトやモノが傷ついた話ばかり
息が詰まるような気が ....
句読点のように
あなたは
暮らしの中に
花を飾る
音符のように
あなたは
暮らしの中に
言葉を並べる
本の頁を捲るように
あなたは
暮らしの中に
楽しみを見つける
....
なにやら
胸の奥が粟立って
仕方がないから
五月を
描こうと思った
ところが
緑の絵具を切らしていて
仕方がないから
青と黄の
絵具を混ぜてみたが
五月にはほど遠い
....
咲いて
散る
それしか
人は見ていない
散って
生きる
そのことを
人は見ていない
愛でて
酔って
呆けて
憐れんだら
人は春を忘れて
葉桜の下を ....
昨日は近く
今日は遠い
明日はその中間くらい
夏は遠く
秋は近い
春はよく分からなくて
冬は一周回って背中に
張りついている
夕は近く
朝は遠い
昼はいつも手探りで
....
今の風は何色だった?
耳のうしろで
あなたの声が聞こえた気がして
振り返ると
早咲きの桜が咲っていた
雲って風の言葉なんだっけ?
そんな気障を
言ったつもりはないと笑いな ....
お知らせします
本日開催予定の
「自分を憐れむ会」は
中止となりました
皆様におかれましては
各々の憂鬱を隠し持ちつつ
しなだれた目線を上げて
花の下で存分に呆けましょう
....
ポケットから出した手を
温んだ風の中で
大きく振りながら
まるで音色みたいな
あなたの名前を呼んだ
読み飽きた季節の頁が
温んだ風の中で
めくれるように
まるで花弁みたいな
....
冬の窓辺に立つ
枯木立の間から
キラキラ笑いながら
転がり出てくる子供達
寒そうな雲間を
名前も知らない鳥が
矢印になって渡っていく
冬の窓辺に立つ
だぶだぶの
....
書けないのなら
書く必要がない
心の縁から
投げ込んだテーマが
もったり沈んでいくのを
焦げたトーストを齧りながら
眺めていた
書けていないのなら
書く意味がない
心 ....
寒い季節になると
いないはずのあなたを
つい探してしまう
枯木立の向こう
ベンチの連なり
落葉を踏む音
いないはずのあなたは
寒い季節に紛れて
すぐにわたしを探し当ててしま ....
久しぶりに
馴染みの店に
掃き寄せられた
落ち葉の面々
互いの無事を
半ば涙目で喜びつつ
とりあえずハイボールで
万感をこめて乾杯する
真っ赤に出来上がるヤツ
いつまでも ....
考えるな 感じろ
と誰かが言ったが
背中で感じても指が動かない私は
ひたすら考える
詩人のような暮らしや
詩人のような風貌を
持ち合わせていない私は
ひたすら考える
語彙の ....
ふしあなから
花と人の裏腹を
垣間見る
ふしあなから
空と嘘の寸劇を
盗み見る
ふしあなだから
肝心なものは
何も見えない
ふしあななんだから
見えていると言う
....
いつからだろう
積み上がっていく喜びが
積み上がってしまう寂しさに
変わったのは
こころもとない
ケイケンとジッセキの上から
辺りを俯瞰できる大人なんて
いるのだろうか
今 ....
止まり木を探している
橋の上から
水面を眺めながら
欠け始めた月に
追い詰められながら
止まり木を探している
カフェの二階で
雑踏を読みながら
沈みかけた街に
....
物思いの先に
秋がとまる
キバナコスモスの先に
ツマグロヒョウモン
夏のような時間が
漸く終わろうとしている
熱風と湿気に
塗りこめられていた
思い出と思い入れと
....
旅立ちは
5歳の夏
18番線の
プラットホーム
行先も分らず
飛び乗った列車
到着したところが
私の原風景になった
それから何度も
途中下車を
繰り返したが
一度も帰 ....
逃げ出したくて
吐いた嘘を
骨は知らない
抗いたくて
千切った縁を
骨は知らない
痛んで
悦んで
肉がくたびれていくのを
誤魔化して
宥めすかして
心がたるんでい ....
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