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それはむしろ沈黙の季節か
静けさがあどけない恋を焼くのは
お前の微笑みに宿るいつもの翳が
僕の限りない望みをひそかに砕くのは
「フォーヌよ七月の訣れの笛を吹け
フローラは永 ....
花がいつせいに咲いたので
風もなかなかお洒落なもので
埃つぽい老婆や街の子たちも
きやすく四月のあどけない挨拶にしたしむのだらう
さはやかなハ調の音階がきこえてくると
....
つめたい万華鏡のまばたきが
角笛吹きの感傷を揺らし
梢のうへから、いやみな天使が
それを微笑つた。
琥珀いろの木洩れ陽と
昼下がりの回想が
共謀して、道化師を泣かせた。
腹立たし ....
春の水蒸気は何処に行つたのか
この空は{ルビ禊=みそ}ぎするものの色
永訣の色
地上は百色さんざめき
めざましくもゆたかである
いちめんの輝かしき生存
疾風は田園の暮色をよ ....
遠い話とほいはなし
ああそんなところだね
いまとなつては
大気は海の継子じみて
地中海色のタイルの
すました青磁のなかに透けてゐる
カラカラした浴場のなかで昼寝してたら
いつのまにやらお ....
{引用= 我が友、田中修子に}
時折西風が吹く
そして天使が笑ふ
するとさざ波が寄せ返し
沖を白い帆が行き過ぎる
砂に埋れた昨日の手紙を
まだ浅い春の陽ざしが淡く照らす ....
《なんてこたあ ないんだよ》
翼をたたんだカラスがうそぶく
電柱の上に ぽつつりとまつて
さうやつて 世の中をみおろしてさ
ほら ちよいと
武蔵の絵みたいな
構図ぢやな ....