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水の{ルビ簾=すだれ}がそこかしこに垂れ下がっている夏の部屋に居て、ぼくはもうあの郵便配達夫が来ないことを知っている。ぼくの胸のなかには白い綿毛のようなほわほわした生命体がいつも棲みつ ....
にゃんこホアキン
きみの硬直した屍体はぼくを悲しませた
にゃんこホアキン
ふさふさした薄茶のふさ毛とふとい尻尾
ふた色に変わる不可思議な鳴き声
覚えているよ にゃんこホアキ ....
ふと誰かが呼ぶ声にはっとして玄関に出てみた。やや関西訛りのする初老の胡散臭い中年が立っていた。薬売りだという。昔ながらの熊の謂だとか、小さなガラス瓶に入った救命丸など、まったく利きそうもない薬をずら ....
考えない葦の
川岸に
シグナルが、シグナルに寄りそって果てている
/
敵意がないことが
わかる
横隔膜のへん
まず、そのようにして針をふるわせる
さびついた小 ....
君がまだ小さい頃
仕事が一段落すると
すこし秋めいた アスファルトを歩いたっけ
まだ うまく喋れない君の
小さな手を引きながら
やっと歩くことのできる君にあわせ
二人で歩いていた
あたり ....
あたたかな
彩りの
うつくしい
絵を描きたいと
思ったけれど
哀しみは
キャンバスを
暗い色彩に染め
決して
壊れることはなく
さやか水流した
静かな時は
すうっと
....
泣きたい時ほど哂いたくなるのはなぜだろう
つまづいて転んで
そのまま起き上がれなくなった事はありますか
愛する人の寝顔に無性に不安になって
揺さぶり起こした事はありますか
人間不 ....
蚊が喜んで
私の上腕の血を飲んでいる
尿酸値も高く
触れたくないが血糖値も高いかも知れぬ
健康な血ではなく
ちょっとヤバイ
その蚊を見ていると
ふと思い出してしまうんだ
君の事を。
....
遠く時空を超えると
幼い君がいた
「おとーたん、どうじょ」
ぷつんと もいだ野紺菊を
ぷるぷるふるえる手で差し出す
薄紫の舌状花をつけた花
稲藁のにおいがする午後の柔らかい日差しの中
君 ....
He still remembered the sensation of warmth he felt when he touched her hand....
浜辺のしっぽが落ちて。
し ....
心に栄養価不充分ですから、
あたしは水面に苦しんでいる。
アクリル球体中には、
くるむよに隔てた、優しさがあるのですが。
あたしが生きる為の酸素は、
あなた無しでは流水無きこの場、
居 ....
こじつけの夢で
眠ること
なんといったって
莫伽なこと
未来都市での恋物語
蜘蛛の巣を辿り成就する
乱れた鱗色
思いのまま泳ぐ
美しきライト
氷の万年筆が地 ....
忘れられない
忘れられない夢を
見よう
東京に初雪が降りました
薔薇の朝もやが包む
音の無いクラッチ
冷えた象牙は瞳を閉じ
溜息をやがて具現します
蛍光灯
点滅で ....
風鈴から、とまり木。
左手。の、平に現実を無くす。
薬水はかかせない。
灰色に近い、夜。の、区別を、
内緒の存在。を、確かめたい。
毎日のように縁側の風鈴です。
あちらがわとこ ....
あてもなく、この先は、動かされるままに。
意識とは別に、行く先は、南、でした。
無音の、ファンネルからの、伏流は、
見ている人しか、伝わらないなんて。
見えないだけでしょう。
....
積み木のような背骨が
薄宵に連れ立ち
赤剥けた涙腺を
産毛を
風の巷に洗っている
空洞は無力を湛え
石の沈みへ身を委ねる
きみの海底
その燦光に滲む街
体温を貫けて伝わる
....
ウインドウの
埃を透かし
誘導弾が明かりを咲く
枯れたランプの
独声ひろがり
あれは街並みの
色と
また色
乾いた書物は
土に似ます
抱かれた晩だけ
夢を見ま ....
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